④甘い蜜(わな)は不幸の味

アタシは蜜谷さんと体の関係を持った。


 レストランでの食事を終えた後、六本木にあるホテルへと蜜谷さんに連れられた。アタシは初めてラブホテルへと入った。

 アタシも子供じゃないから、ただのホテルじゃないことは知っている。ここがどのような目的のために存在するのか、二人で一緒に入ることが示す意味も理解できている。


 ここは愛し合う男と女が体の関係を持つ場所。

 おとぎ話のようにきれいにまとめたら、この言い方が一番しっくり来ると思う。


 しかし、そんなきれいなものじゃないとアタシは気づかされた。

 性欲の発散場。部屋に入るな否や、蜜谷さんはアタシの唇を奪う。

 そのままアタシをベッドに押し倒して体を交わらせた。


 アタシは処女こどもから女性おとなになった。

 初めては痛いと噂では聞くけど、痛みを感じるヒマもなかった。

 彼自身がアタシの中へとどんどんと入ってくる。


 男ではなく、オスになっている蜜谷さんが怖くて彼の顔を見ることが出来なかった。アタシは痛みに耐えながら、目を閉じて耐えた。


 男はキレイな女を抱くことでオスとして優越感に浸れる生き物だ。

 アタシみたいなブサイクな女を恋人にして抱けることが蜜谷さんにとって何の得があるのだろう。


 アタシはほぼ愛なき行為レイプに近い状況でも冷静に蜜谷さんにとってメリットを考えていた。主観的になってしまったら、この状況に耐えられない。


 数時間前に愛の告白を受けたと思っていたのに、心を許した途端に体を求められるなんて。彼も他の男と同じく性欲が発散できれば誰でも良かったのだ。


 でも、初めての男が蜜谷さんで良かった。ブサイクで不潔な男に奪われるくらいなら、顔が良い男に奪われた方がまだマシだ。


 アタシは最低男みつたにに騙された自分を肯定するように彼の性欲発散に貢献した。

最低男みつたにに騙された自分を肯定するように彼の性欲発散に貢献した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る