第37話 兄たちの思い

「お前の女の弟妹に、もっと優しくしてやればいいのに」

感情の伴わない言葉に、幽玄は振り返らない。


「覗いていたくせに、意見だけは人の数倍言うんだな」

後ろには、白夜と玉響が面白そうにニヤニヤしながら立っていた。

最初からそこにいたと言わんばかりの存在感である。


「ちゃんと言われたことは果たしました。これ以上は無用です」

幽玄は面白くない。

大体、斑雪についていらん詮索をされることが不愉快だった。

「アイツのお陰で、とんだとばっちりに……」

そんな恨み言を吐く。


「幽玄、お前真面目に学校行くとか言ってなかったか?」

白夜が時計を確認し、指摘する。

時間はだいぶ経過していた。


「まぁ今から滑り込めば三限目には間に合う」

不愉快そうに時計を眺める。それでも行く旨を告げ、幽玄は部屋へ戻っていった。




残されたのは長男と次男の二人。

「なんだろうなぁ、イイ兆しなんだけどなぁ」

「オマエがそう言うなんて、よっぽどなのか?」

玉響の呟きに、白夜は不思議がる。


「そうだね、あの幽玄を手玉に取る女だよ? そこいらと素質自体違う逸材だよね。ただ、まだこの縁が不安定なのは確かだけど」

そう言い、玉響は溜息をつく。

兄としては、この変革に期待したいのだが……なかなか上手くいかないらしい。


「まぁ、兄その一としては、その時は全力で応援してやるよ」

「へぇー利益しか追及しない人が言いますね」

どうでしょ、と笑っている白夜に、玉響がサラッと突っ込む。


お互い化かし合いは、コミュニケーションの一つと化していた。

化かされた方が悪いという、特殊ルールで繋がっている二人にとって、弟の兆しを応援したい事については、珍しく意気投合していた。

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