第11話 お目付け役の受難
そして幽玄は保険を掛けるために、幼馴染の阿紀良を引き摺り込み入学を果たす。
表で阿紀良が暴れてくれたら、自分にはスポットライトは当たらない。
ついでに陰キャでもやっておけば万々歳だ、という算段である。
よって今年18歳になって高校1年やり直しであった。
その無理難題に対して阿紀良は渋々承諾し、自分の家の肩書と、組長の伝手で入学したことを大々的に宣伝し、入学数ヶ月で猛者共を束ね上げ頂点に君臨した。
元来、幽玄には敵わないが一緒に育った手前、腕っぷしはなかなかだったこともあり、喧嘩では負け知らずであった。
そして幽玄は、自分はイジメ対象にでもしておけ、と命じる。
逆らうことも無く阿紀良は「ハイハイ」とその言葉通りに時々幽玄を適当に弄っていた。
折角手に入れた居場所であった。
それが、目立たないように生きようと思って……朝帰りではなく、朝登校となった事実。
阿紀良は真っ青だったのだ。
今からでも事情を聞いて、時と場合では計画を修正しなければならない。
慌てつつも、こうやって呼び出し状況の説明を求める。
「で、また〝ラフレシア〟でランにしてやられた、と」
そう締め括る阿紀良に、幽玄はコクンと頷く。
「はぁぁぁぁぁっっっっっっ。何でいつも何か抜けてんだよ」
頭を抱えて阿紀良は項垂れた。
「それで気が付いたら、あの不知火の家に転がり込んで朝になって帰ろうとしたら、学校まで引きずられた。と」
「ちなみに、アイツの家の弟妹が『ギャングツインズ』だったぞ」
「え、マジか!! あのヤクザ大好き皆友達的な変わりガキども……通称〝ギャングツインズ〟か」
それはここいらの世界ではある意味有名だった。
極道大好きちびっ子双子が存在し、三輪車に乗り物怖じせずヤクザというものに話しかける。
根源はヤクザ大好きなだけあって大意は全く無い。
子どもに好かれ、人懐っこく話しかけてくるその姿に、気が付けば組の垣根無く親しくなっていた有名なちびっ子であった。
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