第13話 掃除
朝陽が昇る前に起きてきたセツヤ。今いるのは台所だ。改めて確認していくが……。
「うーん、食材がない。これでどう作って行こうか?」
何度見てもあるのは葉物野菜が少しと岩塩、それに干し肉。エルトスに聞いた所によるとパンなどは近くの街で買っているらしい。パンは日持ちがしそうなやつを選んでいるとの事。この食材たちで工夫したとしても、セツヤの満足いく料理は作れないだろう。
仕方がないので昨日と同じ物を作った。
「後は……掃除かな」
皆が食べ終わり、台所で洗い物しながらセツヤは至る所にある埃を見る。ため息しか出ないほどに汚れていた。
掃除道具がある場所はエルトスから聞いていたのでそこへ行ってみる。庭にある物置にあるらしいが……。
「……マジかよ」
蜘蛛の巣などが付いて今すぐ掃除できる状態ではない箒を見つけた。ガックリと肩を落としてセツヤは箒の掃除をする。このまま掃除しても箒が汚いので、家の中が綺麗になるはずがない。そう思って箒を綺麗にしていく。
「箒を掃除ってどういう事なんだろう?」
疑問に思いながら箒を使えるまでにした。結構な時間がかかり、掃除する時間は減っている。すでに太陽が中天にあるようだ。だが、これで掃除ができる。セツヤは箒を持って家の中へ。
「どうした?」
中に入るとエルトスがいた。少し汗だくのセツヤを見て気になったようだ。視線がセツヤの持っている箒へ行くと、目を丸くして凝視している。
「掃除をしようと思いまして」
セツヤは家中にある埃に視線を向けながら言った。エルトスもその周囲を確認して……頬を掻く。
「そうか」
そそくさと外へ出て行くエルトス小さく呟いた。その言葉を聞いてセツヤは掃除が苦手なんだろうと思い、苦笑する。苦手ではなかったらこの惨状になっていなかっただろう。セツヤは肩を竦めた後に掃除を開始する。
「……ふぅぅ、綺麗に……ならねぇ!」
ガックリと膝をついた。夕飯までの時間を掃除に費やした。昼から夕方少し前まで、だ。全くと言っていいほどに終わらなかった。別に1日で終わらせようと思っていた訳ではないが。闇は……深かった。
「まさか古着とは言え洗濯していないなんて……」
洗濯と掃除、料理とやるべき事が増えた。この古着たちは定期的に買ってくるらしい。エルトスが街まで行って適当に買ってくるとの事。洗濯の2文字がないのか、放置されてあった。
これではいけないと思ったセツヤは頭を悩ませた。やらなければならない事が多すぎて、何を優先するべきか迷いに迷って……。
「もう夕飯の時間になりましたとさ」
立ち上がってスープを作りながら考える。
(掃除に洗濯、食器も、と……何日かかるかな?)
セツヤの心が少し折れかかっていた。それにまともな食事も作れていない。それも悔しい事なのに、家事でどうにもならない。エルトスが行っている街へ行けば食材は手に入るのだろうが……。
(まぁこんな食事なのに3人が喜んでくれているのが救いかなぁ)
夕飯を待つ3人はソワソワしている。どうやら美味しい食事ができて嬉しいようだ。その姿に苦笑しながら皿を並べていく。
(でもどうにかしないと!)
セツヤは今後を考えて1つ決意した。
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