第40話 ティムカルテットVS姉


 「見事に何もないですね。」

 剣士風の女の呟きに

 「あの子供がやったのか?一人で?」

戦士風の男が驚愕した。

 「そんな事、有り得るのでしょうか?」

 シスター風の女の疑問に

 「有り得るも無いも、この惨状だと…そうなんじゃない?一度、街に戻ってあの子と話をしましょう。ダンジョン攻略には是非とも勧誘もしたいし。」

魔法使いの女の言葉に皆が頷いた。

 彼等はゴブリン集落跡地をぐるりと見て回っていた。

 殲滅された跡地に唖然とする彼等、大地に突き刺さっている斧のような武器。戦士風の男が引き抜くと何とも可愛らしいデザインであった。

 「何だこれは???」

 男の言葉も尤もだ。肉球みたいな斧のような物体に魔法使いの女が鑑定を発動させた。

 鑑定結果は武器:爺婆でも使える肉球の斧:攻撃力+25000・会心率+50%・麻痺・毒付与と鑑定結果が出たのだ。

 「もしかしてあの子のなんじゃ??」

と魔法使いの女の言葉に

 「これであの子に渡りを付けられるな。でも武器を放置って大丈夫なのか?デザインは残念だが、こんな性能の良い武器は初めてだ。」

戦士風の男がボソっと呟いた。戦士風の男の意見に賛成なのか彼等はうんうんと頷いていた。

 この四人、世界に名を馳せるAランカーである。

 そんな事を露とも知らない私は、後に彼等に付き纏われる事になるのだった。




 宥子ひろこにお迎えコールを鳴らしたら、速攻で迎えに来てくれた。

 宥子ひろこもゴブリンと遭遇していたらしい。宥子ひろこは身代わり地蔵を使うぐらいに追い詰められてたんだと。お疲れ様である。

 「……あんた、本当に馬鹿なの?百歩譲ってソロで討伐は分かる、集落襲撃とかアホやん。死にたいの?ねえ?」

 事の顛末を聞いて宥子ひろこはギャンギャンと吠えた。

 「いや、私は殆ど何もしてないというか。ごめん。ティムカルテットが、暴走しました」

 私としては突撃する予定は無かったのだよ!!

 「何その契約ティムカルテットって」

 「赤白せきはくちゃん、紅白こうはくちゃん、サクラちゃん、楽白らくはくちゃんの4匹のことだよ。私も突撃する気はなかったよ。本当に! でもね、こいつら勝手に突撃して率先して敵を倒していくんだもん。私より強いんだってば。チートやろ」

 ザコ戦では上手い事立ちまわってたし、ボス戦では瞬殺してたし、武器なのかよく分からんので撃退してたしな。

 「はあぁ?」

 ドスの効いた声で私を睨む宥子ひろこ

 こめかみを抑えながら宥子ひろこは状況把握をしようと頑張ってた。

 「この4匹が、暴走して収集付かずに集落襲撃に繋がったと?」

 「うん、そう」

 あははは、と笑っている私に脳天にチョップを入れて、宥子ひろこは大きな溜息を零した。

 「私も人の事言ないけど、無謀な事するな。命が幾らあっても足りんわ。済んだことだし良いけど、この4匹は暫く容子まさこと一緒に家で留守番させようかなぁ」

 と鬼のような事を言うので全力で

 「絶対に嫌!堪忍してーな。毎日毎日毎日エンドレスで同じもん作らされたら、精神がやられる。死ぬから嫌だ!」

拒否った。

 「じゃあ、無謀なことすんな!ちゃんと手綱握っとけ」

 「無理!最近、私の云うこと聞かないもん。」

 何て無謀な事を言うんじゃ!!宥子ひろこよ、アレ等の手綱なんて取れんわ!とブチ切れたら宥子ひろこから思いっきり蹴りを食らった。

 「ギャッ、何すんのさ!」

 「イラっと来て。私も約1万のゴブリン相手にしてたからストレスがね……」

 一気に身の危険を感じたので私はザっと後退る。

 ニヤニヤと近寄ってくる宥子ひろこに私がギャーッと悲鳴を上げた。怖いんだよ!!

 「宥子ひろこの方が、超無謀な事してるじゃん。何で私だけ怒られるの? めっちゃ理不尽!!」

 ゴブ一万とソロで戦ったお前は何なんじゃーとギャイギャイと文句を言う。

 「私は、悪運様が働いたんだよ!私一人だとエリアボスのエンカウント率が高いんだ!!好きでこんな体質になったんじゃないやい」

 その言葉に、私は心底宥子ひろこを憐れんだ。

 「うん、ごめん。私が悪かったよ。それで、遭遇したゴブリンは殲滅できたのか?」

 「した。MP・HPポーションと弾全部使って倒した。身代わり人形と包丁がなかったら死んでた。フルレイドでもおかしくない戦闘なのに、1人で殲滅したんだよ!しかも、ドロップ品が酷かった。めっちゃショボイもん。メディションホールに収納してるから勝手に見て。あ、後何勝手に素材使ってんの!アラクネトロの心臓売るつもりやったんだぞ!」

 ドロップ品のことでギャースと怒りだした宥子ひろこに何のこっちゃ?と思いつつ私は何もしてないと言い張った。

 「私、勝手に使ったしねーよ。したら、お前怒るじゃん」

 「だったら、何でこんなんあんねん! 物理攻撃高いしアホでも無限に使える神聖魔法の杖とかチート過ぎる。作る前に一言報告しろよ。そして、何でもっと早く教えないんじゃ!知ってたら杖でゴブリンをタコ殴りして殺せたのに!!」

 キーッと宥子ひろこが発狂してたら、念話が入った。

 <それ作ったんわしらやで>

 <そうそう、容子まさこは関係あらへん>

 「わしら……? 契約ティムカルテットか!」

 赤白せきはくちゃんと紅白こうはくちゃんの突っ込みに、一瞬思考停止したよ!

 お前等、何勝手に素材使ってんだよ!!私が楽しみにしてたんだよ!?アラクネトロの心臓で格好良い杖を作ろうと思ってたのに!!

 大体お前等、生産系のスキル持って無かったんじゃねーの!?

 私の心の代弁をした宥子ひろこ

 「どやって作ったの?」

 <うんとね~。楽白らくはくちゃんの糸を固くしてガリガリ削ったの~>

 サクラ、お前の説明はざっくり過ぎて良く分からない。

 「楽白らくはくは、糸の強度を変えられるってことで良いのかな?」

 楽白らくはくに聞くとそうだよと言いたげに前足を上げた。うん、可愛い。

 「それを使っておまえらが、加工したと」

 <せやで>

 <わいらの力作や>

 ドヤ顔で言われてもな。あぁ、私のアラクネトロの心臓……凄く凹んでる私を余所に宥子ひろこはティムカルテットに

 「はい、アウトォォオ!そんなチート性能なもの売れないでしょう。売れないものを作るのは禁止!後、勝手に素材使うな。売りもんだから使っちゃダメ!」

 と注意していた。私と言えば、アラクネトロの心臓で作った杖とは知らず、不用品と思って売っぱらってしまったのだった。

 「あ、もう売った後だわ。いやー、良い値で売れてさ。白金貨150枚だった」

 「白金貨って何?」

 「さあ?金貨の上の硬貨らしいよ。金貨1000枚が、白金貨1枚になるんだって」

 「どこで売ったの?」

 「商業ギルドで買い取って貰った。宥子ひろこの名前を出したら、宥子ひろこ専属のアンナさんって人が出てきて買い取ってくれたで」

 私は宥子ひろこがリアルOTLの状態になったのが良く分からなかった。

 あんな不用品でも売れたんだし、良いんじゃないの???

 「おまいら、勝手に素材は使わない!魔石は特に使っちゃダメ!売るんだからね」

 私と契約ティムカルテットからのブーイングで宥子ひろこが無視をしたので、無視を仕返ししたら契約ティムカルテットの魅惑ボティに負けた宥子ひろこは、泣く泣く半分は使ってよいと許可を出したのだった。

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