第2話 見えかけた事実

「また来たよ。サクラさん。」

「シオン!よく来たわね!いらっしゃい!」


あれからほぼ毎日、僕はサクラさんのところに通っている。

リハビリが始まれば時間がなくなり屋上に行くことも少なくなると思っていたのだが、リハビリは本当に短時間しかやらず、暇なことに変わり無かったのだ。

だったらと、暇つぶしも兼ねて、屋上に通っている。


「いっつも来るわね、シオン。暇なの?」

「それはサクラさんの方でしょ。僕が来て、サクラさんがいなかったことがあった?」

「ふふふ、ないわね。」


そう、僕が屋上に来て、サクラさんがここにいなかったことがないのだ。

僕が来るタイミングが、ちょうどサクラさんがいる時間なのだと思って、たまには先に来てやろうと、時間を速めて来ても、サクラさんはいつもの通り、屋上で僕を待っていた。

僕が病室へ戻る時もそうだ。

いつだったか、もう少し話したくて、『サクラさんが病室に戻ったら戻る』なんていうわがままを言った時も、サクラさんは病室に戻らず、屋上から立ち去っていく僕を見送っていた。


「ねぇシオン、今日は何をやったの?」

「今日も点字の練習だったよ。しばらくはこればかりなんじゃないかな。」

「なんだ、つまらない。体を動かしたりはしないの?」

「僕が病院内を歩き回っているのは知られているからね。特に必要ないってさ。」

「ふぅん、まぁシオンに話す元気が残っていることが私は嬉しいから良いけど。」

「流石に歩き回るくらいで体力消耗しないから変わらないだろうけどね」

「あら羨ましい。私は体力がないからすぐに疲れてしまうわ。」

「へぇ、そうなんだ。」


唐突に気が付いた。

僕は、サクラさんのことを何も知らない。

試しに色々聞いてみようか。


「そういえば、サクラさんはなんの病気なの?随分長いこと入院しているんでしょう?」

「あ、あぁ、そうね。確かに、入院生活は長いわ。」

「へぇ、どれくらい?」

「13…4?」

「え、そんなに長いんだ。」

「あはは、あんまし覚えてないけどね。多分それくらいじゃないかなぁ。」

「サクラさんはなんの病気なの?」

「あー、心の病気。」

「精神的なもの?そうは思えなかったな。」

「そう?」

「うん、もしかして無理してる?辛かったら辛いって言っていいんだよ?」

「今は全然辛くないわ。シオンと話すのは楽しいもの。」

「それならよかった。」

「シオン、そろそろ時間よ。」

「あ、あぁ。サクラさんは?」

「私はもう少し時間があるから。」

「わかった。またね、サクラさん。」

「えぇ、またね。」


サクラさん…心の病気だったんだ。

あれ…?そういえばここって、精神科なんてなかったような…?

気のせいだよな、体も悪くてその影響で心も病んでしまったんだろう。


僕は少し不思議に思ったが、気に留めなかった。

サクラさんとの関係が今の関係と変わってしまう気がして怖かったのだ。

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