監視体制

監視体制(プライベート・アイ)プロローグ

監視体制プライベート・アイ


「はい、相互補完クラウド様」


異能力者サーヴァント達はどうですか?」


「特にご報告することはありません」


「そうですか」


 相互補完クラウド様は、どこか寂しそうな顔を浮かべながら、館の外に目を向けている。とても美しい横顔。ずっと見ていても飽きない。 ここには天地創造クイーン様はいない。わたしだけがこの一瞬を独り占めできる。わたしが相互補完クラウド様を堪能していると、大広間のドアが開く音が聞こえた。


相互補完クラウド


天地創造クイーン、どうされましたか?」


 天地創造クイーン様がやって来ると、相互補完クラウド様は慌てて彼女の近くに駆け寄った。わたしは幸せな時間を奪われたという被害者意識が働いて心の中で舌打ちをした。


「午後のお客様って何組だっけ?」


「10組です。お断りしますか?」


「ありがとう。大丈夫、今日は無性にしたい気分だから」


 天地創造クイーン様は自分に群がる男の数を聞いて興奮している。 吐息を漏らして完熟した桃のように艶やかな頬が色っぽく見える。

 同性であるわたしでも思わず生唾を飲んでしまった。さっきまで怒りの対象だったはずなのに、あの方の色香に心奪われている。

 これは彼女の異能力アビリティの力なのか、それとも彼女自身の魅力なのか。上手く言語化出来ないけど、どちらの要素もあるのは確実だと思う。


 したい気分か。天地創造クイーン様は笑顔で仰っているけど、きっと本心ではない。恐らく異能力アビリティの副作用なのかもしれない。

 天地創造クイーン様の異常な性欲によって、わたしの過去トラウマが目を覚ました。気にしなくなっているはずなのに、ふとした瞬間に思い出フラッシュバックしてしまう。

 学生時代に、わたしの女心は一度死にかけた。元々異性への興味が一般女性よりも少なくて母親にも心配されたことがあった。

 その僅かな女心が虫の息まで追い詰められた。わたしの中に住む処女おとめは殺されかけた。

 だけど、瀕死のわたしを救ってくれた人がいる。それが相互補完クラウド様。彼がいなければ、わたしの女心は完全に死んでいた。


 相互補完クラウド様、あなたは、わたしにとって白馬の王子様。

 わたしを地獄から救い出してくれた恩人です。

 相互補完クラウド様に出会ってから、わたしはずっと恋をしている。

 パソコンの入力作業をしながら、白馬の王子様クラウドさまとの出会いを思い出す。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る