②奇妙な登校
第9話 いつもの一場面
余りにも怒涛の朝だったこともあり、学校に着いてやっとスマホの画面を開くことができた。
そして、その着歴の多さに幽玄はゲッソリする。
内容は、安否確認や状況説明の要求、いつ帰るのか、等多岐にわたる。
幽玄から「オカンかよ……」と、そんな愚痴も無意識に零れ落ちた。
学校に着くや否や、自転車置き場で幽玄は番長と名高い
学校では陰キャの宿命か、こういう奴らに絡まれるのが常である。
「朝から女と登校とは……言い御身分だな」
その言葉には何やら本気度が伺えた。
いつものように黒フチの眼鏡と前髪で表情を隠している幽玄は、無言で阿紀良を見る。
「何の用ですかね」
「いろいろと、な……」
その状況に
「不知火さんは先に教室行っててよ」
幽玄はそれだけを告げて、手をひらひらさせる。
そして溜息交じりに阿紀良に付いて行こうとした。
それに対してまだ斑雪は言葉をかけようと口を開く。
その瞬間、念押しのように阿紀良は斑雪を睨んだ。
斑雪はビクッとしながら、必死にコクコク頷いていた。
幽玄の呼び出しは日常茶飯事で、誰も気に留めない。
事実、何件かは教員へ伝わっていたが、阿紀良の家系が極道系組員なのを知っているため、いつも言葉を濁す。
降りかかる火の粉はできるだけ関わりたくなかったのだ。
流石ここいら界隈で悪い噂の絶えない『杜ノ宮高校』だけではある。そこそこ問題児が多いのだが、中でも特に
理事長の後押しで入学した手前、誰も文句も言えない。
まさにこの学校では敵なしの存在であった。
それを生徒も知っている。
そして好き放題した阿紀良は、気づけば一年で既にここいら界隈の一大不良勢力と化していた。
そして何故か陰キャの幽玄がターゲットになっていたのである。
他の生徒もは、自分に白羽の矢が立たないこの状況に不満は無く甘んじて認めていた。
だから誰も助けることが無い。
そして、誰も寄り付かない旧校舎の一室に連れて行かれた。
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