第8話 主導権は?

仕方なく、黙って与えられたものを食う幽玄。

もう何でこんな結末なのか、考えるのもめんどくさくなっていた。


とりあえず茶番は適当にして、家へ帰ろうと画策する。

時計を見ると、見たことの無い壁掛け時計がボーッンと鳴った。

(七時半なのか……それにしてもなんてレトロな)

ゼンマイ式の壁掛け時計を見ながら、余りにもレトロ過ぎて逆に感心してしまう。


音と共に「ではそろそろ帰るわ」と立ち上がる。

しかし斑雪はキッ! と幽玄を睨み付けた。


「帰るって、学校は!? ここからなら間に合うから登校するのよっ!」

元気に正論を押し付けドヤ顔の斑雪。


まじか!? と幽玄は呆気に取られてしまっていた。

幽玄は取り敢えず帰りたかったのだ。


風呂にも入りたかったし、何より体中が痛い。

床に寝ていた状態だからであろう。けっこう体中がボロボロだった。

ついでに二日酔いが体に追い打ちをかける。


「いや、兎に角帰ってリセットする……」

そう言ったのだが、斑雪には届かなかったようであった。


そして、そのままズルズルと自転車まで漕がされて、二人は仲良く登校することとなった。



今までこんなに主導権を握られたことは、後にも先にも幽玄は記憶したことが無かった。

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