第3話

「シオン!いらっしゃい!」

「サクラさんこんばんは。いつもよりテンション高いね?」

「ふふっ、わかっちゃう?今日の夕焼けがいつもよりとっても綺麗なの。なんだか嬉しくなっちゃって。」

「この前もそんな事言ってなかった?」

「この前は違うわよ!この前は花壇の花が綺麗に咲いていたから嬉しくなったの!」

「その割には花の名前全然知らなかったけどね。」

「う、うるさいわね。綺麗なものは綺麗だから綺麗なの。それに理屈なんていらないわ。」

「そこは概ね同意するけど、花の名前くらい覚えようよ。サクラさん水仙すら知らなかったじゃないか。」

「水仙は知ってたわよ。知らなかったのはパンジーよ。」

「充分過ぎるほど知らない部類だよ。あそこの花壇、ちゃんと名札まであるのに。」

「目が見えない癖によく知ってるじゃない…。」

「何で不満気なんだよ。点字を一通り習い終わったから実践的なリハビリをしているだけだよ。花壇の看板には点字もあるの。」

「実践的なものになってるなんてすごいじゃない!シオンが頑張った結果ね!」

「ありがとう、サクラさん。あぁ、そうだ。1つ言っておかなきゃ。」

「何?退院でも決まったの?」

「ううん、手術受けるんだ。」

「目の他にも悪いところがあったの?」

「いや、目の手術を受けるんだよ。」

「え、それって…」

「見えるようになるんだって。」

「…そう…。」

「喜んでは…くれないんだね。」

「違う!違うの!」

「いや、いいよ。僕が期待しちゃってただけなんだ。まだ早いけどもう戻るよ。」

「シオン!」

「…何?」

「1つ約束して?」

「何を?」

「手術が終わったら、私に会いに来て。いつも通りここにいるから。」

「…なんで?」

「…私も、伝えたいことがあるの。ずっと隠していたことがあるの。」

「…わかった。手術は明後日だ。手術が終わったら、ここに来るよ。」

「えぇ、待ってるわ。」


そして僕の手術は成功した。

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