第20話 無名の作家


 「エリーゼさんの紹介だって言ってるじゃん。」

 「ですから紹介状を出してください。」

 「さっきも言ったけど紹介状なんて無いよ。名前出せば分かるって言ってたし!商談したいんだってば!此処商業ギルドだよね!?」

 受付嬢と上記のように話が、ループして中々商談できる人に会わせてくれない。

 職務怠慢だよ、とブーたれてたら

 「アンナさん、あそこにいるの私の妹なんですけど誰かに紹介されてここに来たみたいです。」

 宥子ひろこの声が聞こえた。振り向くと呆れた顔をした宥子ひろこが美人を連れて立っていた。

 「ヒロコ様の妹さんですか。少し、お話を伺って参りますね」

 美人さんは受付で揉めている私達の間に割り込んで来た。

 話が出来る人GETした私は事情を説明し、宥子ひろこの所へ連れて行って貰った。

 「エリーゼ様からの紹介と仰られているのですが、紹介状などはお持ちではないとのことで対応に困っているんです。」

 サクっと宥子ひろこに報告すると

 「妹よ、そのエリーゼ様って人の紹介で来たなら紹介状の一つくらい貰っておきなよ」

宥子ひろこから苦言を貰った。でもね、宥子ひろこよ私はエリーゼって婦人に

 「名前を言えば分かると言われたんだよ。」

と無実を主張した。

 「何が切欠で紹介の話になったのさ。」

 本当に面倒事を持ってきてと言わんばかりの宥子ひろこ

 「街で美味しいって言われているカフェに入って試作品広げてたら人が集まってきてさ。その時に助けて貰ったの」

 私は悪くないよ!と主張するもスルーされた。酷い。

 「アンナさん、妹の作品も見て貰えませんか?」

 「ヒロコ様の頼みであれば」

 アンナさんって呼ばれた美人さん、宥子ひろこを神か何かと崇めてねーか??

 快く承諾してVIP室?に通された。

 アイテムボックスから今まで作った数々の作品を提示した。宥子ひろこの目が一瞬鋭くなったのでパチったことバレたかな?と思ったがお金に変わるなら怒られないよね!って事で開き直った。

 全部出したところでアンナさんの目が輝く。

 「これは、匠の域ですね。どれも美しく目移りしそうですね。」

 彼女は作品を手に取り頭の中で適正の価格を割り出していることだろう。

 宥子ひろこがニヤっと笑って押し売りを始めた。

 「どの作品にも刻印が押されていますので一点ものになります。高レベルのモンスターの素材を使っているので、販売するとなると富裕層がターゲットになると思います。」

 宥子ひろこの提案にアンナさんが

 「無名なので、高額では売れないでしょう。ですので、個数限定で一般人に販売し話題作りをしてから、指名依頼という形でオリジナルのアクセサリーを受注するのが良いかと思います。」

提案をしていく。それに賛成した宥子ひろこ

 「まずは、ギルドの受付嬢の皆さんから反応を見たいと思います。今回限りということで、格安で販売しますので宣伝お願いします。これならどうでしょうか?」

 原価割れを提案する。アンナさんの目がキラリと光ったような気がする。商人って怖い。

 「少し、こちらを持って行っても良いですか。相談してきます。」

 私作のアクセサリーが受付カウンターにいる受付嬢に見せている。

 キャーキャーいう声が聞こえる。反応は良い感じだ。

 「容子まさこ、最低どれくらいで売りたいの?」

 「金貨1枚かな。損して元取れって言うしね」

 「了解!」

 戻ってきたアンナさんは、受付嬢の了解も取り付けたということで金貨1枚均一でアクセサリーを売り捌き、その後ジワジワとアクセサリー作家『容子まさこ』の名前がサイエス内に広がっていった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る