第29話 薬草を刈る

 サクラ・蛇ちゃんズは姉のショルダーバッグの中、楽白らくはくは私のフードの中に入れて索敵と隠密を使って薬草の群生がある場所へ原付と電動スクーターで移動した。

 「徒歩って…隠密を発動させてメディションホールを出せば良くね?」

 私のボソっと零した独り言に姉も悟りを開いたらしい。原付をメディションホールに突っ込み、私の電動スクーターに暫く二人乗りした。

 索敵で人の気配がない場所で降りて原付に乗りなおし、そのまま草原を目的地まで突っ走った。

 モンスターに出会わず、無事薬草の群生に辿り着きました。

 いつもなら魔物を轢き殺すのに一度も魔物に遭遇してないのが、ちょっと怖い。

 超幸運持ちが3匹いるから?

 採取人は私と姉。蛇ちゃんズ+妹チームは薬草、楽白らくはくとサクラ+姉チームはマナ草を探す事になった。

 二手に分かれて探した方が効率が良いからだ。それに、私達では分からない虫よけや解毒剤・魔物除けの薬の材料は見つけたいからと宥子ひろこが勝手にチーム分けしやがった。

 「容子まさこ、土の付いた状態で採取してね。10束をタコ糸で結んでメディションホールのアイテムフォルダにいれれば良いから」

 面倒臭ぇと思いながらも

 「了解!これが終わったらドワーフの洞窟に行けるんだよね?」

 ドワーフの洞窟に行くために付いてきたんだから!!

 「ポーションとか作ってからね!」

 聞いてないんですけどぉ!!ブーブーとブーイングしたら無視された。

 「チッ」

 「サクサク刈るわよ!」

 覚えてろと思いながら蛇ちゃんズと合わせてポーズを取った。

 「おー!」

 お宝ザックザクとばかりに薬草を毟っていると

 「1/3は残しといてね。暫くしたら、また此処で採取するから」

 宥子ひろこに忠告された。

 「サイエスってゲームをベースに作られているんでしょう?だったら、薬草もリスポーンするから問題なくね?」

 此処は何でもありの世界だし、リスポーンぐらいするだろ?という私の態度に宥子ひろこ

 「必ずリスポーンするとは限らないし、検証してないから分からないもの。ここは、刈りつくすより残すことを選択した方が賢明だと思う」

 堅実思考で返事を返すのであった。

 「まあ、一理あるね」

 丸禿げにしても別の場所探せば良いんじゃね?と思うも口には出さなかった。

 「頑張って!」

 何気にやる気の宥子ひろこの声援に手をひらひらさせる。私のひらひらに合わせて蛇ちゃんズも身体をくねらせていた。

 お前等、口開かなかったら可愛えのにな。残念な蛇どもである。

 <紅白こうはくちゃん、赤白せきはくちゃん、二匹とも薬草と綺麗なキラキラ光物を見つけたら教えておくれ。>

 私の言葉に

 <今日は薬草だけ集めるんとちゃうんか?>

 <せやで、それ以外は労働違反や!!>

 ブーブーと文句を垂れる二匹に

 <やってくれたら姉ちゃんに内緒でコーラ味のパチパチ綿菓子食べさせてあげるよ!>

 以前、物凄く食べたがってたお菓子に揺れてる蛇ちゃんズ。

 <あーあ、限定品やから次はいつ手に入るかなぁ?別に良いんだけどね?>

 意地悪そうに言うと喰意地の張った蛇共は

 <独り占めはあかん!>

 <そうやで!皆で分けるんがチームっちゅうもんや!!>

 コロっと手の平を返した。寝返り早いな。誰に似たんやろう。

 私は薬草中心に蛇ちゃんズはキラキラ光物を中心に採取していった。

 そんなこんなで採取作業から4時間経過した頃、私は我慢の限界を宥子ひろこに訴えた。

 「もう疲れたぁ~。お腹も空いた!腰は痛いし、もう休もうよ。」

 <わしらも何か食いたいわ>

 <サクラは、プリンというのが食べたいですぅ~>

 楽白らくはくも疲れたと言わんばかりに、動かない。

 「お昼には早いから、お菓子で我慢して」

 姉がみんなにcleaning清掃を掛けて、折り畳みテーブルと椅子を出した。

 大皿とお徳用パックの和菓子詰合せをメディションホールから取出して皿の上に盛る。

 ついでに私は約束の品を追加しておく。

 <大吟醸は?>

 「赤白せきはくちゃん、朝からお酒はあかんでしょう。夜に出してあげるから我慢だよ」

 姉がこれでも食ってなさいと、饅頭を口に突っ込んだら黙った。

 というか、物理的に黙らせた。姉が蛇ちゃんズの扱い酷くなってきたわぁ。サクラちゃんと楽白らくはくちゃん甘やかそうとしてる。

 「一服したら正午まで採取して、昼食取ったら狩りに出かけて良いよ。私は、先に薬師ギルドに戻って上位ポーションのスクロールを手に入れてポーション作りに励むわ。」

 頑張って~とばかりに心の中で応援しといた。

 姉が昼に解散だよと言ったら、ティムチーム全員が私と行動すると言った。

 分かる、面倒な作業をしてる姉と一緒は嘸かし辛いだろう。

 逆に工房をティムチームはアトラクションか何かと勘違いしてるところもあるが、危ない物には近寄らないので放逐してある。

 昼になった途端、私達ティムチームは脱兎の如く宿に戻りメディションホールの私のアトリエへお籠りするのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る