第19話 食事事情に困ってます
「此処のお菓子って食べてみたかったんだよねぇ。」
異世界の料理がどのくらい美味しいのか検証したいと思ってお財布とケータイと洛陽住藤原国広をウェストポーチに入れて散策してます。
私は花屋と思わしきお店の店員さんに声を掛けた。
「この辺で美味しいお菓子屋さんってありますか!?」
お
「此処を真っ直ぐ行って一つ目の通りを右に曲がると猫のイラストをした看板があるわ。キャッツアイってお店なんだけど、そこのパンケーキが美味しくてお勧めね。」
お勧めのお店を教えてくれた。気前が良いな。私なら絶対に教えないよ。私の心の狭さが、垣間見えた気がするよ。
私は情報のお礼にカンガルーポーに似たプシュケという花を購入した。
「購入ありがとうございます。銅貨5枚になります。」
丁度銅貨が無かったので金貨で支払いを済ませる。ころんとしたがま口財布が珍しいのか店員さんが
「不思議な形の財布ですね。とても可愛いです。どちらで購入されたんですか?」
興味津々とした
「これは私の手作りですよー」
小銭入れのがま口財布は私の手作りである。ガッチのトートバックをリメイクした生地が余ったやつで作った品だ。
「そうなんですか?凄いですね!職人さんなんですね。あの金貨1枚で是非譲って貰えないでしょうか?」
100円均一の金具と端切れで作ったがま口財布が金貨1枚に化けるとは思わなかった。でも愛着もあるので、別のやつにして貰えないかな。
「う~ん、これはダメだけどこっちのなら良いですよ。」
アイテムボックスから花柄のがま口財布を出して見せると店員さんは
「こっちの方が可愛い!是非、お願いします!!」
喜んで花柄のがま口財布を購入してくれた。
「特許も出しますので、その内にでも商品として店頭に並ぶかと思いますよ。」
お釣りを返して貰い私はお勧めのお店に向かったのであった。
店員さんお勧めのお店に入ると結構賑わっていた。人気のお店なんだなぁ~とお菓子に期待を寄せつつ店員さんを待った。
シックなメイドさんが
「いらっしゃいませ。一名様ですか?」
声を掛けてくれたので
「はい!一人ですよ。此処で一番人気のお菓子お願いします。」
席を案内して貰う前に注文してしまった。
メイドさんは苦笑しながら
「畏まりました。席をご案内しますね。」
私を席に案内してくれた。何て優しい人なんだろう。女神かな?
私は周囲を見渡し、小物チェックを始めた。やっぱり女性に人気があるのか、可愛い小物が多いしお洒落だ。来店している人も街の住人から冒険者に職員っぽい人がちらほらと見えた。
私はテーブルの端に作ったアクセサリーなどを置いてどのぐらいの値段で売るか考えた。
私が席に座って15分程度した頃にこの店一番の人気メニューを店員さんが持ってきた。
見た目は美味しそうだが、味はどんなものだろうか?
「おまたせしました。当店自慢のブリオッシュになります。」
コトリと皿を置いたメイドさんがジっと私の作品を見ているのに気づいて、気になるのかな?って思って声を掛けてみる。
「あの、どうかしましたか?」
メイドさんは慌てて
「いえ、とても綺麗でしたのでビックリしてしまいました。お客様、失礼を承知でお伺いしたいのですが宜しいでしょうか?」
恐る恐ると聞いてきた。
「良いですよー」
「あのですね、そのテーブルの端にあるアクセサリーは何処で買ったんですか?」
やっぱりアクセサリーにいっちゃったかぁ、と思いつつ
「あぁ、これ私が作ったんです。試作品なので見ます?」
メイドさんに見せる為にアクセサリーを集めてメイドさん側のテーブルに置きなおした。ブリオッシュはお預けかなぁーと思いつつ、手に取ってまじまじと試作品を見るメイドさんの目がキラキラしている。
「キラービーの羽がこんなに綺麗なバレッタになるなんてビックリしました。このビジューは珊瑚ですか?あ、こっちは真珠ですよね!こんなに丸い真珠見たことがないわ!」
段々と声が大きくなってるメイドさんに店内のお客さんの意識が私達に一気に集中した。
「このペンダントトップ高そう。とっても可愛いわ。」
メイドさんの言葉に少しずつ女性達にテーブルを囲まれていく。え、これじゃあブリオッシュが食べれないじゃーん。
他のお客さんや店員の人も可愛いとか綺麗や欲しい、買いたいって言葉を貰えて嬉しいが肝心のブリオッシュが食べれないのに困った。
そんな時、一人のご婦人が
「あらあら、そんなにお嬢さんの周りに集まっては迷惑でしてよ。」
追い払ってくれた。メイドさんも仕事に戻り静寂が戻って来る。
御婦人は私に
「貴方も不用意に物を広げてはいけないわ。此処は割と治安が良いけど、大事な商品を盗まれるかもしれないの。気を付けなさい。」
ちょっと厳しいが忠告してくれたので
「ありがとうございます。気を付けますね!」
お礼を言っておいた。
「ふふ、どう致しまして。もしこの商品を売るなら商業ギルドへ行くといいわ。エリーゼの紹介って言ってくれたら高価買取して頂けるはずよ。」
そう言ってご婦人は立ち去ったのであった。
これが噂の貴婦人かぁ、上流階級は違うなぁと思いつつ、やっと食べれるブリオッシュを口に含むとめっちゃ固い。
ブリオッシュやない。クッキーに近い。ガリゴリと噛むも甘さも少ない。何て拷問なんや!!
あまりのマズさに悶絶するのであった。
30分ほどかけて食べ終わり、私は商業ギルドへ向かう事にした。異世界の飯は不味いという事が分かったので私は今後は美味しいって言われても絶対に信じないと心に誓った。
15分後に商業ギルドで商談している
行くって言っていたもんね。
でもさ、物のついでみたいに私の作品を出してギルド相手にボッタクリするのはどうなんだろう。
妹として、ちょっと常識を疑うよ。
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