第35話 新刊が手に入らなかった
夕食の準備が終わった頃にオギャーン!オギャーン!と携帯が鳴った。
新刊通知メールの着信音に
酷い。
「何その不気味な着信音。サクラ達もガチで引いてるじゃん。」
「そんなに酷い?だってインパクトある着信音だし、一発で誰からメール来たか分かる代物だもん。」
DL代だって勿体無いし、いつ使うの!今でしょ?って言ったら
「何がDL代だ。こんなキモイ着信音チャンジだ!!!」
携帯を取り上げられ設定変更された。
私は戻ってきた携帯に
「どうでも良いけど何の音にしたの?」
どうせ暗証番号変更しても突き止めるだろうから、そこは放置した。着信音で区別しているので、着信音が何か分からない場合は大抵スルーしてしまうのだ。
「ランリリの虐殺リンゴ」
しらっと言い切った
「愛しの新刊を蠅の女王にすんなぁ!!」
ギャーーーーーーーーーーーーーーーーーースと文句を言ったら
「キモイ鳴き声より音だけは綺麗な曲にしただけマシと思いなさいよね。旋律だけは綺麗なんだから!旋律だけは!」
私の意見はバッサリと切り捨て、旋律は綺麗だが内容がグロイというか…超エグイ曲なのだ。ランリリとはアニメ【ラン★ライバル★リリー!!】の主人公リリーが初恋の王子様をライバルに盗られて、嫉妬と失意の中で邪神と契約を交わし、世界で一番醜い蠅の女王になって、思い人に最終的に討伐されちゃう可哀そうなお話である。糞アニメと名高いのだが、挿入歌の旋律が綺麗だったり、魔女の手下のキャラクターが可愛いため人気がある。ストーリーを無視すれば愛せるのだ。
「酷い!!私がランリリ好きって知ってる癖に……糞ババア」
ボソっと呟いた私の声を拾った
「誰が糞ババアじゃ!!この底抜けのあんぽんたんがっ!!オタクが悪いって言わないけどな!新刊入荷通知メールを変な着信音にすんな!」
ギリギリと私の頬っぺたをちぎろうとする。ギチギチ言ってて痛い!痛い!
「いひゃい!ひゃなせ!!」
バシバシと腕を叩くと私の頬を盛大にムニーンと伸ばして手を放す
「いいじゃん。私のスマホじゃん。好きな音楽を着信に設定しても良いじゃんよー。限定新刊の応募に落選したんだぞ!傷心を癒やしにディゼニーに行きたい……」
傷心な私はぷるぷるしたサクラちゃんと
「あのサイトの新刊か?」
「うん」
「フリマで出品されるのを待てば良いじゃない。」
「フリマやと定価より高いんだもん。」
ブーブーと文句を言うとしばかれた。
叩かれた部分に手を当てて
「なぁ、
私の提案にちょっとだけ考えた
「売る分の防具を作ってくれるんなら良いよ。」
キラキラした顔をした
「あ、やっぱり良いよ。」
ノーセンキューですとお断りするも
「ディゼニーに行ってリフレッシュしよっか!じゃあ、一時間後に出発するから各自準備してね♡」
と言い放ちリビングを出て行った。
「は?え?」
置いてかれた私はポカーンとした顔で
<どこかに行くのぉ~>
サクラちゃんの言葉にハッとし
<焼酎飲みたいわぁ>
とおっさん丸出しの
<チーズケーキ食いたい!!レアが良えなぁ>
<強請っても出さないからね!!>
食い物とか飲み物に執着するところ
<取り合えずディゼニーに行くみたい。持って行く荷物って財布とハンカチぐらいだからなぁ。>
<アトリエで時間過ごしたら良えやん>
<アトリエ好きぃ>
<あのふわふわのクッションで寝るんが最高やしなぁ>
皆言いたい放題だね。
「ん~魔法具を作ろうかな。折角、アラクラトロの心臓があるんだしコレで魔法の杖でも作ろうかな。一時間だとカッティング出来ないし、原案だけになるなぁ。」
私はスケッチブックでデザインを書き起こしていく。これだけ大きな原石になると込める魔力量も多くなるだろう。補充すればリサイクルも出来るだろうし、攻撃特化の魔法を
杖になる素材が現実的に無いんだよねぇ。現実世界ではロンズデーライトを人工的に作る試作段階だし、一般凡人が手に入れられる代物ではない。
次に二ホウ化チタン。これは無理すれば手に入れられると思う。二ホウ化チタンは超高温に対しての耐熱として優れているが、衝撃に弱い。攻撃特化の杖を使うならこれで良いと思う。
最後に炭化ジルコニウム。炭化ジルコニウムは強度・耐熱・耐冷と平均的な数値を叩き出す。これなら物理で殴っても大丈夫だ。
この辺は
私はそろそろ約束の一時間になるのを確認し、各々寛いでた
それから直ぐに何やらスゲー良い笑顔をした
ディゼニーから帰宅後、地球で会社を立ち上げて悲鳴を上げるのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます