第2話

黒髪の男と一緒にストワード中央駅で降りる。

「じゃあ、またどこかで」

投げキッスをする。男は苦笑した。

「それはシャフマ流の挨拶かな?」

「俺流、さ。ふふっ。魅了されたかい?」

ぐっと顔を近づけて囁く。男は首を横に振った。

「悪いがそういう趣味はない。じゃあね」

「……あ、そう。残念だ、とても」

かわされてしまった。まぁ、ノられても正直困るのだが。今の自分は既婚者だし。

小さくなっていく男の背中をぼうっと見つめる。

トナにとって自らの色気は社会でたたかうための武器であり、相手を利用するために使うものだ。

成人する前からそうやって使ってきた。

「……さて、叔父サンのところに行くかね」




「あああああアントナ!!!」

扉を開けた瞬間、抱き着かれる。これにももう慣れた。

「おはよう、叔父サン。元気なようで何よりだ」

胸に抱き着いて離れない叔父さんを引き剥がさずに、頭を撫でてやる。

「また依頼が来たでござる!アントナ〜!!!拙者はどれをやれば良いでござるか〜!!!」

「んー、自分で決めればいいんじゃないか?」

やる仕事を決めるのも大統領の仕事のうちだと思うが……とは言わない。自分の取り分、主に報酬の……が減るのは困る。

「じゃあ一緒に見て欲しいでござる!」

「分かったよ。すぐに見よう」



「んー……」

意見箱に来た紙に目を通すが、ほとんどが大統領が自分で動くべきの仕事だ。

「ランサキの川に橋を3つ建てたい……こういうものが8割か。大体いつも同じ感じだな」

「う、うむ!すぐに手配するでござるよ。……で、ええと、その……トナがやるものは……」

「俺が担当するのは小さないざこざさ。今回はこの仕事にしようかね」

長い指で一枚の紙を摘み、胸元にしまう。

「依頼人が大物だ。ふふっ、弾みそうだぜ……」

恍惚な表情で舌なめずりをする。細めた目から青い光が漏れた。

「心も報酬も……な」

「いつも思うのだが、報酬のお金は何に使っているでござるか?」

他の紙を整理しながら聞く、大統領リク。

「もちろんルルへのプレゼントさ。愛は豪華でなきゃだ」

「例えば?」

「おっと、そんなハレンチなことを聞くのかい?」

「え?」

「高級スイーツに決まっているじゃないか。言わせるなよ……」

「……君といると調子が狂うでござる」

「ふふっ、褒め言葉として受け取っておくぜ」

ウィンク。報酬が今から待ち遠しい。

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