琴陵姉妹の異世界日記if

セブール

第16話 街で問題を起こして退場させられそうです

　門番に足止めされてます。皆のアイドル容子（まさこ）だよ！

　「良いから、ここを通してよ！　中に宥子（ひろこ）がいるの!!」

　何度訴えても話がループするおっさん門番め！！

　「ダメだ！身分証がない上にお金がないなら通すことは出来ない」

　だーかーらー

　「宥子（ひろこ）がお金持ってるって言ってるでしょう!!」

　何度言えば分かるんだ、この禿と門番を見るとグッキャっと首根っこを引っ掴まれた。にゃーん、私は猫じゃないよ、宥子（ひろこ）よ。

　「すみません。その子、私の妹なんです。冒険者ギルドに登録する為に来たんですが、途中ではぐれてしまって。ご迷惑お掛けしました。」

と、金貨１枚を憲兵に握らせた。こんな禿野郎に握らす金があってたまるかー！！ふんぬーのもがいても更に宥子（ひろこ）は首根っこを強く掴むので大人しくした。

　「それで、妹の入所を許可頂きたいのですがお幾らになりますか？」

　「滞在税銀貨５枚、入所税銀貨８枚だ。」

　「分かりました。金貨１枚と銀貨３枚です。滞在の仮発行書をお願いします。」

　「おい、そこの女。こっちに手を置け。」

　宥子（ひろこ）の交渉はスムーズに進んだが、やっぱりこの禿いっぺん〆たろか！ギチギチと禿を睨みつけると

　「容子（まさこ）、その板に手を置いて。犯罪歴の有無を確認されるだけだから」

宥子（ひろこ）に言われた通り、私は魔道具の上に手を翳した。

　犯罪歴の有無を確認し終えた後、仮発行書を渡される。

　「１週間以内にギルドカード持ってくれば銀貨８枚は返却されますよね？」

　「……そうだ」

　こいつ金をネコババする気だったんかい！職務怠慢やど！

　働けや屑めっと睨みつけながら宥子（ひろこ）に引き摺られ、冒険者ギルドへ足を運ぶことになった。

　「色々と聞きたいこともあるんだけど、まずは冒険者ギルドで登録してお金返して貰いに行くよ。」

　「了解」

　異世界の建物は物珍しく、キョロキョロと辺りを見ながら歩く。時々は立ち止まってしまうのは仕方のないことだ。

　歩く事２０分ほどで、冒険者ギルドとやらに到着した。

　比較的すいているカウンターを探していたら、受付嬢ではなくおっさんが座っているところが空いていた。

　宥子（ひろこ）がおっさんに声を掛ける。

　「すみません。この子の冒険者登録お願いします。」

　「これに必要事項を記入しろ。」

　放り投げられた紙とペン。殺すぞっ！と殺気を滲ませ、ハンマーを握る手を宥子（ひろこ）に抑えられ、私の代わりに宥子（ひろこ）が代筆して記入していく。

　記入し終わった紙を渡せば、何も書かれてないギルドカードと針を渡された。

　「容子（まさこ）、指に針を指して血をギルドカードに着けて」

　「分かった」

　ブスッと針を刺し血を付けて、ギルドカードをおっさんの顔面めがけて投げつけてやった。バシっとカードが顔に当たり間抜け顔晒すおっさんに留飲が少しだけ下がる。

　「何すんだ！」

　怒り心頭なおっさんに

　「え？やられた事をやり返しただけですけど～。さっき、私に向かって紙とペンを投げつけたじゃないですかぁ。嫌だなぁ～、忘れたんですかあ？ボケるには早いと思いますぅ」

　「ふざけるな!!お前みたいな生意気な奴は登録出来なくしてやるぞ」

　権力行使発言しやがった。別に此処でなくても登録出来るし、最悪登録しなくても生きていけるから平気ですぅ。

　「はぁん？登録しに来た人に紙やペンを投げつけるのが、このギルドの作法なんでしょう？　私は、単純に作法に乗っ取っただけですけどぉ」

　全力でおっさんを馬鹿にしてやった。そしたら宥子（ひろこ）が

　「登録しに来た人を脅すなんて話になりません！すみませんが、このおっさんチェンジで！」

　鞄に手を突っ込みアイテムボックスからメガホンを取出して大声でチェンジっと叫んでいる。

　宥子（ひろこ）の声は通りやすいので、メガホンでも声は良く響く。

　そこに居た冒険者と受付嬢が一斉におっさんの方を見る。

　部が悪くなったのか、モゴモゴと言い訳をしていて見苦しい。

　「容子（まさこ）、ここで登録するの止めたら？レオンハルトさんの紹介で来たけど、登録に来た人を脅すような職員しかいないギルドなんて早々に潰れるわよ。私が登録した始まりの町なら、やる気がない受付嬢は居ても追い返す馬鹿は居なかったわ。」

　嫌味交じりに言ってやったら、騒ぎを聞いて駆け付けた迫力系美女が立っていた。その美女に宥子（ひろこ）が嫌味付きの挨拶をする。

　「あ、ダリエラさん。さっきぶりです。ここのギルド員って糞ばっかりですね。試験官といい、このおっさんといい。冒険者から２割も徴収しといて、試験官の人殺し黙認や新人登録を気に入らないと二度と登録させないとか、本当糞過ぎて仕事しなさいよ。腐った膿を出さないと潰れますよ？」

　宥子（ひろこ）も色々とあったんだろう。これ以上屑をのさばらせているなら潰す宣言をする宥子（ひろこ）に、ダニエラという美女が深々と頭を下げた。

　「申し訳ない。ギルド職員の怠慢は、私の落ち度だ。今後、このような事が無いように指導する。どうか気を静めては貰えないだろうか」

　「構いませんよ。でも、レオンハルトさんには、報告しておきますね」

と返せば、苦虫を噛み潰したような顔になった。何やらレオンハルトという人と因縁があるのか、調べて交渉材料にしようっと。

　「それで、妹はギルドに登録出来るんですか？この人、ギルドに登録出来なくなるようにしてやるとか言ってましたけど」

　宥子（ひろこ）は淡々と話し、私は青ざめて震えているおっさんをニラヲチしていた。

　ダリエラさんの顔が鬼婆も真っ青な般若になっている。

　「登録しますので、大丈夫です」

　「じゃあ、早く登録して下さい。この後、寄るところがあるんです」

　宥子（ひろこ）は私が、おっさんに投げつけて床に落ちていたギルドカードをダリエラに手渡した。

　それを持って、カウンターの中に入って作業をしている。

　ギルドマスターも受付の仕事出来るんだ。雑務出来ない人だと下に着く人が困るもんね。

　「登録できました」

　Ｆランクと書かれた私のギルドカードを受取り、宥子（ひろこ）から名前・職業・ギルドランクだけ表示を受け、その場で変更した。

　「次、訪れる時にはマシな人に対応してもらいたいです」

とだけ宥子（ひろこ）は言い捨てて、私を連れて冒険者ギルドを後にした。

　冒険者ギルドを出た足で入所のところへ行って銀貨８枚を回収し、私を宿へ連れて行った。

　「すみません。二人部屋で素泊まり１ヶ月お願い出来ますか？」

　「いらっしゃい！　前払いになるけど大丈夫かい？」

　「お幾らですか？」

　「１人金貨１８枚と銀貨６枚だ」

　「金貨３７枚・銀貨２枚ですね」

　宥子（ひろこ）と宿屋のおっさんのやり取りを私はぼーっと見てる。

　「計算が早いね。商人さんかい？」

　「冒険者も兼任してますけど。金貨３７枚と銀貨２枚です。出かける際は、フロントに鍵を預ければ良いですか？」

　「ああ、それで構わないよ。もし、食事がしたくなったら併設している酒場で料理を出しているから、別料金になるが食べることもできるよ」

　こっちの飯って旨いのか？素朴な疑問に宥子（ひろこ）はあっさりと

　「その時はお世話になります」

と社交辞令を交わし、鍵を受け取って当てが割れた部屋へと入った。