第8話
〜ソクジュの森〜
鬱蒼とした森を金髪の少女が歩いている。
「カラスさーん」
返事は無い。
「カラスさん、今日はいないのかなあ」
毎日この時間に来るのに……と握っているスマホで時間を見る。
―バサッ!!!
大きな影が落ちる。少女の表情が明るくなった。
「……」
「カラスさん!」
「今日も来たのか」
「会えて嬉しいよ!カラスさんも?」
「いや、俺は……」
180センチのカラスを撫でる少女。
「もっふもふー!大きくてかわいい!」
胸元のもふもふに顔を埋めて遊んでいる。カラス……レウォはどうしていいのか分からない。
「あ、水浴びするんだよね。あっちの池で」
「あ、あぁ」
レウォはそのためにこの森に来ていた。誰もいない夕方を狙ってゆっくりと水浴びをするのが楽しみだったのだ。
しかし、1週間前にこの少女に見つかってしまった。
前にも何回か人間に変化後の姿を見られたことはあったが、皆恐ろしがって近づこうとはしなかった。誰もこの少女のように目を輝かせなかった。
「カラスさん、水浴びしないの?」
今からだよ、と言って池に入る。
「わー!羽がツヤツヤ!綺麗!」
「……」
相当カラスが好きな少女らしい。困ったものだ。
いつもは仕事の疲れをこの池で癒すのだが、今日はホウオウからの仕事がほとんどなかった。暇だったのだ。
(ホウオウ様から離れる、か……)
(俺はもう要らないというメッセージなのか……?)
(それが自分で気づくべきことなのかもな)
バシャバシャ。水を浴びる。
(ホウオウ様は俺のことなんて、もう……)
「カラスさん?」
「うわ!?」
考え事をしていたから気づかなかった。こんなに近くに来ていたことに。少女が池に足を入れて座っていることに。
「どうしたの?」
「……いや」
「大きな鳥さんのお友達のこと考えてた?」
「え、なんで分かって……」
「なんとなく!当たってた?」
「当たってるが……」
「大きな鳥さんは大きな鳥さん同士でいろいろあるんだねー」
「……」
「でも、人間と一緒じゃないかな?」
少女が目を細めて笑う。
「言いたいこと言ってみるのが良いよ。喧嘩になっちゃうこともあるかもしれないけど、そうしたら思いっきり喧嘩すればいいよ!」
ハッとする。そうだ、自分一人で悩んでいたって始まらない。
ホウオウがトナに依頼してまでトナに仕事を辞めて欲しいと望んでいるのだとしたら、ちゃんと理由があるはずだ。
(俺はずっとホウオウ様の傍にいたい。それを伝えればきっと……!)
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