第27話 アトリエに居た時の話

 アトリエに籠った時、私は子蜘蛛の楽白らくはくちゃんとお揃いの服を作成することにした。

 先ずは楽白らくはくちゃんの服を作ろうと思う。大きさは拳の半分ぐらい。糸は伸縮性があるので多少大きくなっても着る事が出来るだろう。でもモンスターの成長速度って実際分からないから直ぐに着れなくなると思う。なので今のサイズともう少し大きめのサイズの二つを作る事にした。

 二玉は染色したいので、私の好きな色の染色液に糸をぶっこんでおく。

 直ぐには作業に入れないので服のデザインとそれに伴う端切れを選んで箱の中に一式入れて置く。勿論デザイン画も一緒にだ。

 次に宥子ひろこが売りまくるであろうアクセサリーの作成を開始した。

 台座にハートオブソラスと刻印しその上に今回獲得した黄色い魔石(研磨・カット済み)をはめ込む。魔石に魔力を込めると一回だけの使用分しか作れなかった。魔石が小さ過ぎたらしい。

 「これは冒険者向けになるかなぁ??可愛いが戦闘で邪魔になるかも…」

 う~ん、こうなると貴族向けに仕上げた方が良いよねぇ。

 私は台座の周りになるべく豪華に見えるよう見栄え良くビジューを配置していった。この指輪が宥子ひろこに売り飛ばされ、高位貴族のお嬢様の手に渡り、死の淵にいた彼女を救ったとして製作者捜索されるという大事を引き起こすのであった。




 私は作業に没頭し、ネックレス、バレッタ、ピアス、イヤリング、指輪、アンクルレット、腕輪など様々な物を作っていった。遠くにイヤリング、ピアス、アンクルレット、腕輪は華奢でシンプルなのを重視している。

 高級感を出すのに苦労したが、割と良くできた。冒険者がターゲットなので若干女性よりのユニセックスの作品だ。

 回復・攻撃力up・防御力up・追撃魔法など様々に盛り込んだので複数装備すれば、魔力が使えない冒険者に喜ばれる事だろう。

 ただ、無名なので買い手が付くか微妙である。値切ってきそうで怖い。その辺は金にシビアな宥子ひろこに任せておくが、ボッタクリされないように注意してねって一言忠告しておこう。

 私は複数の巾着に付属魔法別に分けて収納しておいた。

 巾着を見て一言。

 「そういえば、ギルドのお姉さん達って筆箱とか持ってなかったよねぇ。ペン立てはあるけど、試供品としてボールペンとメモにペンケースでも作ってあげようかな。」

 女性の、それもギルドからの情報になると儲け話に繋がる。生産ギルドにはボールペンや手帳など卸したが、商業ギルドはまだだったな。商業ギルドに登録するのはちょっと、な。商品を卸すにしても買い叩かれそうだし、宥子ひろこに売り込みお願いしようかな。商品を持って行けば噂を広めてくれるだろう。彼女達は羽ペンを使っている。使いやすく可愛いボールペンがあれば、そっちを使ってくれると思う。

10本で100円のボールペンを50本を用意し、小さな100枚綴りのメモ帳を用意した。勿論、可愛らしいノート型を選んである。ペンケースは余った生地で作ったので、同じ物はない。一つ一つ違うのだと、お洒落感があって良いだろう、多分。

 必死で全部作り終えた時、間を置かずに宥子ひろこがアトリエに突撃したのであった。



 「ちょっとこの高性能な服はどうしたの!?」

 私が作った服を引っ掴んで質問する宥子ひろこ

 「それ私が作ったんだよ。楽白らくはくちゃんは蜘蛛地獄ゴライアスの幼体だったみたいでね、その糸で織りあげた生地と糸で服を作ったら意外と高性能な服が出来たよ。」

ボタンは私の発明の一押しだと伝えると

 「特許は出したの?出したんだよね!!」

目が金になっている宥子ひろこの形相にドン引く。

 「まだ特許は取ってないよ。てかサイエスに次に行った時にきちんと特許を取るよ。」

 「売ろう!私も街で防具とか見て回ったけどこれだけ高性能な防具は無かったよ!防御力も高いし、軽いし、お洒落だし絶対に売れるって!」

 売ろう、売ろうと言い募る宥子ひろこ

 「生産の目途が立ったらね。糸は楽白らくはくちゃん頼りなんだから大量生産とか無理だよ。生地だって楽白らくはくちゃんの糸を織って作ってるんだから。」

釘を刺した。このままだと後先考えずにせっかく作った服を売り払われてしまうかもしれないと危機感を感じた。

 「楽白らくはくちゃんの糸をこんな風に使用するなんて容子まさこも冴えてるね!でも楽白らくはくちゃんが蜘蛛地獄ゴライアスだったなら、蜘蛛地獄ゴライアスを捕獲して糸を回収すれば大量生産に踏み切れるんじゃない?」

 金に目が眩んでいる宥子ひろこ

 「通常の蜘蛛地獄ゴライアスの個体は5㍍はあるんだよ。拠点もないのに契約テイムする気?討伐して糸が手に入るか分からないのに無駄なことはしない!今は私達の分だけで十分だよ。余裕分だけ売れば良いんだし、それまでは市場には流さないよ。」

 話をぶった切り宥子ひろこをメディションホームから追い出した。

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