あの……あたし……妖怪さんと暮らしてます……♪♪

麗紫 水晶 

あの……あたし……妖怪さんと暮らしてます……♪♪

あ、あ、あの……こ、こ、こんにちは! 磯崎いそざき 摩耶まやと言います。


 23歳独身のOLで、IT関係の会社に勤務してます……今は1人暮らしです。黒髪のストレートのショートヘアで、身長は157cm、スリーサイズは……内緒です♪でも太っても痩せすぎでもありませんから!


 3年前に、あたしを育ててくれた大好きだったおばあちゃんが亡くなり今は1人……と言うかなんと言うか。


 あたしは小さい頃に、身寄りがなかったあたしをおばあちゃんが引き取ってくれて養女として育ててくれたんです。


 名前をくれたのは凄く嬉しかった♪凄く優しくていろんな事を教えてくれて、学校にも行かせてくれて大学も卒業出来て……♪


 おばあちゃんには凄い感謝しかなくて……。




 でもさすがに歳には勝てないですよね。おばあちゃんは周りに肉親も身寄りもなく、あたしにだけ看取られて天国に……。でも穏やかな顔で……あたしは淋しくて堪えられなくてしばらく泣いてた……唯一の家族だったから。また1人になってしまうあたしにと残してくれたお金を生活費としながら、でも仕事も探して少しずつ貯めながら一人のんびりと生活してたんです………のはずでした……。


 私の家は……いえ、元はおばあちゃんの物でしたけど。6LDKの二階建てで、2階が4部屋の下が2部屋……茶の間が別にあって、台所と浴室は別にあると言うなかなか大きな家なんです。庭ももう一軒家が建てれる程の広さがあって、それは良いんですけど庭の草取りが凄い大変……。


 でも、その中でも綺麗に咲き並んでいるお花達も居るので、折角残してくれたおばあちゃんの事も大切に思って、休みの日には時間を見てせっせと草取りに……。




「摩耶まやねえ~たん、おなかぐるぐる……。」




「待ってて、これが終わったらおやつにしよ♪」




 で、あたしの後ろに現れたおかっぱ頭で黒髪のお洋服を着た少女……この家と土地を守ってくれている、座敷わらしの“ち~ちゃん”。


 おばあちゃんが亡くなって、49日が過ぎた頃に窓ガラスの外に人影が映って!?恐る恐るそうっと開けてみたらその子が居て……。


 なんだかあたしも同じ1人の様な気がして、その子を中に入れておやつをあげてたら居付いちゃって。後で座敷わらしだって知ったの♪


 あたしもビックリしたけどね。




「摩耶まや~、あちきも何か食べたいぞよ~♪何かないかのう?」




「ええ!吟子ぎんこ姐も!?」




 そう!こっちは着物姿で着飾って扇子を持ち、銀髪のストレートのロングヘアで狐の耳と9本の尻尾をふさふさもふもふさせた色っぽい美人のお姉さん……九尾きゅうびの吟子ぎんこさん。


 たまたま2年半前位かな、手足が傷だらけでフラフラしながらあたしの家に迷い込んできたから、保護して飲み物や食べ物をあげたら一気に平らげて、




「いやぁ!復活したぞよ~~、何日も飲まず食わずであったでの~~♪」


 


 ……だって。何者かに必死に追われてるのかと思ったら、単なる食べ物が底をついたんだって。フラフラしてたから、あちこちぶつかったらしくて怪我やアザだらけ。あたしもその時は、食材なんてすぐになかったから、たまたま冷蔵庫にあった、玉うどんを鍋焼きうどんにして、玉子とお揚げを入れて出してあげたら涙流しながら大絶賛!されて……恩返しに一緒に住んで、変な奴等から守ってやろうと言う事になって居座られちゃった。でも、ち~ちゃんとも秘かに知り合いだったみたいで何故か意気投合してたりしてて……♪まあ、大喧嘩されるよりはましかなぁと思いつつ。




 それで? 草取りを手伝ってもくれないお2人はお腹が空いたですと……!?


 やれやれ……しょうがない、今日の草取りはこのぐらいにしときますか。


 …って、言っておくけどあたしはピチピチの23歳だからね!


 あぁっ、そうそう今日は日曜日で会社も休みだったのでこんな感じでゆったりとすごしている……んです?


 


「縁側に座ってて。今おやつ用意するから♪」




 あたしは玄関から台所におやつと飲み物を取りに向かいました。




「やたっ!おっやっつっ♪おっやっつっ♪」




 ち~ちゃんが、喜んでおやつを繰り返し言いながら縁側にちょこんと座ります。


……可愛い……うふっ♪




「おっやっつっ♪おっやっつっ♪」


 


 吟子姐も、縁側に横座りして一緒に手を叩きながら待ちわびてるし……。


 こらこら、2人ともどんだけはしゃいでるんだか……。


 


「はい、持って来たよ~♪」




 あたしはお盆におやつを乗せて、お茶と共に縁側に。




「わぁ♪あんまん~~~♪」




「おおっ!あちきも大好物の一つじゃ~~♪やっぱり分かっておるのう摩耶は♪」




「……褒められてもこれ以上何も出ないからね、はいお茶。ち~ちゃんは少し冷ましてから飲んでね。」




「あ~い、いただきまぁす!んぐんぐ…………んぅ!おいちぃ♪♪」




「あちきも頂くぞよ、はむっ………ん~~~♪頬っぺたが落ちそうじゃぁ♪♪」




「クスクス、2人とも大袈裟過ぎ♪まあ、美味しいのは認めるけどね。」




「このお茶がまた合うのが不思議よのう?」




「うん、おばあちゃんがわざわざ取り寄せて飲んでたお茶なの。あたしも飲みやすくて大好きでね。


 おばあちゃんが亡くなってからもお願いして買ってるんだぁ。


 ひいきにしていたお茶屋さんだったらしくてね、おばあちゃんが亡くなったのを知った時は慌てて飛んできてさ………遠い所だったから申し訳なかったんだけど、上お得意様だから……って言ってくれて、焼香してくれた。


 こんなとこで繋がりがあったなんて、あたしも少し嬉しかった。だからあたしもこのお茶を大好きで取り寄せを続けてるの。


 向こうもそこまでは……って言ってくれたけど、あたしも気に入っているので……って話したら喜んでた。


 だから、あたしにとっては欠かせない飲み物だね♪」




「うむ、確かに良いお茶じゃ。得にあんまんにあってるのが流石じゃ♪」




「えぇ!そこ!?」




「摩耶ねえ~たん、おいちいよ~♪」




「うぅ……はいはい、ゆっくり食べて良いからね。誰も取ったりしないから。あたしも1つ貰うね~♪」




「しかし、今日は良い日和じゃな♪」




「うん、あったかいねぇ♪」




 ポカポカ陽気の晴天を眺めながら、平凡な……されどこの小さな楽しみを満喫するあたしなのでした………。




☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆






 明くる日……あたしは目覚まし時計?ならぬ目覚ましスマホ!で、叩き起こされ眠い目をこすりながら洗面所へ。髪もボサボサで、お手入れ大変で……ぼぅっと鏡を見ながら歯を磨いていると、尻尾で耳をくすぐって来る“モノ”がお一人……。




「やんっ!ちょ、ちょっと!吟子姐、何すんのよ!」




「くっくっく、目が覚めたじゃろ♪」




「とっくに覚めてます!」




「な~んじゃ、つまらんのぅ、もっともふもふしてやろうかと思ったのに~。」




「いや、今じゃないでしょそれは……。」




 そんな事が毎日、6日間続く訳で……。


 でもって、ご飯の支度はあたしですよ。


 意外と朝は戦争!?ち~ちゃんも起こさなきゃだし、吟子姐にも朝ごはん出さなきゃだし、あたしも着替えなきゃだし、いっつも時間ギリギリ!


 


「ち~ちゃん!起きて!起きてってば!」




「う………ん……むにゃむにゃ……♪」




 まさか……わざとじゃないよね?




「あ~んま~ん♪食べたいひ~と♪こ~のゆ~びと~~まれ♪」




「あいっ!あいっ!あいっ!」




 慌てて飛び起きてあたしの立てた人差し指を掴んで来る子が一人……。




「おぬし………起きてたな……。」




「ギクッ!!」




 冷や汗を流しながら、ゆっくりと手を離すち~ちゃん。




「しまった……あんまんに釣られて指を掴んでしまった……ち~、一生の不覚」




「こら!心の声が口から漏れてるし!逆にそう思ったち~ちゃん怖いし!」




 たまに何を考えてるか分かんないんだよね、この子……。まあ、歳もいくつかも分からないし……。




「じゃ、茶の間で待っててね~~。今度からちゃんと起きてね~~、でないとあんまん出てこないぞ~~。」




「あい、あいさ~~!!」




 慌てて、直立になって敬礼してる……。




「……ってか、何処で覚えたの!?」




 あたしが知らないことがまだまだ有りそうです……。


 さてと今度は吟子姐か……。あたしは台所に向かい朝ごはんの支度を……。




「朝ごはんまだかのぅ?」




 扇子を振りながら可愛げに口を少し尖らせながら、イジケ声でおねだりして来るお姉さん。全く、美人なだけにおねだりが可愛くて怒れないじゃない。犯罪ですからねそれ♪




「もうちょっと待って、用意するから♪」




「あい分かった、待ち遠しいのう♪」




 自分の尻尾を1本ずつ毛繕いしていく吟子姐。


 うっ、今それをするか……もふもふしたくなるじゃない……出勤に遅れそうなのを良いことに、見せつけてるな?ズルい!帰ってきたら絶対もふってやるぅ!


 と思いながら用意してる内に、ち~ちゃんも目を擦りながら椅子に座ります。




「吟子姐たん、おはよ~…」




「おお、ち~よ目が覚めたかのぅ?」




「うん、摩耶ねえ~たんに1本取られた~♪」




「なんちゅう事を、ち~ちゃんまさかあたしより歳上だったりする?」




「ギクッ!」




 え、うそ……冗談のつもりが……マジ!?


 た、確かに容姿だけで年齢なんて分かんないし。そう言えば吟子姐とも知り合いみたいだし、分かんないわぁ。もっと知りたいんだけどねぇ……っと、それどころじゃなかった!出勤時間!




「はいっ!朝ごはん!」




 あたしは2人の前に同時に皿を出します。




「わ~い!あんまん~!」




「おおお……お、おいなりさんじゃあ……♪し、しかもご飯の上に桜でんぶがまぶされておるぅ……あちきは幸せじゃあ♪」




「クスクス……だから大袈裟過ぎだって♪留守番頼むね、じゃ行ってきます!」




「「行ってらっしゃ~~い♪」」




 朝の戦争!?やっと自宅を出る事が出来るんです……ふぅ……。






☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆






 通勤ラッッッシュ!! でも、あたしはその間を通れると思った隙間を足早に潜り抜けていくんですけど……。


 通せんぼになる前に抜けて行くから、気付かない人がほとんど。ま、他の人も同じように出勤に出向いている訳だから周りを気にしてる余裕が無いよね。あたしもだけど……。


 って、人の混雑をすり抜けて会社に到着!!13階建てのビルでこの会社専用。さすがIT企業と言ったところかな、他からすればそんなに大きくはないんですけどね。




「おはようございま~す!」




 7階にあるあたしが所属している部署に挨拶しながら入って行きます……。みんな出社して来たばかりだから、同時に挨拶を返されてきます。




「おはよう。」




 表情がほとんど表に出ないんだけど、黒のスーツで白のワイシャツ、シルバーのネクタイが何故か似合う2枚目!?美男子!?という感じの男性……。会社の部長の奥原おくはら 雅樹まさきさん38歳独身、会社の女子達からはかなりの人気でイケメンで仕事もこなす旦那さんにしたいランキング1位(会社内で。)だそうな。まあ、あたしも嫌いではないけどね。逆に高嶺の花だなと思って諦めてる感があってね、見向きもされた事もないなと感じてる今日この頃……って別にリアクションした訳でもないんだけど。


 仕事以外に興味が無いのか女性として見てないのか、仕事に関しては返事するけど世間話はしないし表情も真面目。笑顔なんてあたしも見た事ないかも……。




「おはよう!摩耶君。」




 この人は課長の清宮きよみや 陸斗りくとさん35歳独身、部長とは正反対に柄が派手なスーツ姿で変に着飾ってる感がある。今時、七三分けの茶髪のリーゼントだけど……。 


 イケメンの部類には入るんだよね?でも、あんまり女子には好かれてないかも……。




「おはよう、摩耶さん。」




 彼女は同期の清水しみず 綾香あやかさん23歳独身、スタイルが良くて美人なんだよねぇ羨ましいぐらいなんだけど、何故かあたしはライバル視されてていいように使われてる感がするんだよね……。と、言っても確かに”出来る女性でしかも美女”と言えるから何も言い返せないけど。




「摩耶先輩、おはようございます!」




「先輩、おはようございます。」




「ざいま~す。」




 彼らは後輩の端野たんの 和美かずみさん21歳独身、黒髪のストレートのロングヘア。もう1人は稲垣いながき 唯ゆいさん21歳独身、茶髪のショートへア。もう一人の彼は森野もりの 康一こういちさん21歳独身、短髪で黒髪。


 この部署のメンバーはこれで全員。上司は一応スーツ姿のそれだけど、一応服装は自由。ただ余りに普段着は暗黙でタブー。後はそれぞれが自分のPCに向かって作業して、課長や部長に出来たデータを送信。確認してもらって修正があれば直接口頭にてやり直しを言い渡される。休憩は個々に合間を見て取る事が出来るから、お昼を一緒に部署の仲間と……という事もあり得る。でも、大半が難しいかな。それぞれのデータ作業の量があるから一区切りがつくまで時間がまちまちだからね……。それでも、休憩がタイミングよく合えば雑談は欠かせないね。


 で、それが毎日の仕事なのです。上手く作業が通れば早い時間に退社も出来るけど手こずるようなら夜まで残業なんて事も……。


 え!? 休憩中に何を話してるかって?そりゃ女子話ですよ、恋話や美味しいお菓子屋さんが何処とか夕飯何食べる?とか、あそこに新しい店が出来たんだとか……。唯一仕事以外の話が出来る時間帯かな♪


 あたしたちにとってはそれの方が貴重な時間!なかなか外の情報を得るのにそんな瞬間しかないから大事なんだよねぇ。ただ、あたしが話しについて行けない事もあるからカルチャーショックダメージを喰らう事もあったりで教えを乞うことも度々。


 なんだかんだで、お昼に突入しちゃった……今のところ作業が進んでるからこのまま行けば何とかなりそうだね♪よし、お昼に………………アアアアっ!




「お……お弁当……忘れた………。」




 超ショック!お弁当忘れるなんて………。




「へぇ、貴女がお弁当忘れるなんて珍しいわね。」




 え゛綾香さん!?見られたくない人に真っ先に見付かるなんて……がくっ。




「おお、昼抜きで仕事するなんて素晴らしいじゃないか。鏡だねぇ。」




 清宮課長!わざとに忘れた訳じゃないし!これじゃ午後からの仕事に集中出来ないよぅ。かと言って家に帰ってる余裕も無いし……どうしよう……。




「コンコン。」




 その時この部署の扉をノックする音が……。




「はい、どうぞ!」




 後輩の和美ちゃんが、部署の扉を開けてくれたんだけど……相手を見て驚いて固まってる……。一体誰!?




「お邪魔致しますぞよ、こちらに磯崎 摩耶はおりまするか?」




 なっ!なんとっ!




「吟子姐っ!」




「「「「吟子姐!?」」」」




 あ、あははは。人前に現れても良いの?しかも堂々と。でも、耳や尻尾が隠れてるのか見当たらない……いやでも着物の下に……って事もないね?そこまで着物も膨らんでなさそうだし……。




「おおっ!居た居た、ほれ忘れ物を届けに来たぞよ♪」




 あ、お弁当!!……猫ちゃんの絵柄が入った巾着袋があたしのお弁当入れ♪




「あ、ありがとう♪助かったよ吟子姐♪」




「礼には及ばぬ。朝ごはんの礼じゃ♪」




「え?朝ごはん?」




 あ、ああ、おいなりさんの事?そんなに嬉しかったんだ……大げさだなぁ、まあ、あたしも嬉しいけど。


 ん!?課長と森野君が吟子姐に見とれてる……クスッ。あら、逆に綾香さんが凄い睨んでる……。吟子姐が美人だから嫉妬してるって事?いやそれ比べようがあるのかなぁ、人と妖怪って……どう思う?




「では、帰るとするかの。頑張ってのぅ。」




「うん、ありがとう吟子姐♪気を付けてね♪」




「うむ。では、失礼いたしまする♪」




 深々と頭を下げて帰って行った……よっぽどじゃないとそこまでしない気がしたけど、何かの前触れ!?


 ってか、その着物姿は街中目立つでしょ!どうやってここまで来たの?……あ、飛べるか……。




「ちょっといい!」




「あ、綾香さん!何!?」




「今の方はお知合い?」




「え、ええ。一緒に暮らしてます。」




「マジっすか?俺今度遊びに行っても良いすか?」




「じ、時間があればねぇ……あは、あははは……。」




 森野君、意外と積極的だったりするんだ……でも正体が知れたらマズイ訳だし遠慮したいかな……。




(負けられないわ……。)




「え!?今なんて?」




「いえ、別に……。」




「はいはい、みんな仕事するぞ~。」




「「「「はあ~い。」」」」




 課長に一括されてデスクに戻る。


 でも助かったな、これで午後も集中出来るし。


 あたしは早速お弁当を平らげて仕事に取り掛かった……何故って、帰りにお土産を買って帰ろうと思ったから♪


 そのお陰か、順調に進んで一度やり直しがあったもののクリアして夕方には上がる事が出来た!上出来!




「お先に失礼します!」




「お疲れ様。」




「ご苦労様です。」




 みんなを出し抜いて申し訳ないけど、一番手で仕事を切り上げる。


 さてと……あのお店に寄ってと…………。




「ただいま~~!」




「「お帰り~~♪」」




 やっぱ良いよね、迎えてくれる人!?が居るって……それが例え妖怪であったとしても………。




「吟子姐、今日はありがとうね~♪助かったよ~♪」




「なに、あのぐらい造作もないわ♪」


 


「へへ……♪あたしもねぇお礼にこれを買って来たんだぁ♪」




「あ~あんまんだ~~♪」




「惜しい、中身が違うんだなぁ♪」




「え!?」




「それはどういう事かのぅ?」




 2人とも不思議そうだね、良いリアクション♪




「なんと、これは肉まんでこっちがカレーまん、こっちがピザまんなのです!」




 ふっ…どや顔してしまった……あたしって……罪……♪




「すごい~~!おいちそぅ♪」




「ほぅ!中の具が違う物が出ていようとはの。良い匂いがするぞよ♪」




「ね!お茶用意するから食べよ?」




「やた~~♪食べゆ~~♪」




「うむ、美味しそうじゃのぅ♪」




「3人分買って来たから、ゆっくり味わってね。」




「いただきま~す!う~んとこれにすゆ~!んぐんぐ……お肉おいちいよ~~♪」




「あぁ、それは肉まんだね。あんまんに並ぶ代表格だよ。」




「ほぅ!こっちは辛味があるが飽きない味じゃ。」




「あ、それはカレーまんだね。普通カレーはご飯にかけたり浸けて食べるんだけど、それを中身の具材としてるの。でも、美味しいよね。」




「これふしぎな味がすゆよ~~?でも、おいちいよ~~♪」




「そっか、食べたことが無いかもね…それはピザまんて言うの、今度ピザをたべよっか?それだけでも格別だよ。」




「色んな具材のまんじゅうが出ておるんじゃな?」




「そうだね、まだ種類があるんだけど全部買ってたら間に合わないから取り敢えずね。でもびっくりでしょ?」




「うむ、驚いたぞよ。こんなに具材の種類があるとはのぅ。」




 あたしはお茶を出しながら、美味しそうに食べてる2人の顔を見ながらホッとしてた……美味しくない!って言われたらどうしよう?って不安もあったから。


 あら、食べて満腹ですか?夕飯が要らなくなっちゃった?ま、まぁそれはそれで良いかな。満足してるようだしね。


 あたしとち~ちゃんは一緒にお風呂に入り、吟子姐は毛繕い……お茶しながら、今日の話しに盛り上がり、部屋が沢山ある割には寝室は一緒で3人でご就寝……ち~ちゃんも吟子姐も可愛い寝顔なんだよねぇ、あたしも安心して寝られるし……ち~ちゃんも寂しいのか、毎日あたしにくっついて寝るんだよね、しかもパジャマ姿だし……可愛い♪


 と、思いながらあたしも疲れて眠りについてた……まん丸お月さまが見守ってくれてる様で安心出来た……って、変身はしないですからね!


 でも、明くる日……そうなる出来事に遭遇しちゃうんだよね………何でだろ?






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 朝はいつも通りの戦争!?で、慌ただしく出勤する為に家を出るあたしです……。


 よし、今度はお弁当は間違いなく持って来た、恥ずかしく無いように。


 ところが、会社ビルの近くで背の高いビルの工事が進んでて、そこの前を通らなきゃいけないんだけど、あたしより先にそこを通り抜けしてる人が居て。


 奥原部長が、通勤しながら電話してる……朝早くから打ち合わせかな?掛け持ちしてる仕事もあるみたいだから、忙しそうだね。


 高級車でご登場!と言いたい所だけど、意外と自宅が近くて歩いた方が早いんだそうな。それで同じ通りを通勤しているんです。


 あたしも追い付かないと遅刻しちゃうね、急がなきゃ………。


 ん!?周りの同じ通勤している人達がざわついてる? 何!?どうしたの?上!? あっ!


 周りの人が上を向いて叫んでるからあたしも上を見た!嘘っ!高さ20階以上ある所でクレーンが、8m近い長さの鉄骨を吊り下げて引き上げていたんだけど、吊っていたワイヤーが片方切れてぶら下がってるじゃんっ!ま、まって!部長が電話中で気付いてないっ!


 マズイ!このままじゃ………!




「きゃあぁぁっ!」




「に、逃げろぉぉっ!」




 そこを通り掛かってた人達が、パニックになって叫びながら逃げ惑ってる……。




「なっ!」




 部長がやっと気付いて、上を見上げて絶句して立ち止まってる!た、助けなきゃ!でもこの距離じゃ走ったって間に合わないっ!


 どうする!でも助けなきゃ!行くしかないっ!


 あたしは咄嗟に体が動いてた……クレーンから吊り下がっていた鉄骨のワイヤーが片方ずつ切れて、20階以上の高さから地面目掛けてまるでミサイルみたいな速度で落下してくる!


 あんなのが、当たれば即死は免れないよ、そんなのは嫌だ!おばあちゃんがあたしを拾ってくれた様に、あたしが就職活動で18件も断られて凹んでいた時に拾ってくれたのは部長だった!…………あっ………あった………あの時、部長が微笑みながらあたしを仕事に誘ってくれたんだ………。


 …………死なせないっ!あたしの姿がバレたとしても、彼を死なせはしないっ!




「危ないっ!!!」




 部長に叫んだ男の人が走り込もうとした瞬間…………あたしはその3m上空にジャンプしてて片手で鉄骨を鷲掴みに……伸びた爪が鉄骨に食い込んでた……そして部長より鉄骨がぶつからない位置に着地した……。


 周りは驚きとざわつき……あたしが大きな鉄骨を片手で掴んでいる事にも驚いてたけど、それよりもあたしの姿に愕然としてた……そう、腰から”5本の猫の尻尾”、”猫耳”、”猫ヒゲ3本づつ”が生えている状態……作り物じゃなく……生きた物……実はね、あたしも妖怪……おばあちゃんは知ってた……養女にしてくれて間もない頃に偶然気付いて、あたしは覚えてなかったんだけどそれを隠して人の姿になる事が出来たんだって。後々ものごごろが付いた時に教えてくれたの……おばあちゃんもあたしの姿を調べてくれて、あたしが妖仙猫ようせんねこだって教えてくれた……。


 それでも、それを分かってもあたしを育ててくれたんだ……かけがいの無い人……大切な身内……。


 でも、部長には知られたくなかったな。


 横を向いて横目で後ろの部長の方を見ると、当然だよねあたしの姿を見て愕然としてた……。




「い……磯崎……なのか……!?」




 そう聞かれても返事をする事も出来ずに、ゆっくりと鉄骨をその場に降ろした。


 そしてあたしはその場から、ビルの上を行くほどの高さで跳躍してその場から姿を消した……これ以上は部長にこの姿を晒したくなかったから……。




「ま、待ってくれ!磯………。」




 部長はあたしを呼び止めようとしたけど、周りの通りすがりの人達や警察の人達、救急車が駆けつけていて囲まれてしまってた……。後は、そこがどうなったのかは後々テレビのニュースで知ったんだけど。


 結構、あたしの姿をみんなスマホで撮影しててSNS等で拡散してた……。違った意味で有名人だよ。


 でも、部長が助かってあたしは嬉しい。あたしの素性を引き換えにしてもね……ただ……。


 凄く切なくなりながら自宅へ帰ってきた……これからのいろんな事を考えると思いが込み上げてくる……あたしは何も言わずにドアを開けて中へと入った。




「いったいどうしたのじゃ摩耶!?さっき会社へ出かけたばかりじゃろ?」




 玄関のドアが開いたので不思議に思って吟子姐が玄関先へと出てくれた。




「摩耶ね~たん、おかえり。お仕事おやすみなの~?」




 ち~ちゃんも吟子姐の話が聞こえてどうしたのかと続いて玄関先に出てきてくれた……あたしは気持ちを抑えきれなくなった……。




「ぐすっ……部長にこの姿を見られちゃったぁ……ふみ”ぃ”ぃ”ぃ”ぃ”……。」




 あたしは吟子姐に抱きついて泣き崩れた……さすがに部長やみんなに合わせる顔が無いし、世間的にもあたしは人では無いと知られてしまった……会社にも居られない……何より部長の顔が見れなくなるのは寂しいよ……。




「ちょ、ま、摩耶。落ち着くのじゃ、ほれまずは中に入ろうぞ。茶の間で話を聞こうぞ。」




 吟子姐はあたしを抱き起して支えてなだめてくれながら茶の間へと足を進めてくれた。




「摩耶ね~たん、いじめられたの?」




 ち~ちゃんも心配してくれてる……あたしにはこの2人しか居ないのかなぁ、人の世界じゃ生きられないのかな……。


 巨木で作られた丸テーブルの傍に座って、吟子姐はあたしを抱き寄せてくれた……ついでに9本の尻尾であたしを包み込んでもくれた。ち~ちゃんもあたしに寄り掛かって来る……あたしもち~ちゃんを抱き寄せてた……。


 


「話を聞かせてくれるかの。」




 あたしはべそをかきながら、いきさつを話した……出勤途中に部長に危険が迫った事、咄嗟に助けようと夢中で飛び出してた事、妖力を使わないと助けられなかった事、その為にこの姿を部長や一般の人達に晒してしまった事、会社にも行けなくなった事……。吟子姐はずっとあたしの話を聞いてくれた……。




「そうじゃったか……しかし優しいのぅ摩耶は♪」




「え……?」




「だってそうじゃろう、自分を犠牲にしてまで人間を助けたのじゃ。確かにあちきらも義理はあるでの、仲間を助ける事もあるが……摩耶は凄い事をしたのじゃと思うぞよ。自信を持っても良いと思うがのぅ♪」




「でも、この姿がSNSで広まっちゃってる……外にも出られないよ……。」




「まあのぅ、人間の世界は難しいからのぅ。じゃが、直ぐに答えを出すことはないぞよ。ゆっくり休んでゆっくり決めると良いじゃろう、あちきらは寿命が長いでの、のぅ摩耶や?」




 あたしは無言で頷いて、吟子姐に寄りかかってた……吟子姐の優しさを感じながら……。




「う~ん♪吟子姐の尻尾気持ちいい~~モフモフ~~♪♪」




 役得と言うべきか、滅多に出来る事じゃないからあたしは感触を大いに味わった。吟子姐の尻尾好きなんだよねぇ♪




「おやぁ、そうかい?じゃあもっと味わってみるさ♪」




「えっ!ちょ、ちょっと……きゃあははははは………や、止めてぇ♪」




 何が起きたかって、吟子姐の9本の尻尾であたしの全身をくすぐり出したの!あの毛先で全身同時にくすぐられたら、笑い死ぬ事間違いなし!




「あぁ、ちゃ~~んす!ち~も一緒にすゆ~~!」




 え!あっ!何気に便乗しないでぇっ!




「きゃあはははは!く、苦しいぃぃ♪お腹痛いぃぃはははは♪ち~ちゃんも止めてぇ♪ひぃぃ♪」




 ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!許してぇ♪


 あたしはその場でのたうち回るんだけど、完全に吟子姐のくすぐりの刑にハマってる……


 ち~ちゃんにもくすぐられて、歯止めが利かない……ねぇ、あたしこのまま死ぬのやだぁ……。




「摩耶はやっぱり笑っておる方が良いのぅ♪」




「はあっ、ふうっ、えっ?」




 や、やっとくすぐりの刑が終わった……。




「摩耶の泣き顔は見たくないからのぅ、笑顔が一番じゃ♪」




「ぎ、吟子姐……。」




「ち~も摩耶ね~たんの笑顔すき~~♪」




 そっか……2人なりに心配してくれてるんだね……でも、くすぐりの刑は勘弁してね。この次はほんとに死にそうだから………。




「ありがとうね♪ふたりとも。あたしも大好きだよ♪」




 3人で顔を見合わせて微笑んだ。あたしは気持ちが少し和らいだ感じがして……大分落ち着く事が出来た。


 結局、ご飯の支度はあたしなのでなだめてご飯を作らせたい思惑があったみたい。まあ、今回は許してあげる♪2人とも大好きだから……♪


 そうこうしてる内に夜になり吟子姐とち~ちゃんはお腹満腹でその場で寝入ってしまい……あたしは毛布を持って来て掛けてあげた……。良い寝顔だね、さてと明日はどうしようかなぁ…、あたしもそんなことを思いつつ、夜は更けて行くのでした………。


 でも次の日……………………………………。




☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆






 朝の戦争!?……………は無く、茶の間で3人で寝入ってたので時間を忘れて太陽さんに目を刺激されて目を覚ました。会社には行けないから退職するしかないだろうけど、みんな驚いてるよね……課長や綾香さんは散々言ってるだろうけど。迷惑はかけられないよね……これからどうしようかなぁ……ぼうっとしながらそんな事を考えていたら、家のチャイムが鳴った……え!?誰?


 早速モニターを覗く。へへ、この間TVドアホンを家にも取り付けたんだよね♪玄関の外の様子が見れて防犯にもなるから奮発しちゃった!


 で、誰かいる……男性……だよね……スーツ姿で……!?!?!?




「ぶ、部長っ!!!」




 良かったボタン押してなくて。今の声が聞かれたら恥ずかしいのなんの!




「ん~~!どうしたのじゃ摩耶……。」




「摩耶ね~たん……あんまんおいちい……。」




 いや、ちょっと寝ぼけてる場合じゃないんだけど!!ち~ちゃん寝言言ってるし!




「ね、ね、ね、ぶ、ぶ、部長が来てるんだけど……。」




「な、なんとっ!摩耶の会社のか?」




「そ、そうそう!ど、ど、ど、どうしよう……。」




 あたしは想定外の出来事にパニックを起こしてた。大体、部長が家に尋ねて来るなんて天変地異の前触れですか!!明日は台風か嵐になるよこれは。




「落ち着かぬか摩耶。何がどうあろうと摩耶にはあちきらが居る、迎え入れたら良かろう。」




「そっか……分かった。」




 そうだね、あたしには2人が居る……頼れる2人がね……。あたしは玄関へ出向いて扉を開けた。




「あ……あの……。」




「突然済まない。話したい事があって来たんだ、お邪魔しても良いかな?」




「あ、は、はい!どうぞ。」




 あたしは部長を中へと招き入れた。傍で見てもカッコいいんだよね……これはモテるわ……。


 茶の間へ案内すると、吟子姐とち~ちゃんがテーブルの傍で毅然として座ってる……ちょっと前まで寝ぼけてなかった?




「いらっしゃい、摩耶がいつもお世話になっておりまする。」




「磯崎君の上司をしています奥原と言います。今日は折り入ってお話したくてお邪魔しました。」




 や、やっぱり……まさかの会社をクビとか言い渡しに来たんじゃ……。


 あたしはいつものお茶を出して向かい側に座ったいつになく部長が緊張してる……珍しいね、仕事でもここまで緊張した姿を見たことが無いんだけど。




「磯崎君。」




「は、はい!」




「まずは、礼を言わせてくれ。昨日は助けてくれてありがとう、摩耶君が居なければ今の私はここには居ない。」




「い、いえそんな……あたしは助ける一心だっただけで……。」




 部長からお礼を言われるなんて……やっぱり明日は大荒れ確定かな?




「実はあの時、社長からの電話でね……。」




「え!?社長からですか?追加の仕事を依頼されたとか?」




「いや、私が辞表を出したからだよ。」




「え、ええっ!!部長、辞めちゃうんですか!!」




 それは初耳!!で、でも何で?会社だって部長を手放したく無いんじゃ……。こんな有能な人辞めさせる訳が……。




「うむ、会社を立ち上げようと思ってる……。それで、社長から辞めないで欲しいと社で直接話し合おうと打診を受けてたんだ。電話に夢中で周りが騒いでいるのに気づかなかった。」




 そりゃそうだよね、あたしならともかく会社としても部長は離したくないでしょ。止めに入るよ絶対……。




「社でも話し合って、私は独立する事になった……そこで私には会社を立ち上げても、今の所他に誰も居ない。そこで君を是非スカウトしたいんだ。」




 独立するんだぁ、良いなぁこの人なら絶対成功しそうな気がするし……サポートする人もいっぱい居るでしょ………………ん!?……今最後に、何て……?




「あ、あの……今、何て……?」




「君を雇いたいと言った……それと、私と交際して欲しい……ダメだろうか……?」




「え!?え!?えっ!?ええええええっ!!!」




 な、な、な、何が起こってるの!?あたし今告白された!!嘘でしょ!マジで?ほ、ほんとに天変地異がやって来そうだよ……だってあの時……。




「ほっほっほ、なかなかやりますな奥原殿♪」




「い、いえ、そんなことは……。」




 て、照れちゃった……部長が顔を赤くしてうつ向いたのなんてあたししか見てないと思う……。




「で、でも、良いんですか?あたしは人じゃないですし……部長の彼女に合うかどうか……。」




「いや、例え君が人で無かったとしても……両方の君を好きになった事には変わりない……。」




 そ、そ、そんな……凄く嬉しいけど……あたしはどうしたら……。




「摩耶の思いのままにしたら良い、後悔しないようにのぅ。」




 吟子姐……。微笑みながら頷いてくれた、あたしの想い……叶わないと思ってた想い……。


 あたしは部長の顔を見た、初めて見る優しい笑顔って2回目かな?でも、こんな素敵な顔をするんだぁ若い子達が見たら卒倒ものだね。




「あた…し…で…よけ……れば………♪」




「良かった、ありがとう♪」




 きゃあぁぁぁっ!カップル成立って言う!?大変だぁ!地球がひっくり返る~~~!あたしって……今超幸せ者って言う!?ほんとに大丈夫?明日には地球が無くなってない!?マジで?


 嬉しい♪♪こんな奇跡ってあるのかなぁ。




「異色カップルの成立じゃな♪」




「ち~も、このおにいたん好き~~♪」




「あ、ち~ちゃん、こら!」




 ちゃっかり、部長に懐いてるし。




「ち~ちゃんって言うんだね、今度プレゼントを用意するよ。」




「ありがと~おにいたん!」




(よしっお土産ゲット、これでち~のおやつ確保は安泰……。)




「こら!心の声が丸聞こえ!あざといち~ちゃん怖いしっ!」




 ち~ちゃん……誰に対してもそのパターンは変わらないんだね……。あ、そうか……改めて自己紹介した方が良いのかな?




「あの……奥原さん?」




「雅樹で良いよ♪私も下の名前で呼んでも良いかな?」




「え!?あ……は、はいっ! ま、雅樹さん……。」




「何かな?摩耶♪」




 あ、あ、あ、て、て、照れるっ!!やんっ♪そんな風に優しく呼ばれたら……。




「しょ、紹介します!こっちはお会いしてますよね、吟子姐さんです。実は九尾の妖狐なんです。」




「おおっ!九尾でしたか!」




「え!?知ってるんですか?」




「はは……実はね、私は幼少の頃から妖怪に興味があってね。」




「ええっ!初耳です!」




「そうだね、誰にも話してないしね。また、周りの人達との話に話題が合わなくて仕事以外は話す事がなくなってしまった……。」




 ああ、そう言う事!どうりでいつも無表情な感じで仕事以外の事は全く話を聞かないなと思ったらそう言うことですか。確かに、興味が妖怪の話題じゃ……ねぇ。でも、こっちにすると理解してもらいやすい点では凄くラッキー。それで、あたしの姿を見ても嫌な顔はしなかったんだ……嬉しいな、普通なら非難や罵倒されそうなのに……。




「だけど、凄い妖怪が摩耶と一緒に住んでるとは……。え、するとまさかこの子は……?」




 さすが勘が鋭い、雅樹さん。




「そうです、座敷童のち~ちゃんです。」




「成る程、座敷わらしなんだ、どうりで可愛いと思ったけどそういう事か♪」




「“ち~”とはあちきと旧知の仲での、他の若いわらし達とは年季が違うのじゃ。妖力もひと味違うぞよ♪」




 ちょっと待って、それはあたしも初耳。ち~ちゃんって……やっぱり強いとか言う?




「そうでしたか、心強い仲間が居るんだね。」




「そうですね、あたしも初めて知りました♪」




 ホントだよ、おばあちゃんからは何も聞いてないし、一緒に居ても細かく聞く事も無かったし……。




「ち~偉い?」




「かっこいいね♪」




「ち~褒められた!」




「良かったね♪」




「そして、あたしは”妖仙猫”だそうです。」




「うん、知っているよ。猫妖怪の二又は良く知られているけど、尻尾が5本で妖力は吟子さん達と同じ力関係があって尻尾の本数が多いほど妖力が大きい。所謂上位の妖怪という事になるね、失礼かもしれないが吟子さんと同等位あるんじゃないかな?」




 へ!?あたしが吟子姐と同じぐらいの力があるって?




「ふむ、確かにの。妖力のみで考えればそうかもしれんのぅ。じゃが、経験の差があるでの。妖力を使いこなせるかどうかで強さも決まる。摩耶はほぼほぼ妖力を使っておらぬ、じゃから強いか弱いかは決めきれぬぞよ。」




「確かにそうかもしれませんね。」




 ふ~ん、吟子姐と話が合うなんてさすがだね雅樹さん。あたしも色々教えてもらお♪




「これからよろしく摩耶。」




「こ、こちらこそ雅樹さん……♪」




 恋愛なのか、お見合いなのか……不思議な空間が流れて、でも雅樹さんは吟子姐達ともすっかり打ち解けて……。それが何よりうれしいんだけど……♪


 


 で、時は流れて1年後…………………………………………。






☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆






「端野君!ここの所のデータの修正を頼むよ。」




「はい!分かりましたぁ!」




「森野君このプレゼン用の資料は何時頃出来そうかな?」




「スイマセンす!後1日ください!」




「分かった、頼む!」




「了解っす!」




「稲垣君出来上がったデータのチェックを頼みたい?」




「分かりました、転送してもらっても良いですか?」




「了解だ、今送るよ。」




……………………………………。




 あの後、早速会社を何処に作るかの話になって……あたしはおばあちゃんの仏壇の前に座って手を合わせてた……ごめんなさい、使わせてね……それはあたし達の自宅の庭。ほら、もう一軒立てれるほどの広さがあるって言ったでしょ。全部じゃないけど、土地の一部を使って小さい事務所を立てたの♪


 そうすればあたしにすると直ぐ自宅だし、ち~ちゃんや吟子姐とも会えるし雅樹さんもいるし安心できる……。


 あ、そうそう、うちにも社員さんが出来まして。と言っても前の会社の後輩たちなんだけど。


 あたしと雅樹さんが辞めた後、課長が部長に昇進して綾香さんが課長になったらしいんだけど、なって初めて雅樹さんやあたしがどれだけの仕事量をこなしてたかを知ったらしくて、それをわざわざ後輩たちに割り振ったらしいの。いつもの作業にプラスして……。さすがに3人ともきつかったらしくて、と言って社員も増える訳でなく、かなりのハードワークになったようで一緒じゃないけど辞めちゃったんだって。それで、後々3人で会う事になって唯ちゃんがあたし達の会社のホームページを知ってたらしくてタイミングが良かったのかな。社員募集も載せてたから、3人して食いついてきて……。


 押しかけ女房ならぬ押しかけ就活になっちゃって。あたし達にすれば、勝手知ったる後輩たち。何が得意で何が苦手か分かってるから、雅樹さんも仕事の割り振りがしやすいと喜んでた……ならばと早速働いてもらう事に。


 3人とも喜んで来てくれてる……仕事もはかどって、プレゼンは社長の雅樹さんとあたしで会社廻り。その間に吟子姐が差し入れしてくれるようで、森野君が張り切ること張り切ること。


 まあ、まだこの3人には話してないんだよね……吟子姐、ち~ちゃん、あたしの3人が○○だって事……今はまだ会社が落ち着くまでダメかなぁ。いずれはもっと仲良くなってから……話してみようかな……。それじゃあこの辺で、何処かで会った時には声を掛けてね♪じゃあねぇ……………………………………。

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あの……あたし……妖怪さんと暮らしてます……♪♪ 麗紫 水晶  @koryukisin

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