④地獄の鈍行列車

父さんの呪縛から解放された嬉しさはオレの中から、すぐに消えた。

 同時に自分の無謀さを思い知ることになる。祖父の家に逃げる選択肢を捨てたオレは行く宛もない。そんなオレは野良犬や野良猫と同じだ。


 居場所がない人間は警察に保護される。

 そして、自分のことについて洗いざらい訊かれてしまう。

 そうすればオレがアイツの息子ということもすぐにバレる。

 この街を離れよう。出来るだけオレという存在を知らない場所へと行かなくては。


 オレは、まずは所持金がどれだけあるか確認する。祖父からもらったお年玉や小遣いを合わせても5万円か。

 この金を使って出来るだけ遠くへ逃げよう。


「どこへ行けば」


 オレは駅の運行表と睨めっこをしながら行き先を考える。

 とりあえず東京へ行こう。あそこは日本で最大の都市であり、オレみたいな身寄りのない人間に居場所を与えてくれる。

 それだけ日本が抱えている闇も集まりやすい都市でもある。


 でも、ここでただ死ぬのを待つくらいなら、日本の闇の中に飛び込む方がマシだ。今以上の地獄が訪れることはないだろう。

 オレはすぐに地元から逃げるように東京行きの電車に飛び乗った。


「さようなら、オレの地獄の日々」


 電車の窓に映る眠りについた故郷をオレはぼんやりと見送った。

 もう二度と踏むことのない故郷の大地を。

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