③放課後→本業へ

第16話 表の顔と裏の顔

「って、そーいえば中筋通のラブホに寄らないといけなかったっけ」

パソコンの画面を見ながら、幽玄は呟くように確認する。それは組の管轄の店の一つであった。


最初は阿紀良に頼もうかと、携帯を手にした。

しかし、操作する前にその指が止まる。

「アイツも学生業いろいろと迷惑かけてるし、忙しそうだからまぁいいか」

そう言って携帯を置くと立ち上がる。


めんどくさいことは大抵、阿紀良に頼むのだが……最近は学生業で、不良どもの相手が案外忙しいらしい。

その上の、本業での幽玄の補佐もあって……本人は弱音を吐かないが、バタバタなのは幽玄自身も気付いていた。


出来ることは自分でやろう、という結論に到達した。


図書室については、開館時間は一応設けてあるが、結局のところ学生は誰も来ない。

一応、放課後に『開けていた』という実績があればいいだけのことであった。


自分の采配で勝手に閉めても文句も言われないし、誰も困らない。

これ以上居ても時間の無駄だと判断し、パソコンの電源を落とした。


図書室のカーテンを閉めて、誰もやってこないトビラに『閉館』を掲げる。

職員室へ寄り、司書に鍵を返すと終了であった。


「不動くんは真面目で本当にいい子ねー」

なんてやんわりと言う司書はまだ若い女性教員であった。

何故か幽玄には猫なで声で接してくる。

その言葉の裏の意図が鼻に付き、幽玄は距離を置きながら素っ気なく対応する。

女教師は何か言っていたが、そんな事は適当に聞き流しさっさと職員室を出る。

そして背後の扉をやんわり閉めた。


その界隈では有名な童貞喰いの異名を持つ女だった。気づかれていないと思っているのは本人だけである。

「あーいう童貞喰いとか、俺に向けるのマジ勘弁だわ」

この高校には本当にロクな人間がいないな……などと皮肉を漏らし職員室を後にした。

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