第21話 特許


 私は特許取得するために生産ギルドへ赴いた。宥子ひろことは別行動をしている。

 スマホの地図アプリを起動して生産ギルドへ向かった。生産ギルドはデパート並みの大きさで立派な建物だ。

 「わぁ、でっかいなぁ。」

 きょろきょろとギルドの中を見て回る。所狭しと並ぶ品々を見て発明が遅れていることを実感した。

 「ここは子供の遊び場じゃないよ、お嬢ちゃん。」

 40代後半ぐらいのおじさんにお嬢ちゃん呼ばわりされる私。アジア系は童顔と言われるが、琴陵ことおか家は輪にかけて童顔なのだ。それが異世界になると未成年に見えるのだろう。

 「これでも18歳で成人してるんですけど。ギルドに登録しに来ました。」

 愛想笑いを浮かべて登録しに来たと言えば男が

 「嘘だろ!?どう見ても未成年じゃねーか!?」

とても失礼な事をほざく。

 「ステータス確認すれば18と出ますよ。登録できないんですか?」

 ギロっと男を睨みつければ男はバツの悪そうな表情かお

 「悪ぃ、生産ギルドに登録には条件がある。」

謝ってくれた。それにしても登録に条件があるとは難しい条件なら登録は止めて特許だけ取ろうかな。

 「条件って何ですか?」

 「条件は生産ギルドに登録する資格があるぐらいの物を作れるかだ。何かお前さんが作った物はあるか?」

 「ありますよ。まずはこれとかどうですか?」

 100円均一で購入したボールペンと手帳を取り出し、紙にさらさらと文字を書けば男の目が釘付けになった。

 「何だそれは!?凄いぞ!インクを付けなくても文字が書けるなんて!!」

 大興奮している男に

 「ボールペンですよ。特許も取りたいので作り方もお教えします。」

ボールペンを手渡したら、彼はボールペンを分解しようとしたので止めた。

 「それで登録は出来るんですか?出来ないなら特許だけでも申請したいんですけど。」

 「勿論合格だとも!文句なしだ!こっちに来い!」

 男に引っ張られカウンターに座らせられる。男はギルド登録に必要な書類とギルドカードと針を私に渡した。

 「此処に名前を書いてくれ。針で指を傷付けて血をギルドカードに垂らしてくれ。そうしたら登録完了になる。このボールペンの作成レシピは教えて貰えるんだろうな?」

 指に針をブスっと刺してギルドカードに血を垂らす。それが終われば出された書類に必要事項を記入していく。

 「作成レシピは提出しますよ。年会費とかの説明お願いします。」

 「おお、悪い。年会費は一律銀貨5枚だ。お金を預け入れる事も出来る。生産ギルドで委託販売も出来るぞ。」

 「分かりました。いくつか特許を登録したいのがあるのでお願いします。」

 私は机にサンプルのボールペン、手帳、がま口財布、老眼鏡、ミートミンサー、鉛筆、爪切りをアイテムボックスから取り出して並べる。

 「右からボールペン、手帳、がま口財布、老眼鏡、ミートミンサー、鉛筆、爪切りです。作り方はこちらに資料を纏めてあります。老眼鏡は高齢の方で目が悪くなった方ようです。度のサイズがあるので、一番自分に合うサイズを選んで貰って下さい。」

 「そうか、おいエーデルちょっと来い。」

 エーデルと呼ばれた老人がカウンターに来た。

 「お前、目が見えにくいって言ってたよな。この老眼鏡とやらをかけてみてくれ。」

 男は彼に老眼鏡を手渡す。エーデルは老眼鏡をかけると

 「見える!文字が見えますぞ!ギルドマスター」

興奮したように喜んだ。というか、この男ギルマスだったんだな。

 「老眼鏡も度数が違ってくるのでこの四つの中からかけ比べて一番合うのを選んで下さい。」

 私の言葉にエーデルが老眼鏡をかけ比べし始めた。三つ目が一番見えやすいみたいだ。

 「これはいくらで売り出すのですか?」

 興奮気味のエーデルに私は

 「金貨10枚で売り出す予定です。」

さらっとボッタくり価格を言う。100円均一で揃えた商品なのは内緒だ。

 「これで金貨10枚は安いですね。今、予備があるなら買いたいのですが…」

 「予備はこちらになります。」

 予備と金貨10枚を交換した。売れますぞ!とエーデルがギルマスの男に力説している。

 サイエスは英語圏なので、作り方を図と英語で詳細を纏めて記載した紙を男に差し出した。食い入るように書類を見る男達は

 「素晴らしい!これは画期的だ!この紙も素晴らしい!これは生産ギルドに卸してくれるのか?」

出した数々を絶賛した。

 「作り方と使い方は資料に記載してあるので、特許料は4でお願いします。適正価格で卸すことは出来ますよ。店を持ったらその限りではありませんけど。」

 吹っ掛けてみた。

 「4割で良いのか?」

 何故か驚かれた。

 「高くても他の人に知られないなら意味ないじゃないですか!」

 良いように言い繕っておく。まだまだ吹っ掛ける奴がいるんだな。

 「しかしこれの使い方が今一理解出来ないんだが。」

 ミートミンサーを指さす男に

 「実践した方が速そうですね。調理場に案内して貰えますか?」

実践すると言えば気前良く案内してくれた。

 そこそこ大きな調理場に私はアイテムボックスから牛のブロック肉と調味料と牛乳、野菜を取り出す。

 ブロック肉をミートミンサーで挽肉にする。次に玉葱を微塵切りにし、フライパンでキツネ色になるまで炒める。玉葱の荒熱が取れたらミンチ肉と牛乳、塩と砂糖各小さじ1/2、おろしにんにく1/2片分、コショウ少々混ぜるように練って種を作った。

 フライパンに薄く油をひいて種を焼いていく。焼きあがるまでに時間があるのでキャベツを千切りにし、簡単なドレッシングを作る。

 焼きあがったハンバーグを皿に盛り付け、フライパンにケチャップとウスターソースを入れて一煮立ちしてソースを完成させた。

 「良いにおいだなぁ。」

 ハンバーグの皿を男の前に差し出して

 「食べてみて下さいよ。味は保証します。料理レシピは商業ギルドで特許申請しますからいつでも食べられるようになりますよ。」

食べるように促した。男は恐る恐るハンバーグにナイフを入れる。ジュワッと溢れ出る肉汁に食欲がそそられたようで思いっきりハンバーグを口にほうばった。

 「う、美味い!なんだこの美味さは!肉が柔らかいぞ?」

 美味い、美味いと叫ぶ男に

 「ミートミンサーがあれば色々な料理を作ることが出来ますよ。」

ミートミンサーの良さをアピールしておく。

 「料理の幅が増えるな。お前の持ち込んだ物はどれも売れるぞ!」

 「それはありがとうございます。というか、貴方の名前は何なんですか?ギルマスってことはわかったんですけど。」

 名前を覚えるつもりは無いが、一方的に自分の名前だけ知られているのは不愉快だ。

 男はバツの悪そうな表情かおをして

 「名乗ってたと思ってたわ。俺の名前はエレン、生産ギルドのギルドマスターをしている。定期的にここで所品を卸してくれるのか?」

名乗ってくれた。

 「私はマサコです。これでも冒険者をしているので、いつまでも此処にいるわけじゃないですよ。」

 邪神討伐のために世界各国を回る予定になるだろうし、此処にいつまでもいる予定はない。

 「そうか残念だ。特許は生産ギルドに申請してくれ!」

 暑苦しいおっさんに

 「…出来るだけそうします。」

了承の返事をした。そうしなければ離して貰えそうにもなかったからだ。

 「商品は置いて各100ずつ置いていきますね。ボールペンは銀貨1枚、手帳は銀貨2枚、がま口財布は銀貨1枚、老眼鏡は金貨10枚、ミートミンサーは金貨2枚、鉛筆は銅貨4枚、爪切りは銀貨2枚で販売予定です。」

 提示した価格にギルマスは

 「そんなに安くて良いのか?特に手帳は高級紙じゃないか!ボールペンももっと高くても需要があると思うが。」

設定した金額に驚いている。

 「老眼鏡は別としてあまり高くても庶民の手に渡らないじゃないですか。支払いは預けておいてください。そこから年会費も払っておいて欲しいです。」

 ギルド職員や商人、貴族などが老眼鏡を買ってくれるだろう。支払いを今されたら金貨をアイテムボックスに入れる事になる。すなわち共有財産になるのだ。それは困る。私だけのお金が欲しい。

 「分かった。年会費を差し引いた品代はお前さん名義に預けておくことにするさ。」

 「宜しくお願いします。」

 私は商業ギルドを後にし宥子ひろこと合流するのであった。

 

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