①普段と違う朝

第3話 見慣れない場所

「おい……今何時だ……?」

そんな事を言い、いつものように幽玄は時計を見ようと、頭元周りを探る。


しかし一向にお目当てのスマホに行きつくことは無かった。


不思議に思い、眠い目を擦り目を開ける。

目の前にはジャージ姿の女が眠っていた。

ビックリして、辺りを見回そうと反対側を向くと、「起きたわよっ」「こいつ何者なんだ」と同じ顔の幼児が二人で覗き込んでいる。


その顔に幽玄ゆうげんは見覚えがあった。


「ギャングツイン……」


「えー何で私たちのネーム知ってんのよー」


「こいつ只者じゃねぇな……」

訝しげに顔をマジマジと見られ、呆気に取られて言葉も出ない。


どう考えても、女抱いて朝を迎えた図としてはお粗末なもの過ぎた。

いや、その前に幽玄は起き上がって自分の身体を確認する。


昨日と同じ学生服のままで、全く乱れた形跡もない。

部屋は……と、辺りを見回す。


「これ……家なの──か?」


それがとても合っている程、シンプルな掘っ立て小屋のような建物。

雨漏りしそうというより、台風が来たら終わりな状態である。


「うー……ん……、あ……おはよぉ」

そう言うと、隣で目が覚めた女は……それより着ているそのジャージには見覚えがあった。


「お前……もしかして……」

胸元に刺繍されているのは高校名、『杜ノ宮高校』は現在幽玄が通っている高校である。


これでも幽玄は──、不動幽玄ふどうゆうげん杜ノ宮もりのみや高校一年、十八歳であった。

理由がいくつかあり、この歳で今は高校一年をやっている。


そして、目の前のボサボサの頭の女にも見覚えがあった。


(確かクラスメイトにこんな奴いたよな……)

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