第2話 それは『家の手伝い』程度

確かに五体満足なのは見て受け取れたが、とても丁寧に扱われたとは言い難い状態である。

呼吸苦からも、疼痛がかなり体の至るとこで悲鳴を挙げているのが、よく分かる。


「俺はこれでも慈悲に溢れた聖母と呼ばれているんだよ、ほら」

学ランの青年はそんな事をサラッと言い放ち、アキラに向かって手を差し出した。


その手に乗せられた一挺の拳銃。


それを握ると、まじまじと見ながら「ふーん」と言い、どうでも良さそうな感想を態度で示す。

「お前ってホントこれ好きだよな」

「ベレッタが好きなんだよ」

そんな熱く語ろうとしたアキラの口は遮られる。


それ以上は敵わん、と言わんばかりであった。


「まぁ……」

そう言うが早いか、掛かっていた指は動きトリガーは引かれる。


──……パアンッ!


響き渡る銃声、迸る血飛沫。

歪な頭部のまま崩れ落ちていく骸。


残された静寂と、生々しい血のニオイ。


「いいんじゃね?」

銃を再度マジマジと見つめニヤリと笑う。


「そろそろ本腰入れて代紋継げばいいのに」

アキラは溜息交じりにそう進言する。


「別に俺はそんなものに何の価値も見出せてない。面倒くさいだけだろ」

返ってきたきた答えはシンプルだった。

想定内で苦笑しか出ない。


「そう言いながら、やることはちゃんとやってるくせに」

そう言い、転がった骸を顎で指す。


「何処の家でもお手伝いとかするらしいじゃん。これも一応『家のお手伝い』だよ。自由にさせてもらう為の代償だ」

そして、傍に控えていたものが「お疲れ様です」と声を掛け、学生服の上にコートを羽織らせる。


「おい、後は任せたぞ」

「はいはい。承知いたしました、御子息様」


アキラはクスッと笑い深々と頭を下げる。

その嫌味に対し、先程使った拳銃を投げ返した。


「その言い方、次は無いと思えよ」と、釘を刺しその場を去った。

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