第16話 神代SIDE 足枷
「神代様、なぜあそこ迄の優遇をされるのですか? お金で解決できる範囲はまだ解りますが、人犬は、その範囲を越えています…厚遇過ぎる気がします」
確かに、プロの殺し屋でもなく、デスゲームとしては一番下のランクの勝者。
デーモンズタワーだけでも破格値の待遇だ。
だが、彼奴は化ける商品だ。
『強い殺人鬼』は生まれながらに強い為、余り共感を得られない。
だが、彼奴は弱者出身だ…
弱い所から這い上がり力をつけた人間は自分に姿を重ね…彼奴に魅了される。
その証拠に、今までは観戦のみで積極的に参加してこなかった、ネオニートのキング&ノーブルニートクラブがスポンサーについた。
他にも幾つかの団体が彼奴のスポンサーにつきたがっている。
アマチュアなのに彼奴は既に『商品』なのだ。
だが、この事はまだツクヨミに話す必要はない。
「私が個人的に気に入っている、それだけだが…」
「俺じゃなくて『私』随分と入れ込んだ物ですね…」
「ああっ…ツクヨミにも一つだけ教えてやろう…今の泰明は弱いが、一つだけ私やお前すら超える物を持っている…」
「それはなんですか…」
「自由だ…今の彼奴は何も持ってない…過去の虐めによって友人や家族を殺害し、孤独になった…何も持っていないからこそ『何者にも従わない』その強さを持っている…そして死のうと思っていたからこそ、命すら取引材料にならない…」
「その一点は確かに…そうかもしれません…」
「だからこその足枷だ…普通の愛人や恋人じゃ意味はない…裏の力が必要な『大切な者』が必要なのだよ! 明日香は非合法な存在。真面な医者にはかかれないし、表の世界には出せない者だ…一緒に居たければ…お金、医療…さまざまな手間がかかる…うってつけなのだよ」
「それは解りますが…だからと言ってAV制作会社ユアーシャークを潰してまで、用意する必要がありますか…」
「あそこは馬鹿のあつまりだ…大体やっている仕事は『表』だけで出来る仕事だ…それなのに裏の力をチラつかせて人を脅す…もし、裏の力を誇示したいなら…本当の裏の仕事をすれば良い…スナッフビデオすらビビッて作れず、実際に海外から四肢切断のプロを呼んで明日香を材料にダルマを作る工程のビデオを作らせたら…泣き言を言いやがった…クズだよ、あれは…虎の威を借りる癖に…虎の命令を聞けぬ…狐は要らぬよ…」
「それでは明日香の件は殆ど噛んでないのですね、ただ、全部擦り付けて自殺に見せかけて…そういう事ですか」
「勿論、半分は自分達がやった事だ、だがクズは要らないからね…損斬りだよ!損斬り」
「ですが…その理屈なら泰明等、まだ金になっていないのでは?」
「いや、既にスポンサーがついているだろう? 第一明日香を与えたのは半分は私じゃない…キング&ノーブルニートクラブが半分出資している。尤も彼等でも半分出しやすいように2000万の価格にしたがね…」
「はぁ~ 確かに手間暇考えたら、割の合わない価格ですね」
「これは投資だ…」
◆◆◆
泰明とういう少年に神代様は随分執心だ。
こんな神代様は見た事が無い。
本気になる時神代様は『俺』から『私』になる。
これから先、彼は裏から逃げ出す事は出来ない…
死ぬまで…
まぁ私にはどうでも良い事だ…
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