⑥能ある鷹の侵略

「鷹野くん、ちょっと来たまえ」


「はい」


 今日も部長から呼び出しだ。嫌だな。タメ息を漏らしながら、俺は部長のデスクへと向かう。落ちた気分で向かうも部長の声色がいつもと違うことに俺は違和感を覚えた。


「どうしたんだね、キミ。急に成績上がったじゃないか」


「はい。なんとかなりました」


「これからも頼むよ」


 あれ? 部長に褒められた。俺が入社して初めてだ。俺は心の中でガッツポーズをした。褒められた俺は自分のデスクへと戻ると、入れ替わりで同期の大鷲が部長のデスクへと向かう。


「大鷲くん」


「はい」


「キミはどうしたんだ!? 先月から新規の獲得が0件じゃないか」


「申し訳ございません」


「ごめんで済むか。さっさと営業に行け!」


「はい!」


 部長に怒られた大鷲はデカい図体でカバン片手にデスクを飛び出していった。

 まるで、今までの俺を見ているようだ。


「はい、鷹野です。お世話になっております」


 先日、取引の始まった新規営業先だ。飛び込みの営業にもかかわらず、先方の心を掴むことが出来た俺は契約を結ぶことに成功した。


 俺は営業先からの電話内容を手元にあるメモ用紙に書き込みをする。クソ、左手だと書きづらいな。なんで、あいつ左利きなんだよ。

 しかも電話中にペン回しなんかやっているだ。


 俺の意志とは関係なく、左手が勝手にボールペンを回している。

 あいつのクセだな。あいつ、考え事しているときはいつもやっていたな。あいつの能力は欲しかったけど、あいつのクセまでいらない。

 

 俺は心の中で文句を言いながら、営業先との電話を続けた。

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