第5話 確かあの後……

幽玄は必死になって思い出そうと、目覚めていない頭を振り起こす。

(確か……あの後、途中でクルマを降りた……よな)

あれから昂っていたエネルギーを持て余して、幽玄は取り敢えず飲みに行こうとクルマを降りた。


そして馴染みである、不動一家の御子息にも物怖じしないバーテンオネェが経営している店〝ラフレシア〟へ行ったのである。

その店は、幽玄の素性も知っていてフランクに接してくる。


不動組と親しいお陰でその恩恵も受け、えげつない事もしている店だが組ではそれくらい目を瞑っていた。

幽玄にとっても裏営業している『情報屋』にはお世話になっている。

ウィンウィンということであった。


店に着いて扉を開けると「いらっしゃぁ~い♡」と相変わらずの声色で迎えてくれる。

「ユウちゃん~流石に学ランはまずいわよぉ~」

マスターというよりママこと、ランはそう言って眉間にしわを寄せ……溜息を吐いた。


「仕事帰りなんだよ、別にミリも気にしてねーくせに」

そう皮肉を言い幽玄はカウンターの隅の、自分の特等席に座る。


ランは幽玄におしぼりを渡しながら近づき、スンッと何かを嗅ぐ動作をした。

「微かに火薬と血のニオイがする……」

「察しがいいな」

そう言い、それでも満足そうに幽玄は笑む。


「なるほど~そういう『来店』なら、スペシャルでも提供しなくちゃねぇ」

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