第17話 暇が生んだ予期せぬ結果

気が付けば、早々と図書室を切り上げたと思っていたが、外は美しい茜色となっていた。

時間の経過に驚き、「あーついでにどっかで飯食うかな」などと画策する。


「たぶん阿紀良は付き合いで遅いだろーし。たまにはどっか女のとこでも寄って帰るか」

そんな事を考えカバンを持ち上げる。

重そうなカバンだが、中身は入っていない。


幽玄は最近何気に思ったことがあった。

今までは勉強というものに興味が全くなかったこともあり、目も向ける事が無かったのだが、この高校に入り気付いたのは、学校でやる事が無い。

そんな経緯があり、何気に授業を聞くようになったのだ。


そうしているうちに、今までお経のように聞こえていた講義が、何となく理解できるようになっていた。

その日一通り聞いた講義は、次までちゃんと覚えており、更に授業がスムーズに頭に入る。


その繰り返しで、気が付けば教師の提示する問題で、分からないものも無くなったし、試験では学年トップとなってしまった。


これには幽玄も驚いた。


「案外、勉強も楽しいものだな」

なんて言い始め、組に出入りしている顧問弁護士に、最近では分からないところまで教わっている。

塾講師の経歴を持っているだけあって、教え方はまあまあで分かりやすい。


「幽玄さん、今度全国模試受けてみたらいいですよ。たぶんいい線行くと思います」

と顧問弁護士にお墨付きをもらう程、幽玄の学力は進化している様であった。


ちょっとその模試を受けてみようかな、と何気に考えている幽玄もいた。

それが丁度今週末だったことを思い出す。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る