相互補完

相互補完(クラウド) プロローグ

 ワタシの隣で天地創造クイーンが寂しそうな横顔を浮かべながら、空を見上げている。美しい。マリアさん、あなたはあの時と変わらず美しい。

 もちろん、天地創造クイーンの影響であることは分かっている。

 しかし、ワタシが初めて出会った時の美しさを今でも変わっていない。 見た目だけではなく、内面から滲み出ている美しさと優しさも、あの時のままだ。

 ワタシがあなたのことをマリアさんって呼ぶのは、いつぶりかな?

 記憶が正しかったら、天地創造クイーンから相互補完クラウドの力を授かって以来のような気がする。


 同時にワタシは、あなたに対する気持ちも一緒に封印した。

 誰にも明かしたことの特別な想いを。


 マリアさんは先週亡くなった近藤さんを思い出しているのだろう。


 近藤さん、ワタシはあなたが羨ましいと思っていた。

 あなたとマリアさんは、ずっと繋がっていた。

 肉体は繋がれなくても心は繋がっている。

 そんな恋愛物語のような清い関係をお二人は続けていらした。


 その中にワタシが入る隙は一切なかった。


 ワタシは、あなたのようにマリアさんの心を奪うことは出来なかった。 あなたは勝ち逃げしましたね。悔しい。あなたはもうこの世にいないのに。マリアさんの心の中でずっと生き続けている。


 オレが死んだ時、マリアさんの心の中で存在できているのかな?


 まさか、ワタシが昔の一人称を使ってしまうなんて。もうオレという一人称を使う程若くもないのに。ワタシに残っているのは老い続けて死ぬだけ。

 では、ワタシも少し昔の思い出にでも浸りましょうか。


 ワタシが家族から逃げて檜山じぶんを捨てたあの日にまで。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る