他力本願(カッコウ) エピローグ
わたしは
館中を探しても見つからない。
でも、彼女の姿が見つからない。一体、どこへ行ってしまったのだろう?
「
「どうしました。
「
「どうされたんですか?」
「
「あぁ、大丈夫ですよ。それに今は……」
この声は……。わたしはすぐにこの声の主がわかった。
わたしたちの主である
「二階でお仕事中です」
「そうでしたね」
こんな早朝から予約が入っていたなんて。主の勤務時間を忘れているなんて。思考が抜けている自分が恥ずかしい。
わたし達に自分のあえぎ声を聞かれていることなど知らない
わたし達はその声をただ黙って聞くことしか出来なかった。
10分程続いた
「終わったようですね」
二階の階段から誰かが下りてくる足音が聞こえた。一つは革靴の音、もう一つはヒールがコツコツと階段を鳴らす音である。
わたしも
階段から栗色のロングヘアーに純白のドレスに身を包んだ美女と中肉中背の冴えない男が下りてきた。
わたし達の主である
「マリアちゃん、今日も良かったよ」
「大守さん、いつもありがとうございます」
「こっちこそ、マリアちゃんのおかげで俺は明日からまた頑張れるよ」
「大守さん、マリアばっかりで飽きないの? たまには別の女の子が良いなってならない?」
「そんなことないよ。俺はもうマリアちゃんナシじゃ生きられない体なんだから」
「またまた。本当は別のお店の女の子とやってるんじゃないの?」
「本当だって。俺はマリアちゃん以外の女とはやらないよ。
マリアちゃんのためにバリバリ稼いでくれるからね」
「嬉しい! 楽しみに待ってるね!」
マリアとは
大守様は数分前まで布越しではなく直に触っていたであろう。
恐らくその記憶が大守様の興奮に拍車をかけていらっしゃる。
「大守さん?」
「あぁ、なんでもないよ」
「うん。じゃあね、大守さん」
ケガレを知らない少女が恋人にするように優しい口づけであった。
このキスに数々の男性が
「うん。マリアちゃん、またね」
「大守様、またのご来店お待ちしております」
「お疲れ様でした、マリアさん。いえ、
お仕事を終えた
「ご苦労様でした。
「ありがとう、クラウド」
疲れ切った
「美味しい。
「ありがとうございます。
私たちのために体を張って頂いている
「良いのよ。それにアタシの
「仰るとおりです」
「
「あら、アイちゃん」
「お疲れ様でした」
「ありがとう」
「わたし達のためにありがとうございます。しかし、
「どうしたの?」
「
「
「大丈夫よ。今更、男に裸を見られたり、抱かれることが恥ずかしいなんて思わないわ。恥ずかしさなんてもう忘れちゃった」
その笑顔を見たわたしは自分がとんでもないことを口走ってしまったことに気づく。
「
「申し訳ございません。大変失礼致しました」
「良いのよ。あなたはアタシを気にしてくれているのよね?アイちゃんは優しい子ね」
「ありがとうございます」
「
「三十分後です」
「あら、大変。急いで支度をしなくちゃ」
「ただいま、お部屋を準備致します」
「お願いするわね。お客様が来るまでにアタシも支度をしておくわ」
「
「どうされました?」
「申し訳ありません。わたし……」
わたしは
「もう良いのです」
「しかし……」
「私達が出来るのは
「はい」
「これからも力を貸してください。
「はい」
例え、それがあなたも幸せになられない道だとしても。
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