第6話
その日はそのままそこでわりと遅うまで二人で盛り上がって喋ってました。お互いの好きな漫画や漫画家さんの話でね。
冴子の推しはやっぱりサブカル系の作品が多て、うちはそれまでは結構な漫画オタクを自負してたんやけど、冴子の口から出てくる作品は、初めて聞くいうもんもようさんあって。あの子が熱うに語るサブカル論にタジタジとなりました。ああ世の中にはうちの知らん世界はまだまだあんねんなあ! と冴子の話を右耳から左耳へ通り抜けさせながら、白旗振るみたいに痛感してましたよね。
あの子の話はサッパリやったけど、うちはあの子と話してるだけで大満足やったし、間近で顔見てるだけでご飯三杯はいけるいうような感じに、とにかく夢見心地でいたわけやけど、いつの間にやらえらい時間が経ってて、気づいたらもう日がだいぶ傾いてた。
「わあ、もうこんな時間なってる。そろそろ帰らな」
やがて冴子がびっくりした声上げたわ。うちはいつまでもこの時間が続いたらええ思うてたから、それ聞いてものすごうがっかりしたんやけど、でももう五時近うになってたからしゃあない……いうふうに思てたら!
「中野さん、家どこなん?」
て、あの子が聞いてきたんです。
「西が丘の方やけど……?」
うちが言うたらあの子、顔をこう、ぱっと輝かしてねぇ!
「ほんなら電車使うてるんやな? ほれやったら駅から学校へ来る途中、一本道入ったとこに笹野公園てあるん、知ってる? 明日またあそこで喋らへん? 学校終わってから」
いやあ、にわかには信じられませんでした、夢は叶うもんなんやなあ……! いうのを頭のどっかで噛み締めながらも、ぽかーんとするばっかで。
そしたら冴子が、
「あ、何か部活やってた? 放課後あかんかな?」
て顔を曇らして。ここでうちははっとなって、
「ううん、何も。部活はない!」
そう言うたらあの子の顔に満足が広がったんが見てとれました。冴子は嬉しそうに言うてくれました。
「ほんならまた明日やな!」
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