第二章 力の矛先 6

 数日後に迫った慰霊式典は、タイトロープ島郊外に作られた慰霊公園で行われる。今は白い霧に覆われ、気温の急低下で立ち入ることすら禁じられたパムリコ島が見える、見晴らしの良い場所だ。


 直通のバスから降りる。タイトロープ市街地の花屋で調達した花束を抱えて、ドミニクと共に慰霊公園に立ち入った。


 空は青い。薄く雲が広がっていて、照り付ける太陽は心なしか強く感じる。珍しく、オーロラは殆ど見えなかった。


 式典の準備をする市の職員や、慰霊碑に祈りを捧げようとやってきた観光客。人ごみに紛れようと思っても、シャルロットもドミニクもそこそこ目立つのかちらちらと視線を感じる。


 とはいえ、二人もカップルでやってきた観光客に見えるはずだ。


「立派な場所ですね」

「そりゃそうだろ。何人死んだと思ってる──約三千人だぞ」


 小さく、ぼそりとドミニクは呟いた。パムリコ島はアズテック諸島第二の人口規模を誇る島だった。観光客の中には、あまりに被害の規模と事件が起こった期間が似使わなくて現実味がない者もいるだろう。


「……こんなことしか、できないからな」


 観光客の間を縫って、ドミニクは足早に慰霊碑へと向かった。歩様が早くなったのは、今まで迷っていたが覚悟を決めたのだろう。


「……前も言ったでしょう? こんなことでも、充分ですよ」


 ちゃんと向き合って、自分が全部悪いわけじゃないのに罪悪感を持っている。そんな状態で弔う意思だって持っているなら、充分を通り越して偉いとまで思う。


 そうして、慰霊公園が作られた岬の先端。遠方に霧に閉ざされたパムリコ島が見える行き止まりに、花崗岩で作られた巨大な慰霊碑に辿り着く。


 周りの観光客は次々に慰霊碑を訪れ、花を置き、祈って去って行く。時たま、碑に刻まれた犠牲者の名前を確認する者がいたり、岬の先端まで行ってパムリコ島の方角を眺めたり。誰もが物珍しそうに、けれど神妙な面持ちでいる。


 そんな観光客の邪魔にならないよう、献花台の隅に立ったドミニクは、しばらくそのまま突っ立っていた。一人、また一人と花を置いていくなか、どうにも動こうとしない。


 シャルロットは一歩後ろで待機したまま、急かそうとはしなかった。ドミニクに思うところが山ほどあるのは分かり切っている。存分に考えさせて、満足したら連れ立てばいい。待っている自分の存在が、彼の思考に歯止めをかけているのも、何となく分かっている。


 シャルロットは待ち時間の間、遠方に見えるパムリコ島を眺めた。


 現在は白い霧で覆われ、周囲が極端に寒冷化しているために近寄ることもままならないという。パムリコ島にあったラクナ・クリスタルが氷属性に偏化したのが原因らしいが、その変異をもたらしたのももとはと言えば癌災害が発端。発作を起こしたドミニクを抑えるため、人為的に属性を変えたまま、元に戻すことができなかったらしい。


 そこだけ時間が止まったよう。


 凍てついた島は、きっと真っ白なまま当時を保っている。


 そのまま数十秒、数分経っただろうか。そろそろ移動しないと目立つなと思うが、ドミニクはまだ花を置こうとしなかった。これ以上引き延ばすのは彼にとっても良くないだろう。意識を現実に引き戻そうとシャルロットが口を開いた時、ふと横に人の気配がした。僅かに太陽を遮ってシャルロットに影を落としたのは、二人よりも背が高く、体格のいい男だった。


「ホワイトフィールド」


 声に反応して、ドミニクが体を捻って振り返る。わなわなと口を震わせて、彼は声をかけてきた男を凝視した。


「ひでぇ顔してるぜ。そら、献花するなら置いちまえよ。詰まってんだ」


 脱いだジャケットを腕にかけたリアムが、物珍し気にドミニクを見ていた。


 彼は当時パムリコ島にいた。唯一、慰霊碑に名が刻まれていない。


 何が起こったのか、全て、知っている。


 パムリコ島の癌災害。唯一の生き残りという業を背負ったのが、リアム・スタインズという男だ。


「……あぁ」


 ドミニクは絞り出すように呟いて、献花台に百合の花束を置いた。小さく会釈をして黙祷すると、踵を返してリアムに向き合う。


「今日来たから式典には出ねぇ、なんて無しだぜ?」

「……そんなつもりは」


 言葉尻が震えている。ドミニクは強く目を瞑った後、意を決して口にした。


「……一つ、お聞きしたいことができました」

「一つと言わず、何個でも答えるぜ──来な」


 言いながら、リアムは踵を返して歩き出す。後に続くと、簡易のテント小屋へ案内された。


 人っ子一人いないテント小屋の中、適当に並べられた椅子に座る。リアムは指につけていたアーマーリングを輝かせると、何かしらの魔法を使ったようだった。


 途端に、外の音が遮断される。人払いも兼ねた盗聴対策の結界だ。


「……こんなことできるんですね」

「市政に関わる役職の人間は、使えるに越したことないからな。それ用に指輪型の魔導機器が売ってるんだ──さて坊主。俺に聞きたいことってのは?」


 リアムは静かに問うた。


「……貴方は〝糧にしろ〟と言った。彼らの死が無駄にならないように。何か意味があってほしいと願うように」

「そうだな」

「それはエゴだ。落としどころが欲しいから、理由を外に欲しがっているに過ぎない」


 思いがけず、厳しい言葉だった。


 ドミニクさんそれは、と咎めようとして、しかし間髪入れずにリアムが答える。


「そうに決まってんだろ──あいつらが何をした? テメェにもテラサルースにも、何もしてねェだろうが。普通に生きてただけだ、それがどうして死ななきゃならなかった。土地まで奪われて」

「なら何故」

「でもな。この間言ったことも本当なんだよ。全部が全部悪いのはテメェじゃねぇ。パムリコ島にテラサルースを引き込んだ奴が悪いし、そこで人体実験なんぞしてた連中が悪い。奴らに対する怒りも、あいつらが死んだことに意味があってほしいと思うことも──お前さんを憎みたくても憎めねぇこともだ」


 少し怒気の籠った声で言ったリアムに、ドミニクは顔を伏せた。


 彼の対面に座っているシャルロットは、じっとドミニクの表情を観察する。


「……よかったよ、綺麗事じゃなくて」


 小さくドミニクの口角がつり上がっている。安堵したような、どこか悲しそうな顔だ。


「貴方がどこまで聞いているのかは分からない。知る権利があると思うから、あの日あったことを望むなら話す。その代わりに──貴方が見たことの全てを、教えてほしい」


 ──理性が飛んでいて、俺はジオが撮った映像を見ただけで、何も知らない。


 相互理解は、互いを知るところから。


 パムリコ島が実際どのようになっていたのか、関係者が記した記録以外は、ドミニクだって知らないのだ。


「良いぜ」


 リアムは言って、手持無沙汰に懐からたばこを取り出す。


 ジッポライターを開けても、火がつかなかった。数回開け閉めしても火が灯ることがなかったので、見かねたドミニクは自分の指を差し出した。


 フィンガースナップ一つで、親指に魔力の光が灯る。八年前、パムリコ島を焼き払ったのと同じ、青白い光が。


「どうぞ」

「悪いな」


 が、リアムは特に気に留めず、ドミニクの魔力でたばこに火をつけると、深く吸い込んで紫煙を吐き出す。シャルロットは煙たさに顔をしかめたが、自分は壁にでもなっておいた方がいいと判断したのでぐっと堪えた。


「……あの日、魔石の取引でパムリコ島にいてな。保管倉庫が地下にあって、運搬作業をしてたんだ。地下道が入り組んでるわ地下深くにあるわで、クソかと思ったよ。非常用の備蓄でな」


 ぽつぽつと、リアムが話し出す。シャルロットは当然、荒れ狂っていたドミニクが知ることもない、一般市民の、あの日の事をだ。


「そしたら急に地上の方で音がした。生き埋めになったらマズいと思って外に出ようとしたら、扉が熱くて開かねぇんだ。しばらく待ってたら地下道の奥から急に冷気が噴き出してきてな、それで扉が冷えたから、開けた。開けたら、何もかもが熔けて消えてた」


 俺が見たのは、暴れる黒いドラゴンみたいなキャンサーと、たったの二人で交戦してる葬儀官たちだった。


 その二人は、恐らく近くで交戦していた正嗣とリシャだ。ジオは遠方から狙撃をしていたはずだから、視認できなかったのだろう。


「素人目に見てもヤバい戦いだった。地下はあんだけ冷たかったのに、外は熱くて火傷しそうなくらいで。あの人達が死んだら、俺も死ぬんだろうなって考えてた」

「……だが、俺は貴方を殺さなかった」

「そうだ。戦いは終わって、二人の……木内葬儀官とハミルトン葬儀官は重症、セラス葬儀官も熱中症で、ろくに移動できそうもなかったんだ。接岸した海保の巡視船に運んだのは俺なんだよ。もちろん、悪性細胞まみれの坊主、お前さんもな」

「貴方が俺を?」

「おうよ。木内葬儀官たちが何を思ってお前をキャンサーから引っ張り出したのかは分からねぇが、周りが消し炭になってる中で息があったんだ……そりゃ、助けようともするさ」


 生きてる奴に死なないでほしい、生きてほしいって思うのは当然だろ?


 最後に結んで、リアムはどこか遠い目をして思い出話を終えた。


 死にかけた命に、生きていてほしいと願う。自分と同じ形のものが壊れてほしくないと願う、真っ当な人間の理念かもしれない。


「正直な話、いまでも実感がねぇ。俺は偶然助かったが、何もかもが熔けて真っ白になっちまったから……そこに何千人の人が住んでたってことすら、嘘だったんじゃないかって思えちまってな。尚更なんだ、後で調査報告を受けても……死にそうだったお前さんの顔が浮かんで、恨みたくても恨み切れねぇ」

「……恨んでくれてもいいのに?」

「だから、恨む代わりに……憎む代わりにお前さんが、あいつらの分まで前を向いてくれれば、ってな。そのための機会が与えられねぇもんかって」


 リアムが再び紫煙を吐く。


「だから、お前のためでもあるし、俺のためでもある。弔いたい気持ちはあるんだろ? 素直に祈ってやりな」


 吸い潰したたばこを携帯灰皿に押し込んだリアムは、最後に言った。


「弔いも祈りも、誰かの許可を得てやるもんじゃねぇよ」


 ──そう。弔事とは、心の奥底から湧きだすものだ。誰かの許しを得ないともっていけない感情ではない。


「……怖かったんだ」


 しばらく口をつぐんでいたドミニクが、ぼそりと呟いた。顔を伏せて再び項垂れた彼が、膝の上で痕がつくほど両手を組んでいる。


 視認できるほど腕が振るえていた。


「黙祷したい気持ちはあったが、でも……あれだけの人間を殺した。周りの人間が癌災害の事を話すたび、誰もが俺を責め立てている気がして……当然だと思うのに、苦しくて、止めてくれと。だからここには来たくなかった、人の視線が怖くて、反射的に殺したくなるから」

「自己防衛のためか」

「いや、自己崩壊症でだ。人への殺意が、止まらなくなる時がある。けど耐えられなくなったらそれこそパムリコ島の二の舞になるだろう、誰かが犠牲になる可能性は、少しでも減らしたかった。簡単に殺せてしまうからな」

「なるほどなぁ」


 煽った奴が悪いのに。舐められたら叩き潰すの精神でいるシャルロットとしては、ドミニクの配慮は優しすぎると思う。失礼に失礼を返して何が悪いと言うのか。


 でも、だからこそ彼らしいとも思う。


 ドミニクは優しいのだ。優しいから、傷つくのだ。


 そして誰かを傷つけることを恐れるのだ。


「じゃあその力、守るために使ってくれよ。葬儀官も適任じゃねぇか」


 シャルロットはリアムを肯定するように頷いた。


 力は振るう人間によって形を変える。暴力にも、抑止力にもなる。


 強力であればあるだけ、守れるものも殺せるものも増えていく。


「ちゃんと意識保ってれば、ドミニクさんが魔力の使い方を間違えるとは思えませんけど?」


 念押しにシャルロットからも付け加える。


「それでも万が一の時は──」

「何言ってるんです? ドミニクさん自分で頼んだじゃないですか、何かあったら俺を止めてくれって。大丈夫ですよ私がいるんだから」


 自信満々なシャルロットを見てから、リアムはドミニクに笑いかけた。


「頼もしい相棒がいるもんだな?」

「そりゃまぁ……こいつはツインレイだから。魂の片割れってやつらしくて」

「ほぉ? じゃ二人で一つってやつか?」

「みたいです」

「よかったじゃねぇか」


 呵々とリアムが笑うと、不意に彼の懐から着信音が鳴った。携帯灰皿片手に個人端末を手に取ったリアムは通知に出ると、幾ばくかのやり取りの後にアーマーリングをつけた中指を弾く。


 遮断されていた外界の音が耳に入る。防音結界を解いたようだから、部下から呼び出しを受けたか、これで話は終わりだと判断したのか。


「守るための力に、か」


 シャルロットは静かにドミニクの様子を見た。どことなく憑き物が落ちたような顔をしている。


 ドミニクは何故か合点がいったかのように目を丸くしているが、やっている事はなにも変わらないのになぁ、などと思う。


 彼はいつだって死者の尊厳を守るために刀を振るっていたではないか。それが、生者のためにも使われるだけなのに、何を驚いているんだか。


「……式典、出ようと思います」

「おう、そうしろそうしろ。席は準備しとくぜ、葬送庁長官の付き人って形でな」


 本当に堅物な男だ。でも、罪に溺れてずっと思い詰めているよりはいい。この死にたがりが少しは前を向いてくれるなら、パムリコ島にやってきた意義があったものだ。


「さて、付き合わせて悪かったな。帰るか」


 ドミニクが伸びをしながら言って立ち上がる。二人で仮説のテント小屋の中から出ると、薄い雲間から陽光が差し込んでくる。淡く輝くオーロラは、やはり太陽のせいで見えにくい。


 そう、太陽もまた、恵みにも害にもなる。そもそも二人の魂が星外から来たものだ、あらゆる魔力を融解させ焼き払うドミニクの魔力は、ひょっとしたら恒星由来なのかもしれない。


 その場合、闇要素は何処に行った? という話にはなるが、まぁさておいて。色々な人間に目をかけられるのも、彼の存在感故だろう。なんだかんだ世話を焼きたがる人間は多いし。


 私はそれを支えるだけでいい。影や壁がないと、己の光に焼かれて消えてしまうだけだから。


「お腹空いたんでカフェで休んでいきません?」

「さっき食ったばっかだろ……まぁ、いいか」

「お昼は私のチョイスだったので、おやつはドミニクさんが選んでくださいよ」

「俺か? ──ジェラートがいいな。アイスとか、フローズンシェイクでもいい」

「お、冷たいのいいですね! じゃあバス乗ってから探しますか!」


 タイトロープ島はパンケーキも有名だが、どちらかと言うと食事寄りだ。直射日光で体は火照っているので、ひとまず冷ますために冷たいスイーツも悪くない。


「甘いの好きなんです?」

「どちらかと言えば甘党だな。ついでに言うと猫舌だ」

「私は熱いの大丈夫だし辛いのも行けますよ」

「こんなところまで真逆か? 全く」


 和気あいあいと雑談しながら慰霊公園を歩く二人は、完全に人混みに紛れていた。

 しばらく歩いていると、ドミニクがハッとして歩いてきた道を振り向いた。しばらく後ろを睨みつけたドミニクだったが、小難しい表情をして首を傾げたまま立ち止まる。


「どうしたんです?」

「…………いや、人違いだろう。なんでもない、気にするな」


 どこか言い聞かせるようにして、ドミニクが再び歩き出す。シャルロットも彼が睨んでいた背後を観察するが、特段妙なことは起こっていない。不審な人物もいない。

 家族連れに、カップルに、学生の集団。


 シャルロットは先を行くドミニクを追う。彼女が観察した人々の中、栗毛の鮮やかな壮年男性が背を向けた二人をじっと見つめていた。



 *



 後日、慰霊式典は近づいたものの、ネル・ブライアンの調査については解析待ちでまだ結果が出ていない。案の定式典会場とデモ会場の警備に参加することになり、タイトロープ警察署の所属であるミアから割り振りが伝えられた。


 エルとシャルロットがデモ会場に、ジオとミアが式典会場に。ドミニクは免除されたのか待機となっている。


「警備じゃないが、長官の護衛として式典にはいくことになった。待機はできない」

「あれ、いいの? 出たくないって言ってたから外したんだけど」

「気が変わった。見ておくのも悪くない」


 不思議そうに聞いたミアに、ドミニクは当たり障りのない言葉を返した。


「そう。でも警備の人員としては数えられないんだよね?」

「あぁ、参加者側にいるからな」


 せっかくなら式典を現地で見てみたい気持ちもあったけれど、それはドミニクが行かなかった場合の話だ。あくまで彼の代理としての使命みたいなものだったから、本人が出向くならシャルロットが固執する理由は薄れる。


 しかし。エルと親交があることをあんなに嫌がっていたのに、こと警備の面に関しては自分とエルを組ませるのか。判断理由がよくわからなくて、少々不気味ではある。


 が、エルはこの分担に対して、適切だなと全面的に肯定していた。


「デモが苛烈になると暴徒化する可能性があるからな。広域をカバーできて且つ殺傷能力を抑えられる魔法士を市街地にやって、要職が狙われるかもしれねぇ式典会場は防衛よりの編成か」

「そそ。デモ会場は暴れだしちゃったらかなりの人数抑えないといけないでしょ? あたしにシャルロットちゃんほどの魔法障壁とか防御魔法は使えないから、エル兄と一緒に広域制圧ができるようにしたの。式典会場の方はどんだけ魔法で妨害されたとしてもやれるように実弾兵装のジオ兄、って感じ」


 名前を呼ばれた時にぞわっと背筋が震えたのは気にしないことにして。まぁ、理に適ってはいる。ミアはともかくとして、ジオの実弾は威力調整ができない。当たり所が悪ければ死ぬし、流れ弾の威力も相当だ。仮にデモ会場にやって騒動が起こった時、参加者側にも民間人にも被害が出かねない。であれば射撃の腕を生かして、式典会場で何か起こった時に即時制圧してもらった方が適切である。


 加えて参加者側にドミニクがいるのなら、要人警護は問題ないだろう。ミアとも場所が離れるだろうし、余計な心配はいらない。


 てっきり久しぶりに会えた兄と一緒の配置にするかと思っていたが、流石に公私は分けてくれたようだ。


「それじゃ、デモ会場は任せてください。何があっても死傷者ゼロで片付けますから」

「よろしくな」

「はい!」


 ドミニクの魔力と違って、シャルロットの固有魔法は守備に特化している。護るなら仕事は完璧にこなして見せよう。


 双子の兄から視線が外れた瞬間、ミアがじっとりと不満げにシャルロットを睨んでいた。


 自分で警備計画決めたのに、やっぱりそんな顔をするなんて迷惑極まりない。彼女としても苦渋の決断だったかもしれないが、やはりミアにはよく思われていないようだ。


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