ヤク地蔵 - 4(了)

 マーティンと七人の猟師は、山小屋で年を越しました。


 煙管で猟師は気前が良く、マーティンにあれこれと美酒を勧め、珍味を出し、金目の物をどんどん分け与えました。


 マーティンはよく飲み、よく食べ、贈り物を受け取りエビス顔です。新年早々ツキが来た。これだけあれば逃走も再起もできる。


 気になるのは猟師の肌。全員が石像のような皮膚。よく考えれば誰にでも説明できることでした。

 

 あの石像が化けたんじゃないか?

 ジャパニーズ・モノノケ。


 彼には確信がありました。猟師がキメているハッパは俺のだと。彼の大麻でなければこの匂いが出ないからです。

 

 クサをキメて気前良くなったモノノケが俺に恩返しをしたってことだ。

 マーティンはそう結論してすべてを受け取ったのです。


 夜は明け、猟師の一人がマーティンを外に連れ出します。


「帰るにはいい時分だ。県道まで案内してやるよ」


 マーティンは猟師に導かれ、県道に戻りました。

 猟師は林へ戻ります。路上で猟師に手を振るマーティン。

 そこに暴走トラックが現れてマーティンを跳ね飛ばして殺しました。


「こんなものを売られると皆ダメになっちまう。許してくれ」


 そう言い残し、猟師は林の奥に姿を消したのです。

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