⑨最低な告白と最高のキス
アタシが初めて近藤くんと出会ったのは、
いつものようにアタシは性欲を満たすためにオスを探していた。
そんな時に誘った一人が近藤くんであった。
見た目は誠実そうな青年というイメージだった。アタシのように自分の体を簡単に差し出す女を相手にしないタイプだと思っていた。
だけど、彼はアタシの誘いを簡単に乗ってくれた。そのまま関係を持つことになった。彼は見た目と違って女の体を喜ばせるのが上手かった。
「マリアさん、僕の恋人になってくれないか?」
行為を終えたばかりのアタシは生まれた時の姿だった。
そんなアタシに近藤くんは告白してきた。
アタシは数え切れない男に好意を抱かれたけど、こんなムードのない告白をされたのは初めてだ。
他の男は体目的だと悟られないために、夜景がきれいな高層ビルや夕焼けがきれいな海辺などを選んでくれた。アタシも女心をくすぐられて一度受け入れたこともあった。すぐに体を許した瞬間に、もう女扱いをしてくれることはなかった。
そんな男との行為で心は満たされることはない。
近藤くんの告白を受け入れてもアタシが幸せになれる未来を想像することは出来ない。
「どうしてアタシを恋人にしたいの?」
アタシは答えが分かっているのに、わざと近藤くんに訊ねた。
まさか、キミと行為したいからだよ。そんなバカなことは言わないとは思うけど。近藤くんが何て答えてくれるかな?
「キミが好きだからだよ」
近藤くんは当たり障りのない答えを返してきた。
こんな状況で告白してきたから面白いことを言ってくれると思ったのに。ちょっと期待外れだ。
「アタシはあなたにふさわしくないです。だって、アタシは誰ともやってしまう最低な女ですよ」
アタシが最近よく使う断り文句だ。これを言われた男はアタシから離れていく。誰とでも行為をしてしまう尻軽女を好む男なんていない。
「心配いらないよ。僕も最低な男だから」
「え?」
「僕は結婚している。奥さんの実家がお金持ちだから。それだけの理由で結婚したから、奥さんに全く愛情が沸かない。だから、色んな女性と関係を持っている。ほら、最低な男だろ?」
近藤くんは子供のように曇りのない笑みをアタシに向けた。
内容は最低なクズ男の発言なのに。
でも、自分の汚い部分を堂々とさらけ出せる彼に惹かれ始めた。
「マリアさん、こんな最低な僕と付き合ってくれませんか?」
彼からの告白を聞いてアタシは思わず笑ってしまった。
こんなトキメキを全く感じない告白をされたのは初めてだ。
でも、純粋な近藤くんの気持ちにアタシは答えたい。
「はい。最低なアタシですが、よろしくお願いします」
アタシは近藤くんの気持ちに応えるように唇を重ねた。
愛という感情を込めたキスを。
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