④既成事実を作りましょう!
「マユ」
僕は蝶野の体越しにマユを見た。マユは四年前のあどけない少女から大人へと成長していた。
以前よりもマユの胸元の膨らみが大きくなった気がする。なのに腰回りに無駄な肉がついていないように見える。
「蝶野くん、どうした?」
でも、透き通るように可愛らしい声は変わっていない。昔、声優になったらと勧めたいくらいにマユの声は僕の好みだった。アニメオタクの心をくすぐる声だから、声優でも成功するに違いない。
いけない。マユに見惚れている場合じゃなかった。僕は四年ぶりに再開できたマユに感動してしまい、本来の目的を見失ってしまった。
「話があるんだ」
「何?」
「ここじゃ出来ない大事な話なんだ」
「いいよ」
***
僕の誘いに乗ってくれたマユを大学のキャンパス裏へと連れて行った。キャンパス裏はオレンジの光がこれから復讐劇を始めようとする僕を照らしていた。
マユは蝶野に
「蝶野くん、話って?」
「俺、お前のことが好きだ。高校時代も気持ちを伝えたけど。やっぱり、諦められない」
僕は蝶野を利用して自分の想いを伝えた。
卑怯者と罵られても構わない。
僕に出来る方法はこれしかない。
「蝶野くん、ごめんなさい」
マユは僕の告白を断った。
当然だ。蝶野自身も四年前に告白して断れている。
僕は諦められない。僕はマユが好きだった。子供の頃からずっと好きだった。マユと添い遂げることを夢にまで見ていた。
性欲に負けて数々の女性と行為をしたが、いつもマユが頭に過っていた。マユと一つになれたら、こうじゃないか。こうしたいなど。
僕は目の前の女性をマユに置き換えて行為を楽しんでいた。
人間のクズの僕でもここは譲ることは出来ない。
「何でだよ。俺じゃダメなのか?」
僕は蝶野の目で訴える。目力を入れすぎると、
マユ、キミに
僕はこの力で数々の女性との体験をすることが出来た。
でも、キミはこの力を使わずに僕のものにしたい。
マユ、僕のものになってくれ。
「蝶野くん、前にも言ったけど。わたしには好きな人がいるの」
マユは女子が困った時の断り文句を口にする。蝶野の頭の中に同じ理由で断れていた記憶があった。四年前と同じ理由で断るなんて、どういうことなんだろう?
蝶野のことがよっぽど嫌いなのか、本当に想いを寄せている人がいるのか。まぁ、同じ人間にしつこく告白されたら、この反応になるかもしれない。
まぁ、これで蝶野はマユにとって眼中にない。これだけでも確認できたことが蝶野への復讐に繋がる。僕は満足だ。
でも、マユの好きな人って誰だろう?
きっと僕みたいな根暗でデブなアニメオタクじゃなくて高身長で細身のイケメンだろうけど。
「誰だよ」
僕はマユに好意を抱いている異性の名前を訊いた。
知りたいという気持ちの反面、マユが好意を寄せている異性の名前を聞きたくないという矛盾が僕を襲う。
「羽賀くん」
え? 今なんて言った?
マユが僕のことを好きだって。
「わたし、羽賀くんのことがずっと好きなの。
幼稚園の頃からずっと。だから、あなたの気持ちには答えられない」
マユが僕のことを好きだった。幼稚園の頃からずっと。
僕はマユの気持ちを知った途端、自分が醜い存在だと思い知らされる。
しかも、僕のことを好きでいてくれたなんて。こんな卑怯者の僕のことを。
誰かを操る力を使わないと告白も出来ない
それだけでも知れて僕にも生きている価値があることを理解した。
「そ、そっか。じゃあな」
マユに最後の別れを告げると、マユが僕の腕を掴んだ。
「え?」
振り返ると、マユが僕を見る目の色が変わっていた。
まるで、恋する乙女のようにとろけた目をしている。
まさか。僕は最悪な事態が頭を過った。
僕の意志に反して
マユは蝶野のことを理想の異性と誤認している。
焦る僕を余所にマユは顔を近づける。マユは唇が重なる距離まで縮まっていた。
このままではマユと僕は……。
僕の言うことを利かない。
マユを求めてしまった僕の欲望に反応してしまったのか!?
「やめろ……」
一番恐れていた事が起きた。マユに
マユと僕の唇が重なると、マユは何かに取り憑かれたように激しいキスをする。そのまま僕を空き教室まで強引に連れて行く。
マユは華奢な体に似合わない力で僕を机の上に押しつけた。
僕は抵抗することが出来ず、マユに犯され始める。
***
数分間、僕はマユと行為を行った。
僕は蝶野の体を使ってマユを
まだ大人になる準備の出来ていないマユを。
「マユ、ごめん」
僕はマユを
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます