第34話 双子、幽玄と対峙する

「あなたは誰?」

「見たことある気がする……」

流れているツインズの噂は真実だと言わんばかりに、双子は臆することなく幽玄を見て『疑問』をぶつけた。


周りは一気に真っ青通り越して、血の気が失せる。

幽玄は思春期ということもあるが、元々の気質から感情の起伏が激しかった。

そして極めつけが双子からの『お前誰だ』発言である。


幽玄という人物が何者か知らないのは仕方ない。

だが、この敷地内でそれが許されることは無い。

この場の全員が、最悪を回避する方向を猛スピードで模索する。

また双子の口を慌てて押さえて『いえ、ガキの戯言ですからっ!』と何とかご機嫌伺いへと走った。


幽玄は怒ることも無く、双子を見下ろす。少し感心していたところもあった。

元々ギャングツインズと言えば『ヤクザ大好きな双子』ということで有名だった。

何故ヤクザが大好きなのかは、誰も分からない。

いや、その理由を聞いた者が居ないのだ。


また、ヤクザと仲良くしていることに対して、親が止める気配がない。

普通なら真っ青になりながら止めさせるであろう。

そもそも親という存在を見た者は、誰もいなかった。


身内か親がその筋なのでは? ということで、この界隈では意見は一致しているのが結論だった。


それでも子供ウケする体格でもなければ容姿でもない集団に……臆することなく声を掛ける姿勢は、ある意味称賛に値する。


双子は同じように臆することなく幽玄を見て、何か勘づいている。

それが幽玄には面白かったのだ。


慌てふためく周りの者どもを手で制止し、双子に視線を向ける。


「お前らが有名な双子のガキか」

「ちゃんと名前があるわ」


女児の方が間髪入れず、指摘する。


「では名乗れ」

「お前から名乗るのが筋だ」


男児も幽玄の言動に一石を投じた。

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