⑫変わらない主従関係
「では、マリアさん行きましょう」
「そうね、檜山さん」」
ワタシが
ワタシはもう店の古株の一員。随分と歳を取ってしまった。
キャスト部屋の鏡に映るワタシは完全なおじさんだ。
白髪も増え始めて顔に少しシワまで現れ始めている。
ワタシは
ワタシはお言葉に甘えて同居させて頂いている。
ワタシは
だけど、
彼女と一つになれる権利を頂けているなら、
これだけ素晴らしい関係を築けているワタシだが、たった一つだけ物足りなさを感じている。
「マリア!」
「近藤くん?」
「支配人!?」
ワタシ達がいるキャスト控え室に支配人が慌ててやってきた。
支配人が店にやって来ることなんて、ほとんどない。
何かよっぽどのことがあったのか!?
支配人の突然の登場にワタシは驚きと同時に嫉妬心が生まれた。
今の生活での唯一の不満の根本が支配人である。
この店も
だけど、ワタシが納得できないことが一つだけある。それは支配人と
ワタシが2人と出会う前から続いている愛人関係は続いているも、体の関係は終わっているという噂も聞く。事実確認は出来ていないが、支配人の男性は機能しないらしい。
それだと
だけど、支配人は別である。肉体的に繋がることが出来ないはずなのに、
彼女は彼を愛している。2人は心で繋がることが出来ている。
今のワタシが1番欲しいものだ。最初は彼女の肉体と繋がられて満足していた。だけど、回数を重ねる毎に
今の彼女の心は支配人のもの。支配人から
それだけがワタシの不満である。
「どうしたの? もう常連のお客様が来る時間よ」
「ちょっと話がある。檜山、キミも来てくれ」
「ワタシもでしょうか?」
もし、バレたらクビを切られるだけで済まないだろう。
支配人はキャスト控え室のドアに鍵をかけて外から誰も入れない状況を生み出す。
「マリア。キミはいつまでも美しい。僕がキミと出会った頃のままだ」
「ありがとう」
「40年前と……全く変わらないね」
「そうね」
「薄々気づいていたけど、キミには何か特別な力でもあるのかい?」
もう隠すことは出来ない。
もちろん、ワタシと出会った30年前と何も変わっていない。
ワタシも
だが、彼女は特に何かをしている様子はない。
新しい
勘の良い支配人が
「あるって言ったら?」
「何もないよ。キミはキミだから」
「そう」
「でも、お店にずっと置けない」
え? それは困る。ここは
それに
店にとっても彼女を手放すことはマイナスのはず。支配人ほどの頭が切れる人間がそんな選択をしないはず。
「どうして?」
「キミがもう40年近く全く見た目が変わっていないことを怪しんでいるスタッフがたくさんいる」
ワタシがスタッフに根回しをして
店のナンバーワンもいずれは老いて店を去るもの。だけど、
「今流行っている美魔女っていうことに出来ない?」
「厳しいな」
「そうよね。だったら、熟女系のお店に移る?」
「それは逆効果だ。キミはどう見ても二十代の女の子にしか見えない。熟女系のお店に行ったら、働いているキャストの反感を買ってしまう」
「そうね。それは働いているキャストさんのプライドを傷つけてしまうね」
もう、ここまでか。ワタシは
「だから、キミのお店を作ろう」
「え?」
予想外の発言にワタシは面を食らってしまった。
まさか、こんな形で新たな
「この店のような風俗街ではなく、隠れ家的なお店はどうだい? 知る者だけが来れる会員制のお店だ。金を持った紳士だけしかキミに触れられない。キミの魅力なら、彼らはいくらでも使うさ。キミもその方が都合が良いじゃないか?」
支配人は我々に配慮した条件の店を提示してきた。
確かにその条件なら、今よりも質の良いお客様と
支配人はそこまで計算をしていたのか!?
「さすが近藤くん!」
「店はキミの好きにしていいよ! 資金は僕に任せて」
「どうして? あなたがオーナーにならないの?」
「僕はキミのおかげで十分に稼がしてもらった。今度は僕が返す番だ。いくら掛かっても良い。キミが働きやすいお店を作りなさい」
「近藤くん……ありがとう!」
支配人は
「檜山!」
支配人は彼女をゆっくり解くと、ワタシの元にゆっくりと近づく。
「はい」
「僕は知っているよ……キミ達の関係を」
え!? バレている! 支配人は去り際にワタシの耳元で囁いた。
どこでバレたんだ!? もしかして、
「ありがとう」
「え?」
「キミも知っているだろうけど、彼女は普通じゃない。異常に行為を求めてくる。仕事だけじゃ彼女を満足させることが出来ない。本当は僕がしてあげたかったんだけど、僕じゃマリアを満足させられないんだ」
支配人は自分の股間を見下ろしながら、寂しそうに呟いた。
やっぱり、あの噂は本当だったんだ。
「だから、マリアの相手をしてくれるキミには感謝している。だけど、キミもそろそろ厳しいだろ?」
ワタシは言い返すことが出来なかった。
薬も服用しているが、それでも1日1回が限度である。
「キミへの負担も抑えるために、新しい店はマリア専門店にしたら、どうだ?。そうすれば、、新しいキャストも必要ないから今回のような問題も起きない」
支配人は
そこまで彼女を想える懐の深さにワタシは完全敗北した気分になった。
「檜山、マリアを頼むよ」
「か、畏まりました!」
ワタシは支配人に頭を下げることしか出来なかった。屈辱だが、これが
ワタシは
どこまで行っても奴隷止まり。ワタシは自分自身の惨めさを感じながら、
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