第36話 それぞれ思うところ

「お前らの兄の事なんざ、コッチは何も関係ないが」

幽玄は結論を淡々と伝える。


「そうだっ! 関係ないっ!!」

「こっちの都合よっ!!」

その言葉に、双子は火が付いたように噛みついた。

声を荒げ、心拍数が高まり呼吸が早まっているのが見て取れる。


幽玄はそんな双子を見てニヤリと笑った。


「分かり切っているじゃねーか。ならなんでこんなところでチンタラしてんだよ。今更こんなヤクザもんに助けを求めに……とか縋る気なのか?」


「そんなんじゃないわっ! バカにしないでっ!!」

桜子が激怒する。

しかし、桜輔は違っていた。


「お前らに助けてって言ったら、助けてくれるのかよ……」

そんな小さな言葉を幽玄にぶつけてきた。


幽玄は「へぇー」と言いながら笑みを浮かべる。

こいつらにもそんな感情があったのか、と人間臭さを出したことに感心した。


だが、それに気づいた桜子が声を更に荒げた。

「ちょっ! 桜輔っ何言ってるのよっ!!」

想定外だったのであろう、桜子がビックリして桜輔に目を遣る。

そして、腕を掴むと「アンタ何言ってるのか分かってんの!」と引っ張る。


「俺らには関係ないな。それなりの対価積むんなら話は別だが」


畳みかけるようにそう告げる。

兄たちの手前、一応顔を出してその場を収めた。

それで十分だと、ほくそ笑む。


その笑みに双子は感情を再燃させる。

「お前なんかに頼んねーよっ!!」

「いい気になってんじゃないわよっ!!」

なんて、今どき使わない捨て台詞を発して、その場を爆走していった。


二人が去る姿を見送りながら、幽玄は腹を抱えて爆笑する。

「なんだよ、あのセリフ。今どき使う奴とか居たんだな」

そんな揶揄いを含ませながら、只々噴き出し笑い倒していた。

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