⑩女神と奴隷が契を結ぶ
生まれたままの姿のオレ達に気まずさは一切なかった。
オレの中では妙な清々しさを感じていた。強引にマリアさんを抱いた罪悪感は不思議と過らなかった。
「檜山くん、どうだった?」
仕事姿と同じ生まれたままの姿をしたマリアさんがオレに訊ねてくる。 彼女にとってこの姿は日常かもしれないが、オレにとってこの姿は非日常である。オレの方が恥ずかしくなって思わず顔を逸らしてしまった。
「ねぇ教えてよ! 好きな女に初めて奪われた感想」
布団の中でマリアさんはオレに抱きついてくる。彼女の豊満な胸が背中に当たる度にオレのオスが再び目を覚ます。
「うん? まだ物足りない?」
「え……」
「正直でよろしい。ちょっと休憩してからしようか」
もう一回マリアさんと出来る。オレの興奮は収まること知らず、オレの中のオスは完全に目を覚ました。
「おっ! 檜山くんは準備万端だね」
オレのオスを見たマリアさんは少女のような笑みを見せる。
その笑顔と似合わない豊満な体を見てオレは体が火照り始める。
「する前に檜山くんに一つお願いがあるの。これを聞いてくれたら、今後アタシを好きにしていいよ」
「え!?」
まるで、ハニー・トラップに誘う悪女のようなセリフを口にするマリアさん。オレの知る女神は目の前にいない。だが、オレはそんな彼女を拒むことが出来なかった。
マリアさんが欲しい。オレは何も考えることなく、黙って頷く。
オレの了承を確認すると、マリアさんの顔が一瞬少女から悪女に変わった気がした。
そんなことなどお構いなしでオレはマリアさんを再び抱いた。
***
何回、マリアさんを堪能したか忘れるくらい彼女の肉体に溺れた。
これだけ凄いと金を払ってまで関係を持ちたいお客達の気持ちが理解できる。だけど、オレは金を払うことなくマリアさんと交わることが出来た。
そんな優越感に浸りながら、見慣れた天井をぼうっと見ている。
マリアさんは毎日数多くの
マリアさんはタフだな。オレは思わず呆気にとられてしまった。
「檜山くん、満足した?」
「は、はい」
「そう、良かった。さっき言ったお願いなんだけど、」
そう言ってマリアさんは一枚の赤い表紙のカードをオレに手渡した。
何だろう? タロットカードかな?
大きな灰色の雲の上に神様を思わせる老人が立っている。そいつが土下座している人間達にタロットカードをばらまいているように描かれている。その見下す視線が父さんを思い出させる。とても不愉快な絵柄だ。
「アタシのお願いは一つだけ。あなたに
「それがマリアさんの望み?」
マリアさんは黙って頷く。正直、ネズミ講のような怪しさを感じずにはいられなかった。だけど、オレは断ることが出来なかった。マリアさんという沼にハマってしまったのだから。
それに、
マリアさんと出会わなければ、死んでいた命だ。
残りの人生は彼女のために使いたい。
「わかりました。オレ、
オレはマリアさんの望みである
その一言を聞いたマリアさんは再び少女のような笑みを浮かべて、
「ありがとう! そうだ。今日からあなたは檜山くんではなく、
「はい、わかりました!」
それがどういう意味を示しているのか理解できなかったが、2人だけの秘密を手に入れた気分になってオレは嬉しかった。
マリアさん改め
こうして、オレは
これが
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