第26話 アトリエ獲得の攻防戦

 <あぁー、自分のアトリエが欲しいわぁ。>

 私の呟きに赤白せきはく

 <移動型のアトリエを姉ちゃんに買って貰ろたら良いんとちゃう?>

簡単に言ってくれる。

 <あの姉ちゃん金にがめついさかい、金になるやったら大丈夫やって>

 後押しするように紅白こうはくが続き

 <主様わぁ、お金が大好きですぅ>

プルンプルンと身体を揺らすサクラちゃんにまで、姉は金の亡者と思われているようだ。ザマァ(笑)

 宥子ひろこがコレを聞いたら泣くだろうな。

 <まぁ、移動式のアトリエがあれば自由気ままに製作できるからね。ただ、幅は取るしお金も掛かるだろうから無理だな。無い物ねだりって辛いわ。>

 <スキルでゲットしたら良いんですぅ。>

 サクラちゃんの言葉に私はビックリした!!

 <スキル扱いっていうか! 本当ににあるの?>

 <あるって聞いたことがありますょぅ。あるじは、空間魔法アイテムボックス使ってますから、上位のメディションホームを取得すればいいんですよぉ>

 <良いなぁ、欲しいなぁ。>

 私の欲望以上に

 <姉ちゃん唆して取得したら良えやん。成功したら、わし等に日本酒奢ってくれるだけで良えで。>

 <せやね、うちらも後押ししたるし!成功したら塩うに喰いたいわぁ。>

 <アイスクリームが食べてみたいのぉ>

三匹も自己主張し始めた。この灰汁の強さは姉譲りやね。

 <でもなぁ、おねだり作戦成功すると思う??>

 私が普通にアトリエが欲しいって言ったら却下されそうやし、かと言って蛇ちゃんズ+αがどうこう出来るとは思えないんだけど。

 そう考えてるとサクラちゃんが

 <可愛いBodyに主様はぁ、メロメロきゅんきゅんなのでぇ、却下したらずっうぅっと無視しちゃおう作戦!>

 <せやな、わし等のBodyに触るん好きやし、却下したらお前の傍に居ったるわ。ギリギリしよるでぇ(笑)>

 <確かに、脱皮後のわい等の身体綺麗にしたるって口実で撫でまわしよるもん。>

 あざと可愛い作戦を話、それに紅白こうはく赤白せきはくが乗っかった。

 えぐいなぁ、提案拒否したら地獄って泣くんちゃうかな。姉のメンタルを無邪気に凹ませる彼等のメンタルは最強に強かった。

 <じゃあ、そういう事で頑張ろう!>

 <<<おー!!>>>

 後に私にアトリエが欲しいという気持ちに賛成せずに拒否った為、賛成するまで蛇ちゃんズ+αに避けられて涙する姉であった。




 自宅のリビングで4匹と二人で、食事を取りながら今後の方針を決めることにした。

 「昇級試験も終わったし、3日と5時間は自由にして良いよ。サイエスでは翌日6時にあたるから」

 「了解」

 その必須分だけあれば色々と作れて嬉しいわ。

 <箱の中やなくて、もっと自由に広々と過ごしたいわ>

 <せやせや、狭すぎる>

 脱走癖のある蛇ちゃんズのブーイングに、宥子ひろこが般若の表情(かお)をした。よっぽど捕獲した時間と労働力を根に持ってんだろう。

 「脱走するからダメ。それに、部屋中でウンコやオシッコされたら困る。」

 そりゃそうだねぇ。と思うもサクラちゃんや楽白らくはくちゃんは放し飼いなので蛇ちゃんズは絶対に条件飲まないと思うよ、姉よ。だから妥協し易い提案をしてやった。

 「ウンコとオシッコ、水浴びはゲージでする事を条件にして放し飼いにしたら? サクラちゃんを見てたら自由に動き回りたいと思うのは仕方がないよ」

 私の提案に宥子ひろこは迷っているが

 <サクラもみんなと遊びたいのぉ~。あるじー、だめぇ?>

 サクラのおねだりに完全敗北しやがった。可愛いは正義ってやつだよね!

 「うん、サクラがそういうなら仕方がないよね。紅白こうはくちゃんと赤白せきはくちゃん、絶対その辺にあるものを口に入れない。ウンコとオシッコと水浴びはゲージで絶対すること! 約束出来るなら自由にして良いよ」

 <<分かった>>

 綺麗にハモった声にゲージから脱出してのびのびしたかったのか、私は思った。姉は工夫して蛇ちゃんズの環境整えようと真夏なのに暖房入れてたぐらいなのに凹んでるよ。

 楽白らくはくは、テーブルの上で何やら1匹怪しげなダンスを踊っている。

 この子は、生まれたてだからなのか私達と意思の疎通が出来ない。

 たまにサクラちゃんが一緒に踊っている。可愛いからムービーでも撮っておこう。

 「これからの事なんだけど、昇級試験も終えたし暫くはセブールの街に滞在してレベル上げしようと思うんだけど。ポーションとかも作りたいし」

 「私は、ドワーフの鉱山に行ってみたい!そしてアトリエが欲しい。スキルでメディションホールが取得出来るんだよ!」

 鉱山、鉱山とウキウキしながら提案すると

 「……その心は?」

 「希少な鉱石をGETゲットして、アクセサリー作りに没頭したい!」

 無常にも

 「却下」

と切り捨てた。酷い!!

 「何で!」

 「だって籠りっきりになるじゃん。寝食忘れて没頭されたら困るし。この話はこれで終わり!」

 私のプレゼンをスタートさせる事なく切り上げた姉に、私は皆に目配りして合図した。

 姉が近づくと楽白らくはくちゃん以外だれも姉に近づかなかった。

 何度もサクラや蛇ちゃんズに触ろうとして避けられる行為を繰り返すのか、姉よ、OK出せば良いんだよ。

 それが2日も続くと姉の心が完全に折れた。

 姉が渋々と私を呼んで

 「……メディションホールの習得して良いよ。だから、皆を触らせて!」

 「やった!」

 きゃっほい!許可出たぜ!!と小躍りする。

 <約束の酒は弾んで貰うでぇ~>

 <うちは、塩ウニ食べるんや>

 <アイスアイス>

 おい、心の声が念話で漏れてんじゃねーか!チラっと姉を見たらプルプルと震えていたが、怒るのは諦めたようだ。

 「容子まさこ、ステータスのポイントどれくらいあんの?」

 「ちょっと待って。確認するわ。ステータスオープン」

---------STATUS---------

名前:マサコ[琴陵ことおか容子まさこ]

種族:人族

レベル:49

年齢:18歳[35歳]

体力:156→162

魔力:263→281

筋力:91→100

防御:78→84

知能:123→128

速度:53→68

運 :70→77

■装備:カーキーのカットシャツ・黒のパンツ・スニーカー

■スキル:料理50・裁縫50・鍛冶42・水魔法・射撃Ⅴ・神聖魔法Ⅰ・神官Ⅰ・生活魔法Ⅰ・索敵Ⅰ[Ⅴ]・隠蔽Ⅱ[Ⅶ]・隠密[Ⅶ]・魔力操作Ⅰ・念話Ⅰ

■ギフト:なし[空間魔法アイテムボックス共有化]

■称 号:蜂殺し

■加護:なし[須佐之男命・櫛稲田姫命]

[■ボーナスポイント:5484pt]

-------------------------------


 「妹よ、残念なお知らせがある。メディションホールは20000pt無いと取得できないよ」

 宥子ひろこの言葉に私はその場に崩れ落ちた。私のメディションホール。

 宥子ひろこは何か思いついたのかサクラに

 「サクラのpt使っても良い?」

 <うん。良いよ~>

 本気マジええ子やぁ。私の女神様やん。でもな宥子ひろこよ、それはサクラちゃんのやん。私のとちゃうんよ!?

 「何でサクラちゃんのpt使うん?それじゃあ、サクラちゃんしかメディションホール使えないじゃん。」

 ブーブーと文句を垂れる私に、宥子ひろこは特大の溜息を吐いた。

 「メディションホールは空間魔法アイテムボックスの上位なの。私達、空間魔法アイテムボックス共有化しているのお忘れ?サクラがメディションホールを取得すると自動的に私達も使えるようになるの!」

 宥子ひろこの説明に、パァアッと顔が明るくなった。これでアトリエが出来る!!

 「じゃあ、サクラお願い」

 <わかった~。んーんっ、取れたよぉ>

 自分のステータスを確認すると空間魔法アイテムボックスがメディションホーム共有化に変更されている。

 「ちゃんとメディションホール共有化に変更されているよ」

 おお、ちゃんと共有化になってるやないの!

 「うぉお!これで思う存分作業出来る。ひゃっほぉい!」

 両手を上げて変な踊りをしている私に宥子ひろこは釘を刺した。

 「メディションホール使うのは構わんけど、整理したアイテムとか滅茶苦茶にしたらぶっ飛ばすからね」

 「はひぃ」

 宥子ひろこ、物騒だな。超怖い。キングオークを瞬殺しそうな殺気だ!!

 メディションホールに私用と宥子ひろこ用、アイテム用、お金用のフォルダを新たに作った。

 私は早速自分用のメディションホールに作業道具一式を移動し、作業に没頭する事にした。

 後に姉がサイエスに行くぞ!と怒鳴り込んで来るのである。





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