第4話

(ソテの生存確認も済んだし、目的地に向かうかねェ)

「交通費」

「ん、ありがとう。お礼は体で良いかい?」

「そういうのはいい。早く行ってこい」

「ふふふっ」

機嫌が良い。妻に会ったからだろう。

「あ、ソクジュのお土産」

「フィギュア2体」

「オッケイ、任せてくれ。っとと……!おっ!?うっ」

玄関のドアを開けた瞬間、前に倒れた。誰かが先に引いたのだ。外から。

「おっ!」

「ヤバい!!!」

ソテが叫んで机の下に隠れる。

「逃がしませんよ!今日こそ原稿書いてもらいますからね!」

「ちょっと、勘弁してくれ!まだこの本を読み終わっていない!」

「そんなの後でも読めます!」

「痛っ!引っ張るな!」

「あらら……」

ソテは小説家だ。部屋の状態から察しがついていたが、また原稿が終わっていないらしい。

編集とソテが言い争う部屋を後にして、外に出る。

「う〜っ、ストワード地区は冷えるねェ」

上着を握りしめ、再度中央駅に向かう。



「あ」

「おっと」

駅でシンカンセンを待っていると、さっき席が隣だった黒髪の男と目が合った。また同じ車両に乗るようだ。

「すごい偶然だねェ」

「急に帰ることになってね。さっき電話が来た。帰って来いって」

「そういえばソクジュで仕事をしていると言っていたもんなァ。……ん?ってことは、これからソクジュに向かうのかい?」

「あぁ、このシンカンセンで帰るが……え、まさか」

「くくくっ、また同じ駅で降りるらしい」

「はははっ、偶然にしちゃあ出来過ぎていて怖いな」

「そうだなァ。だが、せっかく荷物をまとめて中央まで来たというのに、急用なんて災難だろう」

「本当だよ……。俺にどうしても会わせたい人がいるとかなんとかでね……。結構な気分屋でずっと来てくれなかったんだが、今日ソクジュに来れることになったって急に」

(ん?)

「そういうことなら仕方がないよな……。まぁまだ休みは何日か残っているし、ソクジュの自分の部屋のベッドで寝た方が仕事の疲れも取れるだろう……」

(まさか……)

「中央の第一ホテルを予約していたんだがね……。はぁ……キャンセルしちまったよ……」

「……」

「どうした?急に黙って」

(今回の依頼か……なるほど)

「ええと、すまない」

「?」

「あんたの旅行を台無しにしちまったの、俺かもだ」

「はあ!?!?!?」

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