第12話
な? 冴子は変わった子ぉで、なるほどこれでは一人でいてたほうが楽やわなあと納得もしたし、うち自身、あの子に対して理解が追いつかんことも度々あったけど、そここそがあの子に惹かれた最たるところでもあったわけ。
で、この日ぃがそれをちょっと自覚した最初やったわけね。
あとはね、これも結構なポイント思うんが、「匂い」な。匂いていうのは動物的な本能に一番訴えかけてくるもんや思うんですけど、早い話、うちは冴子の匂いにやられてました。あの子の体臭な。
普段はそんなでもないんやけど、あの子が汗ばんだりした時なんかに、ツンと匂いが立つことがあって。
あ、嫌やわそんな顔せんとって。まあ気持ちは分かるけど。うちも他の人の場合やと、生理的に無理や思いますけど、あの子のは何故か平気で、それどころかもっと嗅ぎたい思うぐらいでした。
うち変や、て自分でも思てましたけど、ほんまのことやし。ほんで匂いが好きということは、理屈やなしに好きなんやなあ、相性ええんかなあ、いうふうに思てました。
さっき、あの子の髪の毛ぇについて言うたの覚えてる? しっとり手に吸い付くような髪の毛、言うたの。それはおそらく体臭と無関係ではないと思います。
アポクリン腺やった? それが多いんやんねたしか。体臭がちょっと立つ人いうのは。まあ本人にしたら悩みの種になることもあるんかもしれへんし、冴子もデオドラント用品はいつも持ってたわ。そやけど、その匂いはフェロモン的な役するいうのんも聞いたことあるし、実際うちはそれにやられてたんやしね……。ものすごい魅力になり得ることもあるわけや。
あれ。話が逸れてしもたな。
要は、うちが冴子に惹かれたいうことやけど、なかなか自分でそうと気がつかれへんかったんはやっぱり女の子が相手やからやろうね。
これ、相手が男の子ぉやったらうちの心境ももっと簡単やったんや思います。男の子相手やったらうち自身がもっと意識してたろうからね、良くも悪くも。
冴子は女の子やったからどんだけ親近感持ったところで友情のうちやと自分でも単純に捉えてたし、多分、冴子自身も何も思てなかったん違うかな。
これも後から思えばの話はになんねんけど、学校での冴子の相変わらずな態度を、それまでよりも寂しい感じて、どないかして喋るチャンスないかて虎視眈々やったり、放課後が待ち切れへんみたいな、やけに前のめりな感じになってたけど、その時にはうちは自分のそないな変化にはかなり無頓着やった。ぜーんぜん、自分では気ぃついてなかったの。
のんきなもんやよね。
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