第14話 趣味に生きてます

 

 宥子ひろこがサイエスに旅立った。誤算なのは、蛇ちゃんズも一緒に連れて行った事だ。置いてくって言ったのに蛇ちゃんズの姿が見えない。折角色々と試したい事があったのに残念だ。

 宥子ひろこの意図はサッパリ分からないが、クスねておいたアイテムを作業部屋の机の上に広げた。

 女王蜂と雑魚蜂と対戦した時に取得したドロップアイテム。

 蜂の羽×12枚

 黄色の魔石(小)×6個

 青い魔石(小)×3個

 赤い魔石(中)×1個

 スクーターで轢き殺したスライムの水色と緑色の魔石(小)20個ずつに私はにやけてしまった。宥子ひろこは私がアイテムをクスねている事を知らないから装飾品を作って鑑定させよう。

 「まずは羽の強度を確かめようかな。」

 強度計があれば良いのだが、生憎私には強度計を買うお金が無いので自分の力で試す事になる。

 羽の両端を持ちグっと力を入れる。ググッと曲がるが折れるという事はない。ハサミを入れても切れなかったので強度はあると見た。

 魔石の強度は均一と仮定しスライムの水色の魔石(小)を研磨機にかけてみる。するすると角が無くなったので、私が持っている研磨機で形を整えていく。

 次にファセットカット機で多角カットしていく。一緒に仕上げもしてカットに歪みが無いか確認した。

 「得に歪みなしか、綺麗にカット出来てるし仕上げも上々かな。」

 残りの魔石を研磨し、綺麗にカットしていった。

 全てをカットし終えて時間を見たらもう夜になっていた。一応、宥子ひろこにメールで不足分はない?とメールしておいた。そしたらピコンを返信が来た。

 「ん?玉が足りないと手入れする道具と包丁を仕舞うタガーケースが欲しいって、此処で服とか装飾品がないっていうのが女子力底辺なんだろうなぁ。まぁ、仕方ない、手配しておこう。」

 PCを立ち上げると新商品の通知メールが鬼のように並んでいたが私は無視して、サニゾンで私と宥子ひろこの分の補充の玉と手入れの初心者キットを二個注文しておいた。

 「タガーケースは私が作ろうかな。確かウルフの毛皮×3枚あったよねぇ。鞣しにしてケース作った方が材料費掛からなくて良いよね!」

 使うのは宥子ひろこだし、一応女子力を高くするとっても可愛い仕上げにしてあげよう!三週間もあるんだし、途中作品の写メして鑑定できるようなら鑑定して貰うのも良いな。

 私は綺麗にウルフの毛皮の汚れを風呂場で落としに行った。





 宥子ひろこが問題に追われている頃、私は遅めの夕食を取っていた。

 「お弁当の材料は明日買いに行くとして、ティッシュは欲しいわ。葉っぱで拭くのはちょっと現代人としての尊厳が削れるような気がする。トイレットペーパーと箱ティッシュも買っておこう。」

 色々と買うものリストに書き込みし明日にでも買いに行こうと誓った。

 私はカットした魔石を確認し、どんなデザインのアクセサリーにするかノートに書き起こしていく。

 「やっぱり大粒の一粒ネックレスは欲しいし、あと花をモチーフにしたピアスも良いな。やっぱり創造意欲が湧くよ!!」

 どんどんとデザインが書きあがる中でふと思った。

 「サイエスのスペルは英語だし、英語の刻印をして魔力を補充すれば魔石が壊れるまで使えるんじゃね?」

 この素朴な疑問が大当たりとなるのは次の異世界冒険(笑)の時に発覚するのであった。

 私は自分の中にある図案を元にアクセサリーを量産していく。勿論、面白半分で魔力を流して付与魔法を付けたりとやりたい放題である。宥子ひろこには伝えてないが、実は付与魔法の殆どは生活魔法の応用だったりするのだ。私は生活魔法と神聖魔法しか取ってなかったからね。他の魔法も取りたいって言ってもスキルポイントで渋られるのが目に見えてるからな。

 アクセサリーに歪みがないか確認し、私は手運び出来る商品ケースに詰めていくのであった。

 異世界で装飾品作家容子まさこが爆発的に流行することになるとは露とも思ってなかったのである。

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