第23話 蛇ちゃんズ+αが最強過ぎて怖い

 宿に戻って、一晩が経った。

 「宥子ひろこ、夕食までに帰るから外でモンスター狩ってきても良い?」

 パーティ組んでクエストするのも良いが、アクセサリーの素材集めだけなら私一人でも大丈夫である。宥子ひろこもやる事があるだろうし、今日も自由行動になるだろう。

 「はぁあああ!?何言ってんのあんた。この街初めてでしょうがっ!」

 「宿の店とギルドの場所は把握したから大丈夫。そろそろ魔石も補充したいし、外のマッピングもしてくるよ!?」 

 「危ないって!止めなよ!?ランク昇格したとはいえ駆け出しなんだよ。死にたいのか?このあんぽんたん!」

 朝から元気良く罵ってくる姉に

 「朝から罵倒って酷くない?身代わり人形もポーションもあるし、火力の高い武器も装備してるから大丈夫だよ。」

平気だと伝えるも

 「そういう問題じゃない。そういう手間は、お金で解決しろ。私は、お前を単独行動させることが反対なんだ。」

 大体、マッピングは地図をスクロールしてからじゃないと出来なかったはずだと憤る宥子ひろこの考えなど知らぬ私はスマホの地図アプリでマッピングする計画を立てているのだった。

 「絶対にダメ!許可しない!許さんよ!!」

 両手を大きくバッテンを作る宥子ひろこ

 しかし紅白こうはく赤白せきはく、サクラは私と同じ気持ちのようで、私の足元に集まっている。サクラは私の足元でピョンピョン飛び跳ねていた。

 「大丈夫だって。蛇達もいるし、サクラちゃんも行きたいって足元で跳ねてるよ。現実的な話をすると、宥子ひろこは過保護過ぎる。自称神様を相手にするんでしょう? 魔物使いテイマーなんだから、この子達の成長を促す為にも実践は必要だよ。レベルの高い所には近づかないから!お願い!!」

 脱兎の如く言い捨て御免とばかりにその場から私達は逃げ出した。

 「馬鹿容子まさこ!」

 私を捕まえようと伸ばした宥子ひろこの手は空振りし、ハハハハッと馬鹿な高笑いをしながら走り去る。

 <紅白こうはくちゃん、赤白せきはくちゃん、サクラちゃん、今日は魔石の回収とアンタ達のレベル上げだからね!今日は楽しくモンスターを刈ろうね!沢山取れたら甘酒飲ませてあげる。勿論、宥子ひろこには内緒だからね!>

 <お、良いねぇ!|おつまみも付けてーや。>

 <そやな、甘酒も飲んでみたいわぁ。その時は焼き鳥食いたいねん。>

 <サクラはぁ、チョコレートなるものが食べたいですぅ。>

 ワイのワイのと盛り上がりを見せ、宥子ひろこ契約テイムチーム結成とばかりに狩りに出たのであった。





 スマホで検索し、近くに泉がある場所を中心に狩りをしようと決めた。決めた場所までスクーターで一時間ほどだったので丁度良いと現場に向かう。途中で轢き殺したモンスターが、ドロップしたアイテムを回収するのは忘れない。

 徐々に泉に近付いてくるとモンスターが少なくなる。

 <どうしたんだろうねぇ!?もうちょっといると思ったんだけど遭遇しないし…>

 <そりゃぁ、強いモンスターが居るからやな。>

 赤白せきはくの言葉に

 <マジか!?>

 <マジですぅ。多分、エリアボスじゃないですかぁ!?>

 <サクラちゃん、そこKWSK!!>

 <魔物は皆、大なり小なり縄張りがあるんですよぉ。だから魔力の大きさとか大体分かっちゃうのですぅ~>

 えっへんとプルプル身体を震わせるサクラちゃん、とっても可愛いよ!ベリーキュートだよ!でもね、エリアボスに突撃したくないの。

 <よし、帰るか!!>

 エリアボスは避けて通ろうという私の提案にサクラちゃん達が猛反発した。

 <嫌や!甘酒飲みたい!>

 <チョコレート食べたいですぅ>

 <焼き鳥食えへんなんて有り得んわ!!>

 皆エリアボスを殺る気満々なんですが、私が

 <ダメっす。もしもアンタ達3匹に傷1つでも付くと宥子ひろこが発狂するからダメーブッブーです。諦めて帰ろうぜ。>

 皆を宥めて虫かごに入れようとすると一斉にエリアボスがいる方向に逃げ出した。

 「うぉーーーーおおおおおおおおおおい!!」

 何やってくれちゃってんだ、アイツ等。私は蛇ちゃんズ+αを追いかけた。

 奴等はアラクラトロという大蜘蛛。レベルは56!私よりも高いじゃん。私が守るとばかりにお手製手榴弾を片手に持った所でアレ???

 「紅白こうはくちゃん、赤白せきはくちゃん、サクラちゃんの回復魔法受けながらアラクラトロの目ん玉抉り出して丸飲みせんといてーーーーー」

 滅茶苦茶アクティブやん。何この暴力的な絵面。喰って開いた目ん玉の中に潜り込みムシャムシャと蜘蛛を食べてんのが分かる。

 「ギシャーーーーーーーギャーーアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」

 断末魔みたいに叫ぶ蜘蛛。私はハっとして、蜘蛛の足を狙って手榴弾を投下。

 威力が高いため連投したら足の半分は吹っ飛んだ。蜘蛛の中には三匹がいるから本体は巻き込まずに手足だけを吹っ飛ばす。

 「ご愁傷様だわぁ。あの三匹チート過ぎ。」

 足全部失くした蜘蛛は目ん玉から食い散らかされ脳髄まで啜られた絶命した。

 私がしたのは、三匹のサポートだった。てか私が居なくても三匹は勝利していたのに違いは無い。

 絶命したからドロップアイテムと蛇ちゃんズ+αが落っこちてきた。三匹それぞれ地面にボテっと転がっている。

 三匹に怪我が無いか確認するも三匹とも傷なし、元気いっぱいだった。

 ウルフの毛皮×33

 ワーウルフの毛皮×1

 キラービーの羽×27枚

 アラクラトロの糸×7玉

 アラクラトロの牙×37本

 毒袋×1個

 黄色の魔石(小)×45個

 青い魔石(小)×16個

 赤の魔石(中)×1個

 赤の魔石(大)×1個

 アラクラトロの心臓1個

 上記がここまでの戦利品になった。

 とってもドロップアイテム的にウハウハなのだが、三匹のチートな戦闘の仕方にトラウマになってしまいそうだ。私はドロップアイテムをアイテムボックスに仕舞うと下から蛇ちゃんズ+αが

 <焼き鳥食いたいわぁ>

 <早よ、甘酒だしてぇーな>

 <チョコレートですよぅ>

 ワラワラと詰め寄って来る。サクラは兎も角、蜘蛛を食いまくった蛇ちゃんズに

 <アンタ等、蜘蛛食ってたやん。まだ食べると吐き戻しするんじゃない?>

 と忠告しても

 <嘘吐き!頑張ったらくれる言うたやん。酷い!詐欺や!>

 <お前の宥子ひろこにチクんぞ!?>

蛇ちゃんズがガチで脅してきた。私は

 <本当に吐き戻ししても知らんからね!>

と釘を刺して、甘酒とチョコレート、焼き鳥をそれぞれに用意してやった。私も発泡酒を開け、スルメをしゃぶっていると気の木陰からジィーっとこっちを見る視線を感じたので、其方を見たら小さな饅頭サイズの蜘蛛がいた。

 さっきの蜘蛛の仇って襲って来るのか?と思ったら私達が食べてる物に興味を示しているだけだったので、コイコイとばかり手招きしてパチパチグミを食べさせた。

 子蜘蛛は身体をブルブルと高速に震わせた。美味しかったのかあーんとする蜘蛛の口の中にグミを入れて餌付けしていた。

 習慣って怖いな。最後のグミを上げ、私達は街に戻る事にした。

 その時は気付かなかったが、子蜘蛛が私の服のフードにちゃっかりと居座ってて宥子ひろこが絶叫し、何やかんやあって無事ティムされることとなるのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る