第35話 似つかわしくない闇
「俺はここではユウと呼ばれてる。不動家の三男だ」
「あら、ではこの家の息子ってことね。私は
「オレは
「お前ら、立派な名前があったんだな」
臆することなく名乗る二人に幽玄は感心してしまった。
そして誰もギャングツインズとしか知らなかったが、立派な名前が付いていたのである。
「で、なんでお前らがウチに居るんだ」
感心している場合ではなく、幽玄は本題を突きつける。
「ちょっと……散歩よっ! そう散歩っ!!」
「そ……そうだっ! 地域パトロールってやつだっ!」
「へーその割にはしょげてウロウロしていたらしいが」
ニヤリと笑い、幽玄はその嘘を否定する。
双子は──言葉を失った。
「散歩だろ? それ喰ったらさっさとパトロールとかいうものへ行くなり、家へ帰るなりしろ」
畳みかける様に、幽玄はそれ以上何も言うことは無いと、踵を返す。
「……仕方ないじゃない……あのクソ兄が帰ってきてるんだから……」
「──……!?」
その呟きは、桜子からなのか桜輔からなのか、分からない程の小さなものだったが、殺気の様な呪の様な禍々しい何かを含んでいた。
とても幼児が発するものではない。
それは深く深くに存在する闇のようなものでもあった。
幽玄がそれに勘づいて眉をひそめる。
この程度の闇など日常茶飯事で、別段真新しくもない。
それ以上の闇の淵を幽玄は知っている。
それを一般人、それも幼児が発していることに違和感だったのだ。
またこの双子の兄というのは、斑雪の兄でもある。
知るだけでもクソな男だという認識が、何か引っかかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます