第19話 クラスメイトだった事実

「今日お越しとは知らなかったですよっ!」

ハラハラしながら、店長はどもりつつ弁明を考える。

その為にここは無難な会話で突っ切ろうと、躍起になっている様であった。


「まぁ、気紛れだけどな」

そういい、幽玄は気になったことを尋ねる。

店長の事情などそんなこと気にもしない。

きっちり後で根掘り葉掘り聞くことにして、とにかく自分の疑問を優先とした。


「俺が学生やってんの知ってるよな」

「えぇ、その点は大抵の者なら把握しております」


「なんでアイツがこの店でバイトしてんだよ」

「お知り合いで……?」


「クラスメイトだ」


その言葉で、店長は青ざめる。

「わかって雇ったのか?」


「申し訳ありませんっ! その……薄々感づいていたのですが、経歴に『中卒』と書かれておりまして……」


その後の店長の言い訳では、斑雪は詐称してバイトに応募。

店長も薄々気づいていたが、人手不足で雇ったという事である。


勤務態度は至って真面目で、特に文句も不満もない。

だから気にせずウィンウィンで成り立っていた、ということだった。


「まぁ、別にその程度でどうこうしねーよ。ただ」

そう言い、頭を抱える。


案外斑雪という人間は逞しいらしい。

ヤクザの経営する店舗に詐称など……気付かなかったのであろうが、それでもなり振りかまわない状況なのは読み取れていた。


「案外、窮鼠なんとやら、になりそうな予感もする」


クラスメイトのそんな奴が、自分の組の店でバイトしていて鉢合わせ。

色々考えてもあまりいい状態ではない。


「今スグ解雇致しますので!」

店長は蒼白になりながら、そう釈明する。


「バカか! そんなことしたらバレるだろっ!」

そう声を荒げ横目に考えながらコツッ、コツッ、コツッ……、と指で机の淵を弾く。

そしてその指が止まると再度、店長を呼んだ。


──……幽玄はふと一つの賭けに出ることとする。


「おい、ちょっとアイツ呼んでくれないか?」

そう言いニヤリと笑う。


とりあえず幽玄はこの出来事の尻拭いとして、自分の得意分野はフルに活用することにした。

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