第5話
「あんたの依頼人がホウオウ様!?」
「おっと、声がでかいぜ。ホウオウサマは重役なんだろう?シーッだ」
「あ、あぁ……」
「レウォサン、だっけか。あんたのいざこざを解決するために俺が呼ばれた。ホウオウサマに、ね」
「いざこざ……?」
レウォが首を傾げる。
「何か思い当たることはないかい?小さなことでも良い」
「小さなことなわけが……。ホウオウ様直々に頼んでるんだろう?」
トナの笑い声。喉奥で笑う小さな声だ。
「俺は都合良し屋、便利屋というやつだが、第三者の力が必要なときに呼ばれる存在でね。どんなに小さな依頼でも報酬が弾めば受けているのさ」
目を閉じ、口角を上げる。
「つまり、程度の大きさは関係がないというわけだね。どうだい?レウォサン、何か思い当たったかい?」
「うーん……そう言われてもな……」
レウォは困ったように目を泳がせる。
「思い当たらない、か。無意識でやっちまっていることを解決して欲しいという依頼になるね……ホウオウサマにとっては、それだけ深刻なんだろうねェ」
「なっ……!」
絶句。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!俺は何かホウオウ様に迷惑をかけているのか!?」
「さぁねェ?依頼の内容はこれから聞くから、俺もまだ分からないのさ」
「そんな……!」
レウォは真っ青になってしまった。
「良ければホウオウサマとあんたの話を聞かせてくれるかい?解決の参考になるかもしれない」
「う……分かった。長く話すことなんてないが」
「正直に話してくれればそれでいいさ」
レウォが頷く。
「ホウオウ様は数十年前にソクジュに降りてきた。俺はソクジュで人間に紛れて暮らす、ただの一般魔族だったんだが……あの日、ホウオウ様がソクジュに降りてきた日に、人生が変わった」
「ホウオウ様は、怪我をしていた。足に銃弾を受け、虹色の羽をもぎ取られていた。人間がやったんだとすぐに分かった」
「そんな武器を使い、攻撃をしてまで羽を欲しがる人間に驚き、怒りを感じると共に……恐ろしく思った。固まってしまった」
「だが、ホウオウ様は違った。ボロボロの羽を治したいとだけ言った。俺は自室でホウオウ様の看病をした。すると、みるみるうちに美しい羽が生え揃ってきた。彼は翼を広げ、ソクジュの里でホウオウとして姿を見せた」
「ソクジュは昔は鳳凰族との交流が盛んな土地だった。ソクジュの民の前に姿を見せた日に俺は気づいた。ホウオウ様はそれを知っていて、一人で降りてきたんだと」
「危険を冒してまで……」
「それから俺は、ホウオウ様の身の回りの世話をするようになった。この関係は数十年続いているよ」
「ありがとう。よく分かったよ」
トナが目を細めて笑う。
「参考にさせてもらうかもしれないね。これから」
「やはり、俺のサポートに不満があったんだろうか……」
レウォがため息をつく。トナはなんとなーくそんな気はしないがね……とは言わなかった。
(十分信頼関係があるだろう。だからこそ、『逆』が有り得るかもしれないね……)
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