第24話 蜘蛛が仲間になりました

 宿で合流したら、宥子ひろこはよっぽど大金が入ったのか機嫌が良かったのだが、ふんふんと鼻で部屋の中を嗅ぎ回った。

 「部屋に戻ろうか。疲れたでしょう」

 ニッコリと笑みを浮かべる宥子ひろこに、あ、バレてるわと……私の顔が引きつっている。

 当てがわれた部屋に入り、宥子ひろこはの根源を鷲掴みにする。

 「おまいら、何食べた?」

 <何も食べてへんで>

 <言いがかりや>

 <……>

 蛇ちゃんズは反論したが、サクラは無言でプルプル震えている。

 「そう……正直に話せば、夕飯も豪華にしようかと思ったんだけどなぁ。君たち、私の従魔なんだよ? ご主人様の命令は絶対って分からないなら全員自宅送りにするわよ」

 と宥子ひろこに脅されてゲロった。この裏切り者!!

 <焼き鳥食べた>

 <甘酒飲みました>

 <チョコレート食べたのぉ>

 どういう事かと私を睨みつけてくる宥子ひろこ。私は明後日の方向を向いてやり過ごす。

 「おい、何勝手に餌与えてんだ! 私が、この子達の食事管理しているの忘れたわけじゃないよね?」

 聞こえませんとばかりに耳を塞ぐ私。

 「それ以外は口にしてないよね?」

 怒り心頭な宥子ひろこにおずおずと

 「いやぁ……それがですね。アラクラトロっていう大きな蜘蛛に遭遇してさ。蛇ちゃんズが蜘蛛を食べちゃたんだよ。あ、ちゃんと止めたんだよ? でも私の制止を振り切りサクラちゃんのサポートを受けながら丸のみしてて……」

 あ、宥子ひろこが床に崩れ落ちた。

 「容子まさこに似て食い意地が張っているのは諦めたよ。でも、そんなゲテモノにまで手を出さなくても良いじゃないか!餌上げているよね?何が不満なの」

 床をバンバン叩く宥子ひろこ。私に似てないと思いつつも、ソッと目を反らしていた。

 「いや、食い意地が張っているのはお前じゃん」

 「お前ら全員飯抜き!大体アラクネトロは、Aランクモンスターなんだよ!Cランクのうちらが狩るようなモンスターじゃないの!」

 宥子ひろこよ、ご飯の用意は私がしてるんだよ?蛇ちゃんズ+αには可哀そうだが、私はコッソリとご飯を食べるからね!

 「それで、他にはないのよね?」

 「はい……」

 大人しくなった私を後目に、ドロップ品を確認する。

 ウルフの毛皮×33

 ワーウルフの毛皮×1

 キラービーの羽×27枚

 アラクラトロの糸×7玉

 アラクラトロの牙×37本

 毒袋×1個

 黄色の魔石(小)×45個

 青い魔石(小)×16個

 赤の魔石(中)×1個

 赤の魔石(大)×1個

 アラクラトロの心臓1個

 あの短時間でよくこんなに狩れたと思う。

 宥子ひろこがアイテムボックスの上限がきそうとボソっと呟いたので、それは無いんじゃね?と私は思った。

 宥子ひろこがドロップ品専用のフォルダを作り移動させる作業をしていると、何かカサカサという音が聞こえた。

 「ん?虫が入ったのか?」

 虫よけの薬を散布しているから、虫が入ってくることはないのだが。

 宥子ひろこが音の発信源を探すと、私のフードから聞こえてくるみたいだった。

 「容子まさこ、フードに何か隠してない?」

 失礼な、フードに隠せる物なんかあるわけねーべと主張すると、宥子ひろこは胡乱気に私を睨みつけた。

 酷い!私は、首を横に振り必至に否定した。

 「ちょい、後ろ向いて」

 宥子ひろこの前に立つように背中を向けた。宥子ひろこがフードにズボッと手を突っ込むと何かあたった。

 感触的にツルツルしてて硬い。胴体と思わしき部分を掴み引っ張り出すと、一生懸命フードにしがみつく蜘蛛がいたそうな。

 「蜘蛛?」

 何で蜘蛛?私を?をし首を傾げた。

 「お前、この蜘蛛に見覚えないか?」

 見せられた蜘蛛に見覚えがあったので

 「う~ん。多分、アラクラトロを狩った後で一服してた時に、こっちを見ていたからさ。パチパチグミを上げたら喜んでたわ。でも、森の中でお別れしたんだよ」

 「餌付けしたんだね」

 焦りながら言い訳をする私を見て、嘘は言ってないと判断したみたいだ。

 大方、帰る時に不意を突かれてフードに潜り込まれたんじゃないかなぁ。何たる迂闊。

 鑑定したらリトルスパイダー(幼体)と表示された。魔物だった。この蜘蛛、拳より一回り小さいが、普通の蜘蛛よりはるかにデカい。

 よくフードの中に入れてて気付かなかったな、と私は思った。まぁフード自体に装飾があるから重いんだけどね。それに重さが紛れちゃったんだと思う。

 「容子まさこ契約テイムのスキル持ってないし。街の中で魔物が居たら討伐対象になると思う。元の場所に帰してきなさい」

 宥子ひろこの飼わないよと意思表示をしたら、蜘蛛が前足2本を上下にフリフリしている。

 <その子も一緒にいたいって言ってるのぉ~。主ぃ、お願い。良いでしょ?>

 サクラたん、そのおねだりは反則過ぎるでしょう。

 ぷるぷるボディをスリスリさせながら、上目遣いでお願いとか可愛すぎる。

 「ちゃんと面倒見れる?途中で投げ出したりしない?」

 <うん!サクラ面倒みるー>

 宥子ひろこはサクラの飼いたい攻撃に落ちました(笑)

 「じゃあ、従魔契約しないとね。蜘蛛ちゃん、こっちにおいで」

 蜘蛛を手の上に置くとポップアップが表示された。

 <リトルスパイダーが契約テイムされたがっています。契約テイムしますか?>

 YES/NOの選択しが出たので、YESを押すとリトルスパイダーのステータスが表示された。


---------STATUS---------

名前:未設定

種族:リトルスパイダー

レベル:63

年齢:0歳

体力:1

魔力:3

筋力:5

知能:180

速度:1319

幸運:5482

■スキル:糸操Ⅲ・糸吐きⅤ・毒耐性Ⅹ・索敵ⅢⅩ・看破Ⅱ

■ギフト:韋駄天

■称号:レンの従魔

■加護:須佐之男命・櫛稲田姫命

■ボーナスポイント:96518pt

-------------------------------


 何この縛りプレイなステータス! 鑑定の上位種『看破』を持ってるよ!

 「ブホォッ! ちょっ、容子まさこ見て見て」

 宥子ひろこの言葉にステータスを覗くと

 「グハッ! 何この縛りプレイ。私達よりレベル高いんですけど」

 凹むわー。しかも、この子も幸運持っているよ。

 ボーナスポイントも高い。ギフト持ちですか。

 悪運様が働いてくれたのかねぇ。

 私も宥子ひろこも凹んだのだった。

 「取り敢えず名前を付けよう。何が良いかなぁ」

 「楽白らくはくちゃんに決定!」

 「縁起でもない名前付けるなよ」

 楽白らくはくは、初めて飼った蛇ちゃんで家に慣れずやせ細ってしまったので、ペットショップに行って紅白こうはくちゃんとチェンジした子である。

 宥子ひろこはそれもあってか、縁起が悪いと認識している。

 「良いじゃん。本当は、紅白こうはくちゃんんが楽白らくはくちゃん2号になる予定だったのに!無理矢理名前を決めちゃったじゃん。今度は、私が決めるの」

 と駄々をこね、渋々リトルスパイダーの名前が楽白らくはくとなった。

 「もう、変なものを拾ってこないでよ。明日は、楽白らくはくちゃんを冒険者ギルドで登録しないといけないんだから」

 宥子ひろこは大きな溜息を吐き愚痴をこぼすが、私は意図して拾ってきた子じゃないので無視を決め込んだ。

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