第10話 訳アリ再入学

「ユウ、すまんっ! なんかまた〝ラフレシア〟で被害被ったんだろ!」

旧校舎へ入るや否や、阿紀良は深く頭を下げて謝罪する。


そんな阿紀良の態度の変化に動揺することもなく、幽玄は鼻で笑った。

「あー確かに。えらい迷惑を被ったが、別に問題は無い」

溜息をつき、幽玄はメガネを外す。

髪をかき上げ、クラスメイトの前では絶対見せない表情を晒した。


これが幽玄の素の顔である。


「お前がこうやって高校生活の表舞台で目立ってくれるから……俺はバレなくて済む」

「お目付け役の幼馴染みとしては、言われたことは遂行するさ」

そう、幽玄はこの幼馴染である阿紀良を引き摺り込み、今回高校への再入学を果たした。


事の発端は……17歳の時に幽玄が前の高校を退学したことにある。

問題が浮上し、最終的に自主退学ということで手打ちとした。そして高校2年で幽玄は学生を辞めた。


そのまま気ままに生きようと思っていたら『学生じゃないなら家業継げ!』 と組長である父親と大喧嘩を繰り広げる。そして最後に幽玄は「それなら学生に戻ってやるわっ!」と捨て台詞を放ったのだ。


それを素直に了承する組長ではない。

「学生に戻りたいなら条件がある。身元がバレたら即、学校を辞めて家に入れ」

というものである。


幽玄も頭に血が上っていた。

「わかったわ! 覚えておけよっ!」

と売り言葉に買い言葉で話を締め括り、互いが了承した。

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