第15話 俺のキスの味


「明日香、何しているの?」


「えっ、あはははっ、私何も出来ないじゃん? せめて口でしてあげようと思ってフェ…えっ、なんで引きはがすの?」


昨日、寝た後、明日香のすすり泣く声が聞こえたから…一緒のベッドで寝たんだが…さっき急に下半身に湿り気を感じて起きたら…これだ。


「こういうのは…そのお互い好きになってからで…その…な」


「顔を赤くして泰明凄く可愛いね! 私泰明の事好きだよ! 大好き…」


嫌、昨日あったばかりだし…


「あの…なんで?」


「いや、だって泰明って凄く優しいじゃん! 痛い事しないし、意地悪もしない…それにあんなに優しいんだから…惚れちゃったよ」


俺、昨日うどん作っただけだよな。


まぁ、元が凄く悲惨だから、そう感じるのか…


聞いてみたい反面、聞くとまた、怖い事を聞きそうになるので止めた。


「そうか…」


手足は無いけど、天使明日香(あまつかあすか)なんだよな…


顔やスタイルが俺のドストライクだし…好意を寄せて貰えているんだ…


まぁ良いや。


◆◆◆


「うんぐっううんうん、あっうぐもぐ…ぷはぁ…泰明の美味しいよーーもっと頂戴…」


「本当にこんな事して良いのか、あむもぐむんうんぐ、あむぷはぁ…ハァハァ」


「うん、凄く嬉しい、泰明…好きだよ…愛している…だからもっと頂戴…うんぐむぐぷはぁ…うんぐっ…ゴクリゴクリっ、う~んあはっ飲んじゃった」


「仕方が無いな…うぐっうんぐあむあむぷはぁ…」


「頂戴…もっと頂戴」


別に変な事しているわけじゃない…いやしているのか?


これ…一応食事の光景だからな。


このタワマンの冷蔵庫に食材はあるのだが、俺はそんなに料理が得意じゃない。


それでこの部屋を見まわしたら、変わったタブレットがあり、そこに『カーミーイーツ』のサイトがあった。


一応、明日香には食べやすい様にグラタンを頼んで潰して食べさせようと思っていたんだが…


俺が食べている、ステーキを羨ましそうに見ていた。


「食べたいのか?」


「うん…だけど歯が無いから…」


かなり寂しそうに俯いていた。


流石に、悲しい顔で見つめてくる美少女の前で、平気で食べられる程の度胸が無い。


俺は頭がてんぱっていたのか…


『俺が嚙んであげるから…食べる?』


そう言ってしまった…最初は軽く噛んで皿に出して食べさせていたのだが…


そのうち明日香が口に吸い付き舌を入れて食べるようになり…こうなった。


しかし、俺のファーストキスはステーキの味か…あっ違った。


最初は陽子に奪われたんだ…血と土の味がした気がする。


キスはレモンの味とか言うが…俺にはもう無縁だな。


◆◆◆


背徳感のある食事が終わり…頭が冷静になると…キッチンにフードプロセッサーやミキサーがあるのを発見した。


「明日香…ごめん、フードプロセッサーがあった、次回からこれ…」


「嫌、泰明の口移しがよい」


「いや、だけど…確かに俺は虫歯は無いけど…あれは」


「泰明の口移しが良いんだけど…駄目?」


「…解ったよ」


泣きそうな目で見られると嫌とは言えないな…


これからも俺のするキスの味は…食材の味しかしないのか…









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る